第43話 サラマンダー迎撃
「(高校生になっても、誕生日には母さんが鳥の丸焼きを焼いてくれたっけ・・・・・てゆーか今思えば鳥の丸焼きって、クリスマスでもないのにな。父さんも忙しいのに必ずプレゼント買って参加してくれてたな・・・・・・。妹の由衣の笑顔も楽しそうだった・・・・・・)」
神殿前の避難する家族をみて、家族への思い出に耽っていた
建物わきの路地から最前線で戦っていたと思われる神殿騎士や民兵たちが、矢を射ながら後退し、バラバラと神殿前広場に撤退して走り出てきたのが見えた。思ったよりも人数が少ない。
撤退してきた騎士や兵たちは素早く土嚢を越えると最終防衛線に合流し、矢の補充を受けたり負傷の手当てを受けたりしている。
それを横目に神殿を背に神殿騎士たちは弓を引き絞り、警戒を怠らないでいた。
暫くすると、騎士たちが撤退してきた暗い路地にポッと明かりが灯る。
ヌルっという感じで路地から姿を見せたのは、体長2メートル程のサラマンダーであった。
体表は紅く細かい鱗に覆われ、体長の3分の1以上を占める巨大な頭に紅い小さな眼、頭に比例した大きな口を持ち、口の端からチロチロと炎の舌らしきものが見えていた。短い手足やずんぐりとした尾も相まって、石動は昔ペットショップで見たガラスケースの中の外国産の砂漠に居たトカゲを思い起こす。その大きさはこのサラマンダーの10分の1ほどだったが。
サラマンダーは一匹だけではなかった。
暗闇から続々と炎の舌をチロチロさせながら這い出てくる。
その路地だけでなく、広場に出る他の路地にも犇めいていて、家屋の壁や屋根にも張り付いているのが燃え上がる建物の明かりで見えた。
火の中も平気の様で、燃え盛る建物の中から現れたものもいた。
「放てぇぇえぇっ!!」
騎士団長の号令で、一斉に矢を放つ神殿騎士と民兵たち。
さすがにエルフだけあって矢の威力と命中精度は高く、サラマンダーは次々に目と目の間の急所に数本の矢を受けて倒れていく。
前衛のサラマンダーが倒されたのを見ると、後続のサラマンダー達は尻尾を地面に叩きつけて
「うぎゃぁぁぁぁぁ!!」
運悪くそのファイヤーボールを浴びた神殿騎士の鎧が燃え上がり、受けた騎士だけでなく周りに居た数人のエルフ達の悲鳴が上がる。
ゲル状のため飛び散った飛沫も高温で燃えており、服に着いた燃える飛沫を払い落とそうとしたら余計に塗り広げてしまい炎の勢いが増す結果となって、パニックになる民兵たち。
石動はそれを見て、あれは前世界におけるナパーム弾の焼夷剤の様なものだと冷静に分析する。
アレを撃たれる前にサラマンダーを倒さなければ被害が広がってしまう。
そう思った石動の眼に、燃え上がる家屋の屋根から口を開けてファイヤーボールを撃とうとしているサラマンダーが映った。
シャープスライフルの照準を素早く合わせ、引き金を静かにおとす。
バァンッッ!
黒色火薬特有の大量の発射煙と共に発射された50口径の巨弾は、サラマンダーの口の中に着弾した。そのまま後頭部へ抜ける際に花が開いた様な形状につぶれた弾頭は、その後頭部のほとんどと脳を吹き飛ばす。
シャコンッと用心鉄レバーを操作してブリーチを解放した石動は、素早く次の50-90紙巻薬莢弾を装填して薬室を閉じる。
次いで今まさにバネの様に飛び上がり大きな口を開けたサラマンダーを狙い、同じく頭を爆発させるように吹き飛ばした。
広場で指揮を執っている騎士団長が石動の方を見上げ、ニヤッと口角を上げて笑うと、頷きながら右手の親指を立てて"イイね!"サインを送ってきた。
石動も笑い返すと手を振ってから、再びシャープスライフルを構えサラマンダーを狙った。
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