第81話 追憶‐アフガニスタン⑤
*77話から83話までは、石動の自衛隊特殊作戦群時代の過去が描かれています。
石動の人格形成や性格に影響を与えた体験をしてしまう話ですが、物語の進行には大きな影響はありません。
現代戦の話ですから、銃オタ・ミリオタの呪文オンパレードになりますので、苦手な方は84話へ飛ばして頂いても大丈夫です。
引き続き、物語をお楽しみください。
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気が付くと三方向からRPGロケット砲の十字砲火を受けていた。
操縦士がグワッと機体を傾けることで、正面から飛んできたロケット弾を避ける。
しかし、右に機体を傾けたことで斜め右から飛んでくるロケット弾を避けることができず、ローターに被弾してしまう。
スズンッという腹に響く爆発音とともに、UH60ブラックホークのローターブレードが爆発で何本か吹っ飛び、途端に機体の制御が効かず不安定な挙動をし始めた。
機体が墜落し始めたことで、斜め左から飛んできたロケット弾はキャビン直撃ルートから外れ、飛び去ってしまう。
「落ちるぞ!!
リチャード少尉の叫ぶ声に、歯を食いしばって衝撃に備える石動達。
ドグワッシャーン!!
凄まじい衝撃とともに操縦席から地面に突っ込んだUH60ブラックホークは、幸いにも10メートル程度の高度だったので、操縦席のキャノピーがクッションとなり、石動達がいるキャビンまで潰れることはなかった。その代わり、操縦席はペシャンコで操縦士が助かる見込みは無かったが。
衝撃でグラグラする意識と痛みを無視して、石動達は無言で安全ベルトを外し、装備を持ってUH60ブラックホークの外に飛び出す。
石動達が外に飛び出すと同時くらいに、黒いターバンを巻いたタリバン兵や戦闘服を着た兵士らが隠れていた場所から姿を現し、一斉に銃撃を加えてきた。
UH60ブラックホークは、幸い燃料タンクの破損はないようで、すぐに爆発することはなさそうだ。遮蔽物として利用しながら銃撃に対して反撃を開始する。
「聖戦ジハード軍団か?」
「山の上で偉そうにしてるのがザカールウィですかね」
リチャード少尉とエメリコ曹長が双眼鏡を覗きながら話している。
エメリコ曹長がナイツSR-25を無造作に構えると、発砲した。
山の上で大きなジェスチャーで指示を出していた男が倒れ、崖を転がる。
「うーん、なんか違う気がするな・・・・・・」
「まあいい、将校を中心に殺ってくれ」
リチャード少尉はエメリコ曹長の肩をポンと叩くと、ススッと走り去る。
石動がふと横を見ると、少し離れた場所に、案内人のはずだった中年男と少女が立ち竦んでいた。
石動は助けなければ、と飛び出そうとして、一瞬迷う。
「(この作戦が罠だったんなら、あの二人もグルなんじゃないか? いや、でもあんな幼い少女もアルカイーダなのか・・・・・・)」
その迷った石動の横を走り抜けていく気配にハッと振り向くと、成宮曹長が小銃を構えて辺りを警戒しながらも、二人のところへ走っていく姿だった。
「成宮曹長!」
叫ぶ石動の声に我に返ったのか、成宮曹長の姿を見て中年男が慌てて、民族衣装の下に隠し持っていたAK47Sをゴソゴソと引っ張り出そうとする。
「やっぱりグルだった!」
石動が成宮曹長を援護しようと中年男に向けてHK417を構えた時、成宮曹長に向けたものか、タリバン兵が撃ったRPGのロケット弾が飛来した。
中年男がAK47Sを取り出して成宮曹長に向けたと同時に、ロケット弾が中年男の近くに着弾して爆発する。
中年男が全身にロケット弾の破片を浴びて吹っ飛ぶのと、成宮曹長が少女を庇って覆いかぶさって地面に伏せたのが同時だった。
「成宮曹長ー! くそっ、今行きます!」
石動が走り出すと、成宮曹長が少女に覆いかぶさっていた状態から、フラッと首を押さえながら上半身を起こしたと思うと、信じられないという表情で石動を見た後、首から大量の血を噴き出す。
「!!! なんだっ!」
ゆっくりと少女が身体を起こす。
成宮曹長の返り血で顔は真っ赤だったが、少女の憎しみに燃えた眼は見間違えないようのないものだった。
少女は立派に戦う戦士だったのだ。
鞘がJの形になったアラブ風の片刃のナイフで、成宮曹長の首を少女が掻き切ったのだ。
少女は手に持ったナイフを両手で握り直すと、振りかぶって成宮曹長に突き立てようとした。
石動は手にしたHK417を発砲し、胸の真ん中に7.62×51弾が着弾した少女は振りかぶった体勢のまま後ろに吹き飛ばされた。
駆け寄った石動は、少女と中年男の死亡を確認すると成宮曹長を抱える。
「成宮曹長! 頑張ってください! 一緒にヘリの方に戻りましょう」
「・・・・・・カナコ・・・・・・」
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