第46話 308ウインチェスター弾
慌てて、
キングサラマンダーの方を見ると、弾頭は溶けたので貫通はしなかったが、何発も銃弾を浴びせられると衝撃や痛みは感じるらしく、怒り狂って石動に向け口を開けてブレスを放とうとしていた。
「(ヤバイヤバイ、急げ!)」
アモポーチから4発の308ウインチェスター弾を取り出すと、レミントンの用心鉄の前のボタンを押し、
銃を裏返しバカッと開いたフロアプレートとマガジンフォロアーを避けて弾倉内に4発の銃弾をザラザラッと放り込んで素早くフロアプレートを閉じた。
ボルトを引いてもう一発マガジンに弾丸を押し込んでボルトを閉じ、薬室に銃弾を送り込む。
文字にすると長いが、石動はこの作業を5秒でやり終えた。アモポーチの残弾はあと10発。
呼吸を整え、スコープの照準をキングサラマンダーに合わせる。
スコープの調整はこの世界に来てから出来ていないが、ぶっつけ本番で調整することにした。
まずブレスを放つのを阻止せねば!
ドゥーーン
黒色火薬と違って高性能かつ高圧力な無煙火薬の発射音を響かせて、発射された308ウインチェスター弾は狙った場所より少し右に着弾し、キングサラマンダーの右目横を貫いた。
やはりこの世界に来る前の「耳ナシ」の攻撃を受けた時に、ややスコープの照準が狂ったようだ。
「GARRRRRRRRUUUUUUUUUU!!!」
硬い高温の鱗によるバリアを破られて驚いたキングサラマンダーは、痛みの余りブレスを吐くのを止めゴロゴロとのたうち回り、そこらじゅうの建物や岩など触ったものに嚙みつく。
石動は冷静にスコープ内の
「GARRRRRRRRUUUUUUUUUUUUUUUUUUU!!!」
シャープスライフルの50口径弾のように巨弾の破壊力で頭を吹き飛ばす事は出来なかったが、308ウインチェスター弾は優れた貫通力を発揮して全弾キングサラマンダーの頭部を貫いた。
キングサラマンダーは苦し紛れに短くブレスを辺りかまわず吐き散らしながら、地面をのたうつ。左眼は銃弾が当たったため潰れて見えていないようだ。
その苦し紛れのブレスは大半が空の彼方に消えたが、幾つかは街中や神殿にも着弾した。
ブレスの進んだ方向にあった家や商店は一瞬にして燃え上がり、灰になる。その周辺は余りの高温から出火し、炎が上がった。
そんな状況がキングサラマンダーを中心にいくつも伸びて、町中が火の海になりそうな勢いだ。
神殿横の神殿騎士団宿舎にもブレスが着弾し、その周辺施設と共に燃え上がる。
またもう一発のブレスは石動を狙ったのが上に逸れたのか、神殿より上の世界樹の幹部分に着弾し、幹を貫通した。
次いで貫通した穴からは、まるでジェットストーブのように炎が勢いよく噴き出し、その周辺も幹も燃え始める。
石動はテラス部分から上を見上げ、世界樹が猛烈な勢いで炎を上げているのを見て唖然とした。
まさか世界樹が燃えるとは・・・・・・世界樹も木材であるいう当たり前の考えが全く無かった自分に気が付いたのだ。
世界樹は特別なんだから大丈夫、となんとなく思っていた。
「(自分のせいだ・・・・・・? ラタトスクになんて言えば・・・・・・)」
石動はジワリと胸に広がる自責の念を抑えられず、レミントンを抱えたまま動けない。
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