第44話 キングサラマンダー
「(これで3回目の魔石交換・・・・・・もう80発は撃ったと思うがキリがないな)」
素早く雷管代わりの魔石を交換しつつ、
シャープスライフルの銃身が連続して射撃しているのでかなり熱くなってきており、雷管モドキを交換している間もブリーチを開放して銃身内を空気を通して冷やしているが、焼け石に水の状態だ。
余りにも銃身が高温になるとその根元にある薬室内の温度も上がるため、紙巻薬莢の場合だと装填した途端に発火しかねない。
石動は已む無く、鉄が収縮して曲がりが出ない事を祈りつつ、マジックバッグから出したペットボトルの水を銃身に掛けて強制的に冷やした。
ジュッと音を立てながら湯気が立ち昇る銃身に水をたっぷりかけ、その上で薬室からボロ布を銃身内に通し、銃身内に水が残っていないことを確認した後、再び眼下に視線を移した。
神殿前広場は控えめに言っても惨憺たる状態になっていた。
神殿騎士や民兵たちは善戦しているがサラマンダーの数が多く、防ぎきれないファイヤーボールを受けたせいであちこちで炎が上がっている。
しかもナパーム弾の様なゲル状の物質があちこちで燃えており、水を掛けても消えないし踏み消そうとすると踏んだ足へ火が移り、その結果更に火事が広がってしまう。
まだ土嚢を積んだ最終防衛線の中まではサラマンダーの侵入は許しておらず、防衛線の外にはサラマンダーの死骸が山となっているが、その押し寄せる勢いは止まらない。
「(このままでは防衛線が破られるのも時間の問題だな・・・・・・いや、ここで何とか踏ん張らないと!)」
石動は少し銃身が冷えたシャープスライフルに再び50-90弾を装填すると、次々と湧き出てくるサラマンダーに狙いを付けた。
広場で指揮を執る騎士団長も石動と同じ思いなのだろう、くじけそうな騎士や民兵たちの心を鼓舞し、懸命に防衛線を維持し続けている。
その時、燃え盛る建物をガラガラと崩壊させながら巨大なモノがあらわれた。
炎に明るく照らされたその身体は深い蒼色に輝き、体長は10メートルは超える巨体だ。
頭の天辺から背中にかけて鋭い棘が生え、その棘は興奮色なのか金色に輝いている。
ほかのサラマンダーと違って身体つきもやや細身で西洋のドラゴンに似ており、目の周りは鮮やかな黄色だが、今は炎の光を反射して金色に光って見えた。
口から洩れる炎の舌はバーナーの様な高温を示す藍色で美しい。
「キングサラマンダー・・・・・・」
誰かがポツリと呟いた一言が、静まり返った広場にいた全員の耳に響いた。
「GARRRRRRRRUUUUUUUUUU!!!」
頭を擡げて天に向かい咆哮を上げたキングサラマンダーは、ついでその金色に光る眼を防衛線の土嚢に向けると口を開け、深い海の底の色の様に藍色に輝くブレスを放った。
一瞬にしてブレスに触れたすべての物が蒸発し消え失せる。
高く積まれた土嚢は幅3メートル程が、ブレスの余りの高熱に晒されて溶けて消え、消えた跡には土嚢の中に入っていた土砂が溶けて溶岩の様に赤く燻っていた。
その周辺で矢を射ていた神殿騎士や民兵たちは、直撃を受けた者は死体すら残らずに蒸発したように灰になる。
ブレスの軌道近くにいた者も、その高温の余波に焼かれて自然発火し、松明の様に燃えながら一瞬にして屍を晒していた。
その凶悪なブレスは全てを燃やし溶かしながら広場中心にまで進み、中心に設えた大きな大理石の噴水場に達する。
その時、噴水場にある大量の水と超高温のブレスが反応して水蒸気爆発が起きた。
その巨大な爆発は大理石で出来た噴水の台座や装飾物を粉々に破壊し、その破片を手りゅう弾の破片の様に周囲にバラ撒いて、やっとブレスは止まったのだ。
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