第73話 襲撃
予備弾も数発、ポケットに移しておく。
次いで銃口近くに着剣してある銃剣の鞘をはらう。銃剣の刀身が鈍く光った。
獣道の方に向け、石動はやや半身になり銃剣道の構えをとる。
すると待つまでもなく、ガサガサと音を立てながら薮を分けて三人の男達が現れた。
三人、と聞いて想像していた通り、昨日の酔っ払い三人組だった。
流石に今は酔ってはいないようだが、ニヤニヤ笑いを顔に貼り付けて歩いて来る。
「(コイツら、舐めてるな。油断しきってる)」
石動が呆れたのは、男達の態度だった。
昨日、あれだけ手酷くやられたのに、石動達を襲うのに包囲するとか遠距離から攻撃するなど考えずにまともに向かって歩いて来ている。
「(よっぽど腕に自信があるのか、それとも馬鹿なのか・・・・・・)」
石動がそんな事を思っていたら、先頭に立って歩いて来た金髪ロン毛が声を掛けて来た。
「ようっ! 色男。えらい勢いで女の手を引いて行ったから、てっきり一発済ませるもんだと思ったぜ。なんだ、もう済んじまったのか? これからなら俺らも仲間に入れてくれよ、ヒャッヒャッヒャ!」
下品な笑い声を上げ、金髪ロン毛は歩み寄りながら片手剣を抜き、剣をグルグルと振り回している。
よく見ると、額に赤黒い痣がある。昨日の夜は無かったので、暖炉の角に頭をぶつけた跡に違いない。
石動は薄笑いを浮かべて呟いた。
「見ないうちにずいぶんと男前が上がってるじゃないか?」
石動の言葉に金髪ロン毛が沸騰し、怒りを顕わに怒鳴り散らす。
「うるせぇ! 神殿で治癒魔法を掛けてもらっても、しばらくは跡が消えないって言われたぜ! このお礼は何倍にもして返してやる!」
「それで付いてきたのか、ご苦労なことだ。そう言えば衛兵が呼ばれてたはずだか?」
「ふん、衛兵なんざ、酒場のいざこざごときで手を煩わされたくないんだよ。少し金を掴ませれば見逃すさ。そうだ、その金も取り立てないとな」
金髪ロン毛の後ろでは、スキンヘッドの大男がハルバートを持ち、ひょろい長身男は弓矢を構えている。皆、馬鹿のように顔に下品なニヤニヤ笑いを張り付けていた。
「昨日は油断したんだ。今日は油断もしないし得物を持っての戦いで、お前らなんかが俺達に勝てるはずがねぇ。今のうちに地べたに頭擦り付けて謝って、金と女を渡せば苦しまずに殺してやるよ」
「謝らないと言ったら?」
「こんな森の中じゃ誰も助けには来ねえ。国と国の間の森で、人が獣に食われて居なくなるなんざ、珍しくもねえさ。まずお前をなぶり殺しにして、女もたっぷり楽しんでから獣の餌にしてやるよ」
「そうか、それを聞いて安心したよ」
石動の言葉に僅かに眉を顰めたが、金髪ロン毛がヘラヘラした態度から次の瞬間、思った以上の素早さで踏みこみ右手の剣を袈裟懸けに撃ち込んできた。
その動きを予測していた石動は、銃剣を左斜めに構え、金髪ロン毛の剣戟を銃剣の刀身で受けると同時に右足を踏み出す。
相手の打ち込んできた力を利用して、シャープスライフルの銃床をくるりと回転させると、銃尾を金髪ロン毛の左こめかみに打ちつけた。
「ギャッ!」
知覚できないスピードでこめかみに打撃を受けた金髪ロン毛は悲鳴を上げて態勢を崩し、左手を思わずこめかみに当てる。
腕が上がったことで左脇が開いたのを見た石動は、素早く一歩下がって間合いを取ると、金髪ロン毛の左胸を銃剣で二回、目にもとまらぬ素早さで繰り返し刺す。
「グッ、カハァ・・・・・・」
心臓にダメージを受けた金髪ロン毛は力なく地面に膝をつき、朽木が倒れるように地面に伏した。
見る間に血だまりが広がり、辺りに濃厚な血の匂いが立ち込める。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます