第111話 死闘

 石動イスルギはマジックバッグから、今度は50-130紙巻薬莢弾を取り出すとシャープスライフルに装填する。

 巨鳥の注意が石動に向いている隙に、エドワルドがロサのもとに着き、ロサを岩場の影まで避難させていた。

 それから長剣を抜くと、エドワルドは巨鳥に向きなおる。


「(なんだか、コイツ、見たことがあるような無いような・・・・・・)」


 石動は巨鳥にシャープスライフルの狙いをつけながら、考えていた。

 何処かで見たような・・・・・・。


「(あっ! そうだ! ファイナルファンタジーに出てたディアトリマそっくりだ!)」


 昔ゲームで遊んでいた時、遭遇したキャラに似ていることに気がついた石動は、マジマジと巨鳥をあらためて見つめる。

 ディアトリマは別にゲームのオリジナルキャラというわけではなく、学術的には「恐鳥類」と呼ばれ、約6,000万年前の新生代に「史上最強の鳥」と呼ばれた肉食鳥だ。


「(ということは、あいつの肉は臭いのだろうか・・・・・・? いやいや、グルメ肉という設定ではなかったかな)」

 そう石動は考えながら、頭を狙ってシャープスライフルの引き金を落とそうとした。


 引き金を落とした瞬間、巨鳥はまるで瞬間移動のようなスピードで動き、石動が放った銃弾を躱した。

 そればかりでなく、石動の居る滝つぼの近くまで一瞬でたどりつき、巨大な鉤爪で蹴ってきた。


「速いッ!」

 膝撃ちの態勢から前転して躱すことで、辛うじて鉤爪を避けるが、巨鳥は次々と蹴ってくる。


「(くそっ、臭いとか思ったから、怒っちゃったかな!)」


 石動は蹴りのたびに身体を掠める鋭い鉤爪を銃剣で捌くが、体格差は如何ともし難く、岩壁の方へと追いやられてしまう。

 そのうえ巨鳥の動きが素早すぎたので、シャープスライフルは再装填できておらず、薬室は弾切れの状態だ。


「(次は絶対に連発銃をつくるんだっ、おっと!)」


 必死で銃剣で鉤爪を捌いていたら、背中が岩壁に当る。

 しまった、と身体を入れ替えようとした時、巨鳥はとどめとばかりに体重を乗せた蹴りを放ってきた。


 ガキィン!!

 鉤爪がシャープスライフルや銃剣に当る金属音が鳴り響く。

 巨鳥の大きな足が石動の頭を握りつぶそうと、顔の前まで迫っていた。

 何とか顔の前に掲げたシャープスライフルで防いではいるものの、石動が押し返す力より巨鳥の押す力の方が圧倒的に強く、ジリジリと鉤爪が近づいてくる。


 鉤爪がついに石動の頬に当った。

 巨鳥が指を動かしたのか、鋭いナイフのような鉤爪が石動の頬を裂く。

 頬から血が流れだしたのを石動は感じる。

 血の臭いに誘われたのか、巨鳥は大きなクチバシをグワッと開けると、石動の頭を齧ろうとしてきた。

 巨鳥の吐く息が石動の顔にかかり、生臭い臭いが鼻を衝く。


「(もうダメか・・・・・・)」

 両手はシャープスライフルで鉤爪を押し返すので塞がっているし、巨鳥の馬鹿力で岩壁に押さえつけられているので、身動きが取れない。

 あのデカいクチバシで齧られたら、一巻の終わりだ・・・・・・と石動が諦めかけた時。


「ザミエル殿、加勢いたす! ウォォォォォォォッッ!」


 エドワルドが走ってきたかと思うと、長剣を槍のように構えて、巨鳥の背中に突き刺した。


「ゲギャーーッ、グェェェェェェェ!!」


 巨鳥は怒って首を後ろに回し、エドワルドを見る。

 その瞬間、巨鳥が石動を押さえつけていた力が緩んだ。

 石動はその機会を逃さず、パッとシャープスライフルを手放すと、素早くしゃがみ込む。頭の上でシャープスライフルが巨鳥の足で岩壁に叩きつけられる音がした。

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