第14話 スキル

「なんだそりゃ」

 石動イスルギは思った。役割だって? 重要な役目を持つとはどういう意味だ?

 だいたい、自分は熊に吹っ飛ばされて気が付いたらこんな訳の分からない世界にいたと言うのに、役割も何も無いだろう。

 精霊だかなんだか知らないが、元の世界に戻れるかもと思って黙って聞いてれば自分がこの世界に重要な役割を果たすだと?


 それってもう帰れない前提だよね!


 いろいろ考えていると段々とムカついて来た。

 このペタパイのロリッ娘め!


『何やら失礼な思念が伝わってきたんだけど?』

「ラタちゃん、自分は元の世界では自衛隊員、こちらで言うなら唯の軍人に過ぎない。少しばかり銃の扱いは得意だが、そんな大層な役割など果たせるとは思えない。何かの間違いではないだろうか? 間違いならさっさと元の世界に戻して欲しいんだけどな」


 真剣な顔で石動はラタトスクの眼を見つめたが、ラタトスクは首を振った。


『残念ながら「渡り人」で元の世界に帰ったと言う記録は無い。だから戻す方法は分からないんだ。それにツトムの職業属性は剣士や騎士の様な軍人としての素養は人並み程度で、どちらかと言うと「錬金術師」や「鍛治士」の素養が高いようだぞ』


 ラタトスクの説明によれば、この世界の住人は10歳になると皆、世界教の神殿に行き、神官に自分のスキルにあった職業を鑑定してもらうのだそうだ。

 そして各人が教えられた職業に励み、自分のスキルを伸ばし職業レベルをアップしていくことで成長していくという。


 ハッとして石動は身を乗り出した。


「剣士? 騎士? この世界には銃は無いのか?」

『銃とは何だ? 戦士が使う武器なら剣、槍、弓などが普通だけど』

「ええええっなんだって! 銃自体が無い?! それなのに戻れない?! なんでそんなところに自分が・・・・・・。何の楽しみもないじゃないか・・・・・・」

 

 ショックを受け呆然とする石動と、石動から銃の概念を読み取り肩から下ろしたライフルの実物を見て興味深々なラタトスク。

 

 ハッと気が付いて石動はラタトスクに向き直る。


「ラタちゃん、ひょっとして自分の職業属性だの素養だの見えてるの?! 『ステータス』とか言ったら自分にも見えるのかな?」

『ステータスとやらの意味は分からんが、私の能力スキルアカシックレコードで見ているよ。でもツトムの職業は「???」となっていて分からないんだ』

「ええっ! 魔法は無くてもスキルはあるんだ・・・・・・」


 

『神殿の神官達では私ほどの能力スキルが無いし、詳しくは伝えられないだろうから、ツトムはラッキーだな! 私が直々に見て特別サービスで詳しく教えてあげよう』


 ラタトスクはポンッと机の上に羊皮紙と羽ペンを発現させると、スラスラと何やら書き始めた。


 【 ツトム・イスルギ 】

 職業 「????」

 職業スキル

 ・錬金術師  1/99

 ・鍛冶師   5/99

 ・鑑定    1/99

 ・暗殺者   8/99

 ・銃使い   10/99

 ・狩人    6/10

 ・兵士    6/10


『これはスゴイ。異常なほどのスキルだ。流石は渡り人ということか。でもツトムのスキルは物騒なのが多いねー。マジで何しに渡ってきたのやら』

「えっ、スキルがいくつもあるけど、これは普通なのかな? 良く分からん??」


 ラタトスクはニヤッと笑い悪戯っぽく付け加える。


『説明は必要かな?』

「もちろん、お願いします! そもそもスキルって魔法は違うものなの? 『錬金術』とか『鑑定』とかって自分には魔法の一種に思えるんだけど」

『まず言っとくけど、普通の人なら職業がはっきり表示されているし、スキルも職業に必要なものが一つついているのが普通だよ。例えば「剣士」なら「剣術」のようにね。こんなに何種類もスキルが付いているなんて異常だとしか言えないな。


 そしてスキル上限は普通は10くらいで、その人の努力次第でレベルアップするが上限値でストップする。とは言え0のうち6までレベルアップすれば人並み以上、8までいけば達人だし、カンストしてる人なんてめったにいないほどなんだからね。


 だからツトムの職業不明とかスキル上限99っていうのがまず異常だし、見たことないよ。

 そして職業に付随するはずのスキルがこんなについているのは珍しいだろう。


 それに「銃使い」ってスキルも初めて見た。「暗殺者」は「隠者」の上位スキルで、気配を感じさせないで対象を倒す文字通りのものだね。兵士は言わなくてもわかるか』

「ふんふん。(転生ものに付き物のチート仕様なのか。でもなんとなくスナイパーのスキルみたいな感じがするなぁ。)」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る