第7話 【昼寝の誘惑は甘くて危険?】ハマーのスリリングミッション

時刻は14時を過ぎた頃。窓の外が騒がしかった。ハマーの自宅から歩いで20秒ほど先にスーパーマーケットがある。そこからの声のようだ。それほど安いわけでも品揃えが豊富なわけでもない。でも、そこの店長が「いい人」だった。


離婚しようかどうか迷っているご婦人がいれば、店長室でじっくり1時間ほどお話を聞いてやる。万引きしような小学生にも声をかけて、怒るのではなく。「何か困ってることはないかい?」と優しく諭してやる。


先日、初老の老人が倒れた際には誰よりも先に呼吸、心拍の確認。心停止していたため心肺蘇生を開始。なんとか一命を取り留めたのである。いわゆる「聖職者」というものが存在するなら、この街の「聖職者」は彼女である。


パートナーの運には恵まれなかったらしく、40歳で独身である。しかし、見た目は20代前半とも思える美しい姿。20代の頃にそのスーパーの店長になっていた。との時、すでに「聖女」としてのオーラがあったらしく。店長目当てに来る客が多い!


毎週金曜日は、店長自身のファッションショー。実は店長、10代の頃に某ファッション雑誌の専属読者モデルもやっていたのだという。「何歳になっても『綺麗だね』言わせたい!」が彼女のポリシーである。40代とは思えないプロポーション。出るところは出て、引き締めるところは引き締める。足は細長くてムダ毛はおろか、肌に乾燥している箇所すらない。


そんなスーパーの店長にハマーも憧れていた。実は、ここに引っ越してきた数年前。右も左も分からない中、

「この街に今日引っ越しされたんですか?」

「は、はい。そうなんです。」

「あなた一人ですか?」

「はい、一度一人暮らしというものがしたくて出てきました。」

「あら、素敵。私、そこのスーパーで店長をしています。小田桜子と申します。よければ、荷物の運び込み手伝いましょうか?」


時間は11時、そろそろスーパーは忙しくなりそうな時間帯。わざわざ自分の引っ越しを手伝ってもらうのは悪いと思ったハマーは


「いいえ、荷物もこれだけなので一人で大丈夫です!」

「多分、ここの部屋。だいぶ長いこと使われていなかったから埃っぽいはず。」

「男性の初めての一人暮らしで掃除するの大変でしょうから、私手伝います。これからご近所さんになるし…」

「い、いやーでも、お店が…」

「大丈夫ですよ。私の部下は優秀です。私がいなくても判断できる素晴らしい人材ばかりなのです。」

これがカリスマというものなのか。本当にこの店長のためなら命も惜しまないというのがわかるオーラの持ち主。だからこそ、断ろうとすると。


「はいはい、無駄な抵抗はやめましょうね!」と言って無理やり部屋の鍵を奪われてしまうのだった。


「う〜〜ん、やっぱり埃っぽいですね。これは掃除しがいがあります」


結局、全て終わるまでの2時間。桜子に引っ越し作業を手伝ってもらうばかりか、手料理まで振舞ってもらうのであった。


「小田さん!」

「桜子とお呼びください。」

「では、桜子さん」

「さん、は入りません。桜子と呼び捨ててください。」

「流石にそれは…」

というと、桜子はいきなり上半身裸になり。


「桜子さん、なんで裸に!?」


「桜子と呼び捨てにしないと、叫びますよ。そして、あなたに乱暴されたと言いますよ」


「わかりましたよ。桜子。」

「はい、よろしい。」


今考えると、この頃すでにハマーは変な女性たちに絡まれる体質だった。その後、ハマーは「トイレ生活」に入るのだが、その間も桜子はハマーの自宅に訪ねてはご飯を作ったり、掃除をしてもらったりしていた。」


生活費が苦しくなると「これ、店のお惣菜の残り物。本当はダメだけどこっそり持ってきました。食べてください。あと、私がオムツを変えましょう。今日はいつも以上にお腹の調子が悪いみたいね。」


なんと成人男子の紙おむつまで交換してくれたのだ。もはや「お母さん」の領域。


何度も「なんで、ここまでしてくれるのですか?」と桜子に尋ねるが、彼女は不適な笑みを浮かべたまま


「秘密です。女は秘密が多ければ多いほど美しくなれるです。」

「でも、せめて何かでご恩返ししないと…」

「いいんですよ。若者を支えるのが私たち大人の役割。あなたは私に甘えていていいんです。」


というばかり全くの謎であるが、そんな疑問を忘れさせるだけの輝いているオーラがあった。



スーパーマーケット、「チェリーブロッサム」から聞こえる賑やかなお客様たちの声を聞きながら、数年前の思い出に浸っていた。隣には2日ほど前から、ハマーの家に居候をし始めている「猫耳メイド」の黒猫亜依が寝息を立てて寝ている。


彼女は「押しかけ嫁」としての役割を果たそうと、ご飯を作ったり、お掃除したり、溜まっていた洗濯をしていた。昼食にを混入させて、ハマーとの既成事実を作ろうとしたが失敗。


力尽きて、お昼寝中である。


「あー、眠っていると可愛いんだけどなー」

「こいつといると疲れる。」

「エロいこと嫌いじゃないけど、ここまで迫られると逆に引いてしまうんだよな〜」


眠っている亜依を見て急にハマーは、股間に違和感を感じた。というより痛い。かなり大きくなってきている。


「あれ?俺、亜依に欲情してる?」

「やっぱり、お昼ご飯をガッツリ食べたからか?」


亜依相手に欲情するものかと思っているのとは裏腹に、自分の一物の成長がおさまらない様子。ついにダイヤモンド紙おむつの力が発動。なんとか抑えている状況。しかし、

「あれ、なんかスースーする」


亜依の左手で髪オムツを脱がし、右手でハマーの股間をゲットだぜ。


寝ながら手コ⚪︎していたのだ。


「あー、そんな…」

寝ているかもしれないと、ほっぺたを触るも反応なし。明らかに寝ているのだった。


すっきりしたハマーはようやく自分でダイヤモンド紙おむつを履き直した。

「なんか、失った気分だ。」

彼は見た目は幼女パンツを履いたあと、今日の帰りの買ってきたジーパンを穿いた。


「まだ、寝てるのか?」

「本当に気持ちよさそーに寝るな。」

「なんか、一方的に…腹がたつ。」

「あっ、そうだ。せっかくだし、イタズラしてやろう」


「イタズラの定番といえば、落顔。マジックで面白い顔にしてやろう!」

そう落顔である。昔、幼馴染の女の子にやった時があった。その時はものすごく泣かれた。泣かれた後で、ボコボコにされた。本人ではなく、彼女の姉に。


「テメェー!うちの妹を傷物にしてくれたなー。タダじゃおかねー」

もちろん、ハマーもただやられているだけではない。全力で戦った。しかし、結果はボロ負け。それ以来、寝ている人の顔に落書きをできないでいた。


「あの時は、予測を見誤っていた。樹里ちゃんのお姉ちゃん。あれで、北辰一刀流の免許皆伝だったんだもんな。あんなに美人さんなのに怒ったらめっちゃ怖い。あれ以来あのお姉ちゃん苦手なんだよなー」


当時のことを思い出すと、尿が漏れそうになった。いや少しチビったがすぐに幼女パンツが吸収して綺麗に。完全に水分を吸い取るので元通りサラサラの下半身。


「でも、俺にはこの幼女パ、ではなくて、ダイヤモンド紙おむつがある。」


多少漏れてしまっても何もないかのように振る舞える。こっそり落書きして、写メして消す。いざという時の交渉材料にしたいのだろう。主に、亜依がセクハラしてきた時の…


「あー、なんかドキドキする。今ぐっすり寝ているところ。しかも、亜依にすぐ助けに来る姉がいない。っていうか亜依に兄弟いるのかな?」


マジックが凶器になる時。「これで、亜依をコントロールできる」そう思いマジックのペン先が亜依の顔に。亜依の顔に愛の落書き?である。


まずはマブらに目を描こうとすると…


ゴフッっっ!!


一瞬右脇腹に痛みを感じた。


ハマーは伊賀忍者の末裔。何かあれば気づけるはず。なのになぜか右脇腹に強烈なパンチを入れられた感覚。


「あれ、緊張しすぎて錯覚したのかなー?」

「吸ってー、吐いてー」

「これでOK!!」


再度、顔の落書きを実行しようとすると…


ドン!


「ごふー。ドン!」


今度は突き飛ばされた。


「あれ、今度は錯覚じゃない?」

「一体何が起きたんだ?」


今度は恐る恐る。警戒を厳にしつつ近づいてみた。

すると、目の前にいる美少女が凄まじく早い「蹴り」を繰り出していた。


「Cat KICK!」


しかも、寝言を言いながら。一体なんの夢を見ているのだろうか?」楽しそうな顔を浮かべながら蹴りを繰り出していた。顔を見ても目は完全に瞑っている。というより、軽く薄目を開けている。瞳が左右に動いていたので、夢を見ているのは間違いない!


「そうか、こいつ。物凄く寝相が悪いんだ!」


しかも、ダイヤモンド紙おむつで体を強化したはずのハマーの体。しかし、それでも彼は痛みを感じていた。つまり、強化したハマーの体より亜依の脚力の方が強かった。


「仕方ない。この術だけは使いたくなかったが…」


どうやら奥の手があったらしい。早く使えばいいじゃんと思うが使うと副作用があるらしい。


「みんな、オラに力を分けてくれ!」


どこかで聞いたセリフ。


「亜依はただ寝相が悪いのではない。伊賀忍者って確か、無意識に寝たままでも索敵迎撃する術を習得するという。つまり、気配を完全に消しつつ周りと同化すればいい。」


「まあ、普段の隠行を10倍にするだけなんだけどな。」


気配を消すと、


「おーすげ〜!!、これで完璧!」

「自分でも自分が消えていってる感覚だ!」

実はこの気配を消す術。自分でも初めて使っている。

どうやら問題なく使えているようだ。


「亜依に近づく前に、これを投げつけてみると…」


ハマー近くにあった、カラーボールを投げつけてみた。


「パン!!」


なんと高速で撃ち返してきた。やはり、近づいたものは無条件で跳ね返すらしい。こっそりと近づいてみる。すると。


「とりあえず、攻撃はしてこない。このマジックペンまで気配消してるから大丈夫だろう。」


「では、これから顔に落書きしてやる!」

「へへへへへ。」


少し落書きしてスッキリ。おそらく、これから長い付き合いになることは間違いない。ハマーが望む望まないに限らず。そんな気がきした。しかも、ほとんどが嫌になる程の苦労がほとんど。だから、少しぐらいイタズラしてもバチ当たらないだろう。そう思った。


「wwwwww」


大爆笑した。


「傑作ができた。」

「写メっとこ」

可愛い女の子だからこそイタズラしたくなる。というよりは、なんとなくそうすると面白いから。そんな軽い気持ちだった。


大爆笑した。腹を抱えて。笑いすぎてお腹が痛い。

そうやって楽しんでいた。


そんな大変なことになっているのに気づかず、爆睡中の亜依。

「Zzzzzz。ギシギシ!」

大きなイビキと歯軋りのオーケストラになっていた。もはや公害レベルの騒音状態である。


挙げ句の果てには口の中にお菓子のグミを入れる始末。かなり酷い。学校でそんなイタズラをされた日には、自殺を考えるレベルである。


「wwwwww」


一通り、亜依オモチャで遊び尽くすと。約8年ぶりに外で活動したハマーは寝てしまった。その後、やってくる「悪夢seisai」を知らずに亜依の隣で呑気に寝ていた。


遠くから見ると、夫婦で昼寝をしている温かい風景。


それから、1時間後…


「ピンポン」


ハマーがこのアパートに引っ越してきて以来、唯一インターフォンを押す人物がやってきた。

「ハマーさん、いらっしゃいますか?」

元気で大きな声。それでいて落ち着いた音質。そう、桜子だった。


他人知ったるなんとやらで、桜子はハマーの部屋を上がってきた。そこで桜子は衝撃的な現場を目撃する。


「あっ、…ああ、…」

「ハマーさん…」

「桜子さん、これは違うんです。」

「ハマーさんが…」

「これには深いわけがあって。」

「そんな幼女パンツを履いて」

「ごめんなさん、俺、変態ですよね?」

「どうせなら、うちで売っているパンツを買ってくださいよ」

「えっ、そっち!?」


(第8話へ続く)






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