第80話 追憶‐アフガニスタン④
*77話から83話までは、石動の自衛隊特殊作戦群時代の過去が描かれています。
石動の人格形成や性格に影響を与えた体験をしてしまう話ですが、物語の進行には大きな影響はありません。
現代戦の話ですから、銃オタ・ミリオタの呪文オンパレードになりますので、苦手な方は84話へ飛ばして頂いても大丈夫です。
引き続き、物語をお楽しみください。
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どういう交渉が政府間、または両軍内部で行われたのかは不明だが、なぜか一部条件付きで同行が認められることになった。
どうせ駄目だろうと思っていた
同行の条件として、デルタチームについて行ける範囲はアフガニスタン正規軍の勢力範囲内だけというものだ。
今回の作戦行動としてはヘリで現地の案内人と合流した後、1~2日程度同行できるだけになる。
アルカイーダやタリバンの勢力下には立ち入らないことと、交戦になった場合はデルタチームの指揮下となるが、自衛官として自衛に必要な範囲とすること、という注意書きまでついてきた。
石動達のピックアップポイントにはヘリが迎えに来ることになっている。
「まさに至れり尽くせりのピクニックだな! ランチボックスとビールを忘れるなよ! ハハハッ」
リーアム曹長が石動の背中を巨大な手でバンバン叩きながら、大笑いした。
作戦当日、準備を整えた石動達は、到着した時と同じヘリの発着場でUH60ブラックホークの前に立っていた。
「うー、流石にちょっと緊張してきた」
「もう一度、トイレに行った方が良いんじゃないか? 漏らしたら大事だぞ」
伊藤二曹の呟きに相馬一曹が茶々を入れる。そんな空気にふっと緊張がほぐれてきた。
「すみません、成宮曹長。自分が言い出したばかりに皆を危険にさらすことになって・・・・・・」
「なんだ、石動。後悔してるのか? ビビってるんじゃないよな」
石動は自分の発言がこんな大きなことになると思わず、なんとなく申し訳ない気持ちになって成宮曹長に頭を下げる。
成宮曹長は笑いながら、明るく石動を揶揄ってきた。
「皆の気持ちで決めたことだ。お前が気にすることじゃない」
「そうだぞ。腕が鳴るぜ」
伊藤二曹や相馬一曹も話に加わり、相馬一曹は太い腕で力こぶをつくってみせる。
ふと気が付くと、デルタの4人が気配も感じさせず、いつの間にか近くまで来ていた。
いつものリラックスした雰囲気だが、眼が違う。完全に仕事モードの戦士の眼になっていた。
「オーケー、ボーイズ。散歩の時間だ」
リチャード少尉の言葉でヘリに乗り込む。状況開始だ。
UH60ブラックホークで20分程飛んだ先で、地元の案内人と合流する予定になっている。
基地からしばらくは平地が続いたが、次第に山岳地に入っていく。
合流するのは不必要に目立たないよう、谷あいにある小さな盆地が指定されていた。
高度を上げて飛行していたUH60ブラックホークは、次第に高度を下げて合流地点へ近づいていく。
合流地点には、ターバンを巻いた髭面の中年男と、娘らしい黒髪の少女が立っていた。
民族衣装なのか、マントの様なダボッとした服を着た中年男と娘が手を振ってくる。
谷あいにゆっくりと高度を下げていくUH60ブラックホーク。
「待てッ!」
外の様子を窺っていたリチャード少尉がヘリの操縦士に怒鳴る。
「どうも気に入らない・・・・・・。エメリコ、サーモグラフのスコープはあるか?」
地上10メートル程のところでホバリングし、動きを止めたUH60ブラックホークに男と娘が振る手の勢いが激しくなった。
「リチャード、どうやらかなりの人数が岩陰に隠れてるぞ。罠だ!」
「撤退だ! 基地へ戻せ!」
リチャード少尉の言葉に頷いて、操縦士がヘリの高度を上げようと操縦桿とラダーを操作しようとした時、煙を引きながら飛んでくるモノに気付く。
「
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