第163話 幕間「旅の途中~ワイバーン討伐~」2/6
犬を食べ終わった生き物は、再び獲物を狙う上空で旋回している。
横でロサがマリーンM1895を発砲したが、当たらなかった。
「ロサ、こういう時はリード射法といってね。標的のスピードに合わせて標的を少し追い越したところに銃口が向くようにして、身体をスイングさせながら撃つんだ」
石動が空を旋回する生き物にあわせて、左から右へ腰を起点に身体を捻りながら発砲した。
見事命中した
バランスを崩して錐もみ状態になった生き物は、広場の隅に落下し石畳に激突した。
石動は生き物に駆け寄りながらフォアアームをスライドして空薬莢を排出し、直接
生き物はまだ生きていて、近づいてきた石動達を首をもたげて、威嚇するように叫び声をあげた。
「ロサ、頭を狙えるか? 私は翼の付け根の心臓辺りを狙う」
「了解」
ふたりはほぼ同時に発砲した。ロサの放った銃弾は下あごから入り、脳を破壊する。
石動の放った
もたげていた頭が力なく石畳に崩れ、頭と胸からの出血が巨体の下から広がってきた。
石動がトレンチガンの銃剣の先で、眼球を突いても反応は無い。完全に絶命している。
死んだところで姿をじっくり見ると、鳥というより恐竜のプテラノドンとトカゲが混じったような生き物だった。
蝙蝠のような羽を広げると差し渡し10メートルはありそうだ。
身体には細かいトカゲのような鱗があり、空気抵抗を少なくするためか、ツルっとしている。
顔もトカゲのようだが、流線型ですらっとしていた。口はプテラノドンのような嘴ではなく、ワニを思わせるような鋭い歯が並んでいる。
ロサが石動に振り向いて笑う。
「やったね!」
「ヨシッ!」
石動とロサはハイタッチして、笑顔を交わした。
駆け寄ってきた護衛騎士のフィリップ達に後を任せると、ロサと石動は宿に戻ることにした。
ふたりで広場を横切っていると、避難していた建物から出てきた街の皆からお礼と握手攻めにあい、恐縮しながら宿へと戻ったのだった。
やっとのことで部屋で寛いでいたのも束の間、サンデル護衛騎士が来客を告げてきたので、已む無く応対することにした。
ちょうどフィリップ達も戻ってきたので、部屋では狭いから宿の食堂の一角を借りて座ることにする。
訪ねてきた身なりと恰幅の良い初老の男が、頭を下げてくる。
「お時間をとっていただき感謝します。私はこの街の商業ギルドの長をしております、マーカスという者です」
「ご丁寧なご挨拶、恐縮です。私はザミエル。こちらはロサ。そして帝国近衛騎士のフィリップ、ヤコープス、サンデルです」
お互いに自己紹介と握手が終わり、いよいよ本題に入った。
「先程、ワイバーンを倒して頂き、ありがとうございました。本当に感謝の言葉もございません。あなた方がいなければ、住民に大きな被害が出ていたでしょう」
「ほぉ、アレがワイバーンですか。話には聞いていましたが、見たのは初めてだったので」
「初めてですと! 初見であれほどとは・・・・・・。ぜひ、その手腕を見込んでお願いがあるのです」
マーカスは居住まいを正すと、石動を真っ直ぐに見て訴える。
「じつはこの先の街道近くの山にワイバーンの群れが住み着いてしまったのです。なんとか、このワイバーンたちを討伐していただけないでしょうか!」
「ワイバーンの群れですか・・・・・・」
「街道を通るものを群れで襲ってくるので、おちおち街道を通ることができず、みな困っておりました。
冒険者や領主の兵も動員して退治しようと試みましたが、ワイバーンが空に逃げられると矢も届かないので、手が出せません。
そのうえ群れで空から襲ってくるので、被害だけがふえていました。
どうしたものかと悩んでいた時に、あなた方が来られたかと思うと、あっという間に空を飛ぶワイバーンを撃ち落として止めを刺された。
これは神が救いの徒を遣わされたのかと、わが目を疑った程でしたよ。
無理を申し上げていることは重々承知しております。
もちろん報酬も充分に用意しますので、なにとぞ、なにとぞお願いできないでしょうか!?」
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