第158話 コルト シングルアクションアーミー

 そのため石動イスルギのスキルレベルで造ることが可能な最新の拳銃が、コルト・シングルアクションアーミーリボルバーということになる。


 コルト・シングルアクションアーミーとは、アメリカの西部開拓時代に最も使用された回転式拳銃リボルバーだ。

 SAAとも略され「ピースメーカー」とも呼ばれるこのリボルバーは、西部劇などの映画の中でカウボーイたちの腰に吊るされていたことで有名だし、現在でも生産されているほど根強い人気がある。

 ウィンチェスターM73レバーアクションライフルと並んで「西部を征服した銃」と呼ばれていたほどのベストセラーである。


 構造はシンプルで、六連発の回転式弾倉シリンダーを持ち、シングルアクションなので撃つたびに撃鉄ハンマーを起こしてから引き金を引く必要がある。

 弾丸の装填は、ハンマーをハーフコックの位置にしてからシリンダー後部の装填門ローディングゲートを開き、一発づつ装填しなければならない。

 排莢も同様にローディングゲートを開いて、銃身斜め下のエジェクターを操作しながら一発づつ排莢するので、再装填に時間がかかるのが難点だ。


 同時期のスミス&ウェッソンの中折れ式トップブレイクリボルバーに比べて、装填・排莢が面倒でもSAAの一体型ソリッドフレームの方が遥かに頑丈な造りだったので、中折れ式では使用できない、より高威力の45ロングコルト弾を使用できた。

 

 石動は今回、このSAAを再現するにあたり、コルト社の機構ではなくアメリカン・ルガーRuger社のブラックホークやバケーロの機構メカニズムを採用した。


 なにが違うかと言うと、ざっくり言えばコルトSAAは設計が古くて、ハンマーに長い撃針ハンマーノーズがついている。

 そのためハンマーを下ろしたポジションでも、撃針が弾丸の雷管に触れてしまい、ちょっとの衝撃で暴発する危険性があった。

 西部開拓時代当時は安全に携行するために、わざと一発分弾薬を装填せず空の薬室をつくり、ハンマーがそこにあたるようすることで、暴発しないよう五連発で携行していたほどだ。


 アメリカン・ルガー社はその問題を解決するため、ハンマーから撃針をなくし、フレーム側にセットした。

 そしてトランスファーバーシステムという安全装置を設けることで、六発装填しても安全に携行できるようにしたのだ。

 装填・排莢も、ハーフコックにせずともローディングゲートを開けるだけで出来る機構を備え、安全性を増している。


 石動が造ったSAAは、これらのルガー社の安全機構を備え、弾薬も45ロングコルトを選択した。

 通常より少し火薬量を増やした、石動特製の45ロングコルト+Pプラスパワーと言うべき強装弾だ。

 機器が無いので正確な計測はできないが、おそらく44マグナムに近く、41マグナムより少し大きなエネルギーを持っていると、石動は「鑑定」を使うことで推測していた。


 SAAの銃身は一番短いシビリアンモデルの4・3/4インチ(約12センチ)とも考えたが、より抜き易くするためにもう一インチ短くして3・3/4インチにして、照星フロントサイトも省略してしまう。


 そう、分かる人は気づいたと思うが、石動は映画「エクスペンダブルズ3」で、シルベスター・スタローンが演じたバーニー・ロスが使用しているSAAの外観を、そっくり同じではないが真似しようとしているのだ。

 ハンマーの指かけ部分も真似して大型化したものの、さすがに銃身先端に反動軽減用のコンペンセイター・スリットは入れなかった。


 コンペンセイター・スリットとは、銃口付近に開けたスリットから発砲時に高圧ガスが上向きに噴き出すことを利用し、そのガスの反動で銃口が上を向こうとするのを抑え込む効果を狙ったものだ。

 空砲を使う映画のプロップ・ガンでは良いのだろうが、実弾を腰だめで撃った場合にはスリットから高圧ガスや弾頭の破片などが顔や目にまで飛んでくる可能性があり、石動は危険だと判断したのだ。


 出来上がったオリジナルSAAを手にした石動は、まるでお気に入りのおもちゃを手に入れた子供のように肌身離さず持ち歩き、暇さえあれば腰のホルスターから早撃ちの練習を繰り返す。

 ホルスターもスタローンのように背中ではなく、右腰のベルトに装着できて抜きやすいデザインを自作するほどの熱の入れ方だった。

 その様子を見ていた、ロサが「子供か!?」とあきれ返るほどの熱中ぶりだ。



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