第38話 結界
弓を持ち剣を穿いて、背中に矢筒を背負ったエルフ達が松明を持って走り回っている。
よく見ると、神殿の周りは神殿騎士団の騎士たちは、神殿を警備している者と隊列を組んで門の方へ向かう者達がいる。このエルフの郷では男も女も弓が使えるので国民皆兵の様になっていて、戦えない老人や子供を神殿前の広場に避難誘導している女性たちの手にも弓が握られていた。
結界の外側でまた「ドーンッ!」と爆発音のような音が響く。
神殿を警備している神殿騎士に訓練場で見知った顔を見つけ、その騎士に駆け寄り「何事ですか?」と尋ねる。
「詳しいことはまだ不明だが、どうやら魔物が押し寄せているらしい」
「押し寄せるって! 魔物の調査にアクィラさんたちが行ったはずですよね?」
「先程、調査に言った小隊の一人が大火傷を負いながら帰ってきたんだ。どうやらサラマンダーの群れと遭遇したようだ」
騎士の顔にも心配の色が濃かった。当然調査に行っているのは友人や同僚なのだろうから心配するのも当然かもしれない。
石動もハッとして騎士の肩を掴んだ。
「アクィラさんは? 無事なんですか!」
「今のところは不明なんだ」
その時、更に大きな爆発音と共に「ガシャーン!!」というガラスが割れるような澄んだ音がした。
神殿騎士たちが大きく動揺し始める。
「あれは何の音です?」
「結界が壊れた音だよ。信じられないが・・・・・・」
神殿騎士と石動が顔を見合わせた時に、夜空に大音響での咆哮が響いた。
「GARRRRRRRRUUUUUUUUUU!!!」
半鐘を鳴らしていた物見櫓の付近が夜空に蒼く輝いたと思ったらゴォッっと巨大な火柱が上がり、バリバリッという破砕音と共に蒸発したように炎の中に消えてしまった。
「城砦が破られた?! ツトム、また後でな!」
挨拶もそぞろに神殿騎士が隊へ走って戻っていくのを見送った石動は、自身の行動をどうするべきか一瞬迷う。
指揮系統がはっきりしない状況で闇雲に動くのは効率が悪い。
情報不足だが城砦が破られた以上、場合によっては魔物がここまで侵入してくる可能性もある。
騎士たちやエルフの民兵の弓を掻い潜るのは至難の業だと思うが、先程の物見櫓の爆発は只事では無かった。
神殿に居れば情報も集まるだろう。
非戦闘員を守りつつ、状況によっては騎士たちに加勢するのが良さそうだ。
石動がそう判断して神殿の方を振り返ると、同時に、神殿に隣接された倉庫から突然天井をぶち抜いて火柱が上がった。
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