第54話 金属薬莢弾
今回予定している長距離射撃では、銃弾を安定して使用できるよう、ついに金属薬莢に挑戦する。
そのため
まず銅と亜鉛を合金して「調合」し真鍮を「組成」する。
そして長い筒状の50‐130弾の薬莢を「錬成」した。
真鍮を「組成」するまでは割と順調だったが、薬莢を「錬成」するのは苦戦した。
長過ぎたり太過ぎたり、薬莢の側面が分厚過ぎたり薄かったりと、安定して「錬成」するまでにはかなりの失敗作と時間を積み上げねばならなかったからだ。
しかし、計画の日が近づいている為に昼夜を問わず「錬成」し続けると、1週間ほどでレベルが上がったのか、安定して「錬成」することが出来るようになった。
次は最大の難関だった「雷管」である。
これは前世界の物をそのまま再現するのは現時点ではあきらめているので、銅のキャップの中に薄く加工して「組成」した火の魔石を入れることで発火させることにする。
幸い先日のサラマンダーの襲撃で、サラマンダーから採った魔石を山ほどラタトスクから貰っているので、火の魔石には困らない。
因みにキングサラマンダーの巨大な魔石も、要らないと言って断ったのにラタトスクに押し付けられたので、マジックバックの中に仕舞ってある。
銅製の小さなキャップの中に、ボクサー型雷管をイメージして中央が盛り上がるような山形に魔石を「組成」し、その山に衝撃を受けると発火するよう「錬成」して蓋をする。
この作業も最初は失敗して素材を無駄にしたが、薬莢を錬成するうちに錬金術スキルが上がったせいか、以前出来なかったのがウソのように捗り、こちらも5日程で完成させることが出来た。
作り置いた真鍮製の薬莢に出来上がった雷管を嵌め込み、黒色火薬を秤で正確に計測して薬莢の中に注ぎ込んで手製のプレス機で弾頭を挿入し固定する。
この作業を繰り返して、100発の50‐130弾の金属薬莢弾を完成させた。
石動の横で、師匠が石動の作業を見て薬莢や火の魔石を使った雷管を「組成」「錬成」し、もう100発の銃弾を造る。
石動のように失敗はほとんどなく、アッサリ作って見せたが、師匠は顰め面で呻く。
「ふぅーん、錬成作業はそんなに難しくないけどね。こりゃーツトムは火の魔石をたくさん持ってるから良いが、そうでない者が魔石を買って造ったら一発がとんでもなく高いものにつくねぇ」
「(いや、自分はその作業もめっちゃ苦労したんですけど! )そのとおりなんです。本来は安く買えるはずのものなんですけどね・・・・・・。雷管も何とか原価を下げられるように、魔石を使わずに再現したいなぁ~と思っています」
石動も師匠に同意し、コストの問題は今後解決すべきポイントだと認める。
ここまでで2週間。
計画実行日まではあと16日。
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