第11話 世界地図
『では、まずこの世界を簡略に説明しよう』
スッとラタトスクが手を振ると
よく見ると、革には世界史の授業で教科書に載っていた、中世ヨーロッパの時代の世界地図に似たものが描かれていた。
なんとなく、ヨーロッパ視点での地球の地図に似ているが、メルカトル図法を無視してた歪な感じだ。
そのうえ、地球でいう大西洋にダイヤ型の大陸があり、それを上下左右で取り囲むように大陸が配置されているのが決定的に違っていた。
西は南北アメリカ大陸がメキシコ無しに、海が隔てて別々の大陸になっている。
南はアフリカを押しつぶしたのとオーストラリアや南極が一緒になっていた。
北も北欧とシベリアやアラスカがあわせて大陸となり、東は一番大きくてユーラシア大陸に近い。
しかし、地球でいうバルカンや東欧のあたりに曲がりくねった太い線があって、大陸が分けられていた。
ラタトスクがスッと真ん中のダイヤ型の大陸を指さす。
『この世界はニーベルングと呼ばれている。これが世界地図で、真ん中に描かれているのがアトランティス大陸だ。世界の中心であり、神の住まう神聖な大陸とされている』
「アトランティスだって・・・? アレは失われた大陸じゃないのか?」
『失われたなど失礼な。世界の中心だぞ! あとはそれぞれアーガルズ大陸、ミルガルズ大陸、ヨトゥンヘイム大陸、ヘルヘイム大陸になる」
「北欧神話にアトランティス伝説が混じって違和感半端ないな・・・。あれっ、さっき六つの大陸って言ってなかった? これじゃ五つだよね?」
『良い質問だな。ミルガルズ大陸のここに線が引かれてあるのが分かるか? 」
ラタトスクがいつの間にか、白い指揮棒のような短い杖を持ち、その先で地図を指す。
「ああ、何の線だろうと思ってた」
『ここには大地溝帯が走っていてな、広いところでは幅10キロメートル、深さは平均して5キロメートルはある深い溝というか超深い谷になっていて、生き物はほぼ通ることはできないんだ。そして、その先は「魔大陸」と呼ばれ、魔物が住む世界となっているんだよ」
「魔大陸を入れて六つの大陸という訳か・・・・・・」
『そのとおり。今、私たちが居るのもミルガルズ大陸での真ん中辺りだ。魔大陸とはかなり離れているから安心してくれ』
ラタトスクが石動をニマニマと笑いながら生暖かい目で見ていた。 石動はジト目でラタトスクを見返しながら尋ねる。
「ところで魔物ってなんなんだ? それは魔大陸にしかいないのか?」
『いや、魔物は程度の差はあるがどの大陸にもいるよ。魔物が動物と違うのは、魔法を使えることだ。魔物は身体の中に魔石という魔力の塊を持っていて、その魔力の属性に応じた魔法を使うことが出来る。魔石の属性が風なら風魔法、火なら火魔法という具合にね』
石動はハッとした顔でうなづいた。
「そういえばロサを助けた時のデカい熊! あいつは届かない間合いのはずなのに爪の攻撃が三日月みたいになって飛んでたな!」
『ほう、サーベルベアをやっつけたのか。あれは風魔法を使える。ウインドカッターだろう』
「えええっ、あんなのがうじゃうじゃ居るのか、この世界・・・・・・」
『いや、ほとんどが普通の動物だぞ、鹿とか猪とか。まれに突然変異で魔石を生じたヤツが魔物となる。ツトムは来て早々、珍しいものを見られたわけだな!』
「いやいや、有り難くないし。そんなにたくさん居ないなら良かったよ。魔大陸は魔物の住処と言ったっけ?」
『魔大陸はすべて魔物ばかりらしい。らしいというのは余り正式の調査が行われていないからなんだけどね。何しろ魔大陸に行ったものは誰も帰ってこないんだから』
先程聞いた大地溝帯の話を思い出す。
確かにそんな大規模な断崖絶壁があるなら抜けるだけでも苦労するだろう。
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