第150話 合意
ニコニコしながら答える
「あと弾薬は教えてもらえんのか?」
「カプリュスさんに渡したシャープスライフルは、弾薬を発火させるのに火の魔石を削り出したものを使っていますよね。ごく少数を撃つ分にはあれで良いのですが、大量生産した銃に火の魔石を使うのは、大変手間がかかるだけでなく非常に高価なのでコスト的に割が合いません。
最近、私はこの問題を解決する錬金術を完成させましたが、それを使いこなすには非常に高度な錬金術スキルが必要になります。仮にこの錬金術作業を私以外で出来るとしたら、エルフの郷にいるノークトゥア師匠しか、私は知らないのですよ」
「そうなのか・・・・・・」
しゃべりながら、石動は今更ながらに気がつく。
師匠の名前って、ノークトゥアム商会会頭の名前にそっくりではないか?
師匠、としか呼んでなかったから、いままで気がつかなかったな・・・・・・。
ひょっとして親戚だろうか・・・・・・? でも種族が違うし・・・・・・。
今度会ったら聞いてみよう。
「でも、たとえば師匠の下で修行したいという者がいて、将来的に錬金術スキルが上がって使いこなせるようになれば、カプリュスさんのところで弾薬を製造することも検討しましょう。そこは契約書にいずれ協議すると明記しても頂いても構いません。そうなればなったで、私もカプリュスさんにお願いしたいことが、いろいろありますしね」
「なるほど! それは良いな。早速、候補者を選別するとしよう」
カプリュスが石動の言葉に目を光らせる。
そしてプラティウムの方を見て頷いた。
「ザミエル殿、よくわかった。王である私が合意すると決めた。細かいことは宰相も含め、事務方と詰めてもらうことにする。交渉相手はオルキス支配人で良いのだな」
「はい、お願いします」
石動もオルキスをチラッと見て、オルキスか頷くのを確認してプラティウムに答える。
「では、交渉成立だ。バカ息子がしでかした事のお詫びも含めて、儂ができる範囲のことで報いるとしよう」
「陛下のありがたいお言葉に感謝します」
プラティウムは立ち上がると石動に右手を差しだした。
石動も立ち上がるとその手を握り、固い握手を交わす。
この世界に、銃が大量生産されることが決定した瞬間だった。
それからというもの、石動には大忙しの日々が続いている。
王城との契約交渉や細かい折衝は、ノークトゥアム商会支配人のオルキスがスタッフを引き連れて毎日通ってくれているので、丸投げでお任せだ。
それでも石動へ確認したい事項などがいろいろと発生するため、諸々の話し合いをオルキスらから要求されることも多く、毎日の進捗確認を兼ねたミーティングは欠かせない。
本当は石動がエルフの郷に戻って、師匠にキャップ式雷管の製法を直接伝えたいところだが、忙しくて行けそうにない。そこで急いで雷管製法マニュアルを作成すると、それに手紙と改良魔法陣の写しを添えて、ノークトゥアム商会経由で師匠まで送ってもらうことにした。
エルフの郷にも黒色火薬仕様のシャープスライフルはあるので、後日テスト結果の連絡があるだろうと思っている。
カプリュスからも、シャープスライフル生産設備について相談をうけている。
足踏み式旋盤やライフリングマシンを増産したり、工房ごとの分業制の提案をしたりした。
まずカプリュスの工房でいろいろ試してから、その上で他のドワーフの工房とも王城からの勅命をもって契約し、生産ラインを増やす計画らしい。
そのための信用できる工房の選別や有能な職人の確保など、問題は山積みだとカプリュスが零していた。
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