第154話 お家騒動?

 お家騒動か、テンプレだな。面倒だと言うのが石動イスルギの聞いた最初の印象だった。

 できればそんな面倒には巻き込まれず、銃の開発を進めていきたい、と言うのが正直なところだ。

 

 エドワルドは石動に訴える。


「第一皇子である兄が死んだので、吾輩に帰国命令が届いてな。ちょうど、吾輩も父に相談したいことがあったので帰ったら、父から吾輩にも皇位継承の可能性があると言われてしまった。

 このままでは吾輩も殺される、と思ったよ。

 近衛騎士たちに囲まれていても兄は殺されたのだからな。

 その時、思い出したのがザミエル殿のことだ。ノークトゥアム商会の護衛の時も、誰よりも先に襲撃を察知して排除して見せたあの手腕。そしてザミエル殿の持つ銃の火力の凄さは、一緒に行動して嫌と言うほど思い知っておるしな」

「・・・・・・」

「第二皇子である兄は非情なお方だ。第一皇子の兄とは全く違う。人を信用せず、権謀術数を好む。

 あの兄が帝国を継ぐようなことがあれば、この大陸は瞬く間に侵略戦争の渦に巻き込まれるだろう。

 吾輩もあの方には嫌われておるのでな。たとえ帝位継承権を放棄すると言ったとしても、真っ先に殺されるのは間違いない。

 もう一つは、帰国して父に相談しようとしたのは、ザミエル殿がドワーフ達と組んで銃の量産を始めると分かったからだった。銃がザミエル殿だけの魔道具であるなら他の者は装備できないが、量産されるならあの銃を我が帝国がいち早く装備出来れば無敵になるに違いない。そう思ったのだ。

 今回も父をそう説得して国を出てきた。出来れば吾輩を助けるだけではなく、父に銃のデモンストレーションもしてほしいと思っている」

「・・・・・・要するに、エドワルドは第二皇子を蹴落として帝位につくつもりだということだよね。そして私の銃を軍に採用することで、そのための功績にしたいと?」

「第一皇子の兄が継いでくれるなら、吾輩は今まで通り気楽に暮らしていくつもりだったのだ。しかし、こうなった以上、皇帝にならない限り第二皇子である兄に殺されてしまうのは確実だ。でもまだ吾輩は死ぬつもりはない。闘うしかないのだよ」

「・・・・・・ちょっと考えさせてくれないか」

「もちろんいいとも。良い返事を期待しているよ」


 そのあとの夕食は、当たり障りのない話に終始する。


 石動の近況を聞かれたので、エドワルドに銃の製造についてドワーフ王家と契約したこと、ただし銃の販売はノークトゥアム商会が窓口になることなどは話しておいた。

 

 食事が終わると、エドワルドは「明日、また来る」と言い残して、従者をつれて部屋を出ていった。


 残された石動とロサは、お茶を飲みながら、今後のことを話し合うことにした。


「ロサはエドワルド、というかマクシミリアン第三皇子の話をどう思った?」

「どうっていうか、まず身分を隠して一緒にいた理由がよく分からないわ。最初のうちは怪しいと思っていたけど、途中からは仲間になったと信じかけていたのに・・・・・・。

 結局、ウソだったって言うのが私は納得いかない。そりゃ、隠さなきゃいけなかった理由も分かるけど、私たちを信用しているなら打ち明けてくれても良かったんじゃない? でもエドワルドは打ち明けてくれなかったわ。

 そんな秘密主義の人が、今度は自分の身が危なくなったからと言って助けてほしいって言うのは、なんだか都合が良すぎるんじゃないかと思うの」

「そうだよね。なにか裏があるんじゃないか、とは私も思っているよ。

 なんとなく私達に近づいてきたのには目的があると思っていたけど、それがこれだったのか、っていう感じだよな。一緒に旅をしていた時は楽しかっただけに、ロサがそう思う気持ちは私もよくわかる。でも、命の恩人っていう、借りがあるんだよね・・・・・・」

「・・・・・・」

 

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