第126話 コルダイト
そのため、
ダブルベース火薬とは、ニトロセルロースとニトログリセリンを基材として、安定剤などを加えた無煙火薬だ。
シングルベース火薬と比べて燃速度・爆発熱とも高く、推進力が強い。
反面、銃身などへの焼食が大きくなり、銃身の寿命が短くなる欠点がある。
「コルダイト」の安定剤はワセリンなのでこちらでも手に入る。
そしてコルダイト製造に必須なのが「ニトログリセリン」なのだ。
硝酸を手に入れたおかげで、ニトログリセリンも製造可能になった。
石動はワクワクする気持ちを静めて、まずは一つづつ造ろうと、魔法陣の上に木綿と硝酸、硫酸を置いた。
スキルを発動し「抽出」して「調合」する。そして「錬成」してから「組成」した。
出来上がった布状の物質を見ると「ニトロセルロース」という言葉が頭の中に浮かんできた。
成功だ。
さすがにスキルだと速いな、と石動は改めて感じる。
本当なら洗浄して酸を取り除く作業だけで60時間はかかるのだ。
それが一瞬で出来てしまうのが凄い。
次いでニトロセルロースに加え、エチルアルコールとエーテルを魔法陣に置き、「調合」する。
「錬成」した後に「加工」して布状からゲル状に変化させ、粒状に変化するように「組成」すればB火薬の完成だ。
スキルの輝きがおさまると、魔法陣の上には白っぽい顆粒状の粉が小さく山になっている。
試しに小皿の上に一つまみ取って、火を着けてみた。
「シュッ!」という音とともに、一瞬で燃え尽きる。煙もほとんどあがらなかった。
「(この世界で無煙火薬が生まれた瞬間だな・・・・・・)」
石動はちょっと感動してウルッとしてしまう。
実際に出来上がると、今度こそジーンと万感胸に迫り、込み上げてくるものがあった。
「(いや、まだまだこれからだ。この勢いでコルダイトの方も挑戦してみるか。じゃあ、まずはニトログリセリンからだな・・・・・・)」
ニトログリセリンの原料となるグリセリンは、エルフの郷で鍛冶仕事で汚れた手を洗いたくて、石鹼を造った時に副産物として大量に出たのをストックしてあった。
石動の造った石鹸は、エルフ達の間で大人気となったので、死ぬほど造らされたのは、今となってはいい思い出だ。
グリセリンを硝酸と硫酸の混合液で硝酸エステル化させれば、ニトログリセリンの完成だ。その硝酸エステル化の行程は、錬金術スキルで補うのだが。
石動は魔法陣の上に材料を並べると、錬金術スキルを発動し、注意深く「抽出」する。「調合」して「錬成」すると、キラキラと輝く透明な液体が宙に浮いていた。
集中して注意深く液体を、世界樹の樹液で出来たビーカーに移す。
ビーカーの中の液体を見ると、石動の頭の中に「ニトログリセリン」という言葉が浮かんできた。
できたニトログリセリンは100CCくらいだが、衝撃を与えて爆発させると、この部屋が吹き飛ぶどころの騒ぎではないので慎重に取り扱う。
万一のことを考え、ニトログリセリンが入ったビーカーをおそるおそる、部屋の奥にある土壁に囲まれたセーフルームに運ぶ。
セーフルームの重いドアを開けて、石動は中のテーブルの上にビーカーを置いた。
ドアを閉めて密封し、魔法陣を出すと、ニトロセルロースとニトログリセリンを並べる。安定剤として使うのは、この世界にもあったワセリンだ。本来は最後にアセトンを加えて溶かし、練る必要があるが、そこは錬金術スキルでカバーできる。
石動は今日一番、集中力して、錬金術スキルを発動する。
「抽出」して「調合」、「錬成」して「組成」する。それから「加工」することで、粒子状の物へと変化した。出来上がった粉を石動が見ると「コルダイト」という言葉が浮かんできた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます