第7話 コンタクト
「#$&$##*”$$&%? #$&&’$)@@&%$#!!」
英語でもロシア語でも無く、全く聞いた事の無い言葉だ。
それでもかなり警戒しているらしいことは伝わってくる。
そりゃそうか、こんな森の中で怪しい男が現れたら、警戒しない方がおかしいもんな。
でもとりあえず、あの左腕の出血を止めなければ。
そう思った石動は、リュックのサイドポケットを探って、個包装された飴を2個取り出した。疲労回復用にチョコレートや飴は常備してある。
『怪我は大丈夫? 良かったら傷の手当てをしようか?』
試しに英語で話しかけながら、笑顔を向ける。
ゆっくりと近寄り、警戒する女性の前で、飴の包装を破り、まず石動が口に入れて見せた。
そしてもう一つの飴の包装を破ると、女性に差し出してみる。
ニコニコしながら飴を差し出す石動を、しばらく女性は不審げに見つめていた。
石動が飴を口の中で転がし口を開けて舌の上に飴を乗せて見せると、右手を伸ばして飴を受け取り、恐る恐る口の中に入れる。
「#$%&!!!!」
驚いた顔からへにゃ~っと蕩けたような顔に変わり、またハッと我に返って石動を警戒するという百面相を何度か繰り返し、しばらくしてようやく警戒心を解いた顔で俯きながらつぶやいた。
「&%@*+$・・・・・・」
今のはなんとなくだけど、”ありがとう”と言われたような気がする。
そう思った石動は心配そうな顔に切り替えて、左腕の怪我を指さしながら通じれば良いが、と思いながら言った。
『その怪我、良かったら手当させてほしい』
なんとなく怪我を心配していることは通じたようで、エルフは大丈夫、という感じで頷きながら右手を傷口にかざし、何やら唱え始めた。
すると、傷口が薄っすらと光を放ち始め、光が収まったと思ったらキズすらない、スベスベの肌に戻っていた。
石動は驚愕して口を開けたまま、何も言葉にできず、ただ思う。
「(漫画で読んだヒールとかいう魔法ってやつ? ・・・・・・こりゃ、絶対此処は日本じゃないわ。一体、どうなってるんだ? 俺は今、どこにいるんだ?)」
エルフ女性の腕を見ながら腕組みをし、無意識に右手で顎を撫でながらブツブツ呟き、考え込んでしまう石動。
それを見ながら、エルフの女性はふと、何かに合点がいったように頷き、笑顔を浮かべて自分を指さしながら石動に話しかけた。
「ロサ。&%$#$%&ロサ」
続けて石動を指さし、首をかしげる。
「ツトム・イスルギ」
石動も名前を聞かれているのは分かったので、自分を指さしながら答える。
ロサは笑顔になり、「ツトム」と指さしながら言い、また自分を指さして「ロサ」と繰り返す。
そして、目を見て石動が理解したと分かると頷き、ついてくるよう手招きをして促した。
思い出したように熊のほうに駆け寄ると、腰の短刀を抜き、破壊されていない左の耳を切り落とすと、袋に入れしまい込む。
それから石動のほうを見て再びついてくるように仕草で促すと、歩き出した。
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