第25話 ライフリング
翌日、朝のルーティーンと朝食を済ませた
鍛冶場に着くなり親方にサーベルベアの素材をライフリングマシンの切削刃に組み込む相談を始めると、勢い込んで話す石動に驚いていた親方も真剣な表情に変わり、細かい打ち合わせの後にとりあえず試作してみることになった。
金属ではない魔物の素材をスキル「鍛冶」で加工するにはそれなりのスキルレベルが必要で、石動も親方の指導を受けながらの試行錯誤の作業となる。
以前から悩みの種だったライフリングを切削するための「フック」の素材を魔物の素材で試すのは良いが、魔物素材を大きな刀剣と違って小さなパーツに加工するのが意外なほど難しい。
この作業は石動には荷が重く、親方の手を借りないと困難だった。
素材もサーベルベアだけではなく、親方がグレートウルフの牙やコカトリスの爪などを在庫から引っ張り出して試し始める。
最終的には、鍛造炭素鋼で造ったバレルにはサーベルベアの爪から作ったフックが最も切削加工しやすいと判明して、製作に没頭すること7日。
石動や鍛冶場の全員が見守る中、親方がライフリングマシンのハンドルを勢いよく回す。
なぜ親方なのかというと、鍛冶場の中で一番身体が大きく力が強いからだ。
冷却用のオイルが飛び散る中、フックが銃身の中を行き来するのを、石動はマシンが正常に動作しているかどうか確認しながら見つめている。
親方がへとへとになり次のエルフに交代しようかという時、何度も銃身内を往復していたライフリングマシンがライフリングを切り終えた。
銃身を固定していた万力から外して、窓の明るい方へ向けて銃身を覗き込むとキレイな螺旋を描いた50口径のライフリングが完成していた。
「うぉー!! やったぁ!! ちゃんと出来てる! 親方、みんな、ありがとう!」
石動はやっとライフリング加工が出来たことへの安堵と達成感を感じた。
そして親方をはじめ仲間たちの協力でここまで来たことに感動し、込みあけてくるものを抑えきれないでいた。
そのため、親方や鍛冶仲間たちから笑顔でバンバン叩かれる背中や肩の痛みによって余計に涙ぐみながら
「ありがとうございました! 」
とお礼を繰り返していたのだった。
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