第2話『結婚願望で男泣き』
主人公、独身で、無職の自称「ハマー」。彼は特殊な状況の中で生活しており、大人用のダイヤモンド紙おむつをはいた。彼の家系は甲賀忍者の末裔。しかも、彼の家系に限ってはかなり特殊なルールで、彼の人生をつまらないものにするのに十分なものだった。
お腹も弱いため、1日のほとんどをトイレで過ごす日々。トイレの中だけが彼のテリトリーと言っても過言ではなかった。そんな中、ダイヤモンド紙おむつ(大人用)と出会った。
ゴミ捨て場に行く途中、拾ってしまったのだ。試しに穿いてみると…
2階から落ちても傷ひとつ、ついていないぐらい彼の体は頑丈になっていた。しかも、常に悩まされていた腹痛が、「今まで何で苦しんでいたんだろう?」と思わせるぐらい、完全に治っていた。
どんより厚い雲に覆われていた空が、一気に青くなっていた。空にはうっすら白い月が目を点にして見つめていた。
「あれ、さっき俺2階から落ちたはずだよな…」
「頭から落ちたはずなのに、全く傷すらない」
「それどころか、今までの人生のほとんどを苦しめられていた腹痛が全くない」
ハマーは、「異世界転生の夢が…」と落胆しつつも「健康的な体ってこんなに軽いんだ」と健康的な体に初めて感謝した。
「これで童⚪︎卒業だ!」
「白いお月様が薄雲に隠れてしまった。まるで、最初に叫ぶのがその言葉!?」と苦笑いしているようだった。
健太は日々の生活にも苦労しながらも、何よりも結婚願望が強く、幸せな家庭を築くことを夢見ていました。しかし、自身の特殊な状況から、結婚に対する不安や恐れが心の奥底にあるのも事実でした。
そんなことはお構いなしに、ハマーはジャンプする。そして、ジャンプする。何回もジャンプしているうちに息切れしてきた。
「はぁ、はぁ」
彼の家は急行の止まる駅のすぐ前。歩いて30秒もかからない。しかも時間は午前7時。ちょうど、電車やらバスを乗り降りするお客さんでごった返している時間帯である。
「ガヤガヤ。ガヤガヤ」
それに気づいた時には遅かった。彼は身体中の穴という穴から火を噴き出す思いである。それは、2階から落ちたことでも、自宅の前でジャンプしまくってはしゃいでいたこともでもない。そう、彼が落ちる前。トイレにいたのだ。しかもダイヤモンド紙おむつをはいたまま2階の窓から落ちるというアクシデントを起こしてしまったのだ。上は、黒のTシャツ。下は紙おむつのままだ。しかし、彼の不幸はそれだけではない。ハマーは恐る恐る、自分自身の下半身を見下ろすと…
「えっ、何、このパンツ!?」
なんと、見た目が女性用のパンツに変わっていた。しかも、学校就学前の女児が履くような可愛らしいピンクの水玉模様がついていた。ハマーが6歳ぐらいの女児だったなら喜んでいたであろうあの人気のネズミのキャラクターが2匹もついていた。
「いやいや、俺、ロリコン違うし…」
「そんなこと言ってる場合か!!」
自分で言って、自分で突っ込んでいた。セルフツッコミ!
本人が聞いていたら「なんだと!」って怒られていたに違いない。
最近、ハマーの自宅周辺には変質者がいた。なんと、女児ばかりを狙っている変質者だ。今朝起きた時、ハマーが好きそうな髪が肩ぐらいまでの長さの左のサイドテールの少しおぼこい朝のテレビニュースの美人アナウンサーも言っていた。「それでは次のニュースです。⚪︎⚪︎市駅周辺に出没している幼児ばかりを狙う男の事件です。昨日も…」
ここ1ヶ月ほど、彼の自宅周辺では女児がいたずらされるという事件が起きている。
「お嬢ちゃん、君のパンツ。私におくれよ!チョコレートあげるからさ」
その犯人の決め台詞である。その犯人は神出鬼没。彼の住んでいる町全域に現れる。時間帯もバラバラ。わかっている事は、顔は鬼のお面をつけていて、体は筋肉質。下半身はなぜか、女児用のパンツを履いている。それで、近くを通った女児に声をかけるというものだった。
つまり、今のハマーの状況は「犯人に間違われる」ということだ。明らかにこれをみると、誰もが彼を犯人と見るに違いない。しかし、彼にその犯行はできない。なぜなら、生まれてからずっと、つい数分前まで常に腹痛に悩まされていたからだ。基本はトイレの住人なのである。
「せっかく、トイレから解放されたのに。今、ポリさんに捕まったら同じじゃないか。」
「早く戻らなきゃ、やばい。みんな見ている」
慌てながら、彼のすぐ後ろにある彼の自宅に戻ろうとすると…
「あのー」
後ろからか細くも、しっかりとした声をかけられた。
「あのー、ごめんなさい。これは事故なんです。」
そう言って、振り返ると誰もいなかった。
「誰もいない!?」
また、すぐに自宅に戻ろうとすると。
「あのー、可愛いパンツを穿いたお兄さん。」
「あー、幻覚か。俺、どんだけ欲求不満やねん。」
不自然な関西弁でセルフツッコミ♡
「だから、お兄さん。下見て!」
言われた通り、下を見ると。
なんと黒猫が喋っている。
だんだんと騒がしくなってきた。とりあえず、その黒猫の首根っこを捕まえて家の中に入った。慌てて自宅の中に入ったが、実は自宅前の人々は誰も彼のことを見ていなかった。なぜなら、ハマーは甲賀流の忍者。意識しなくても気配を消すことができる。例えるなら、ずっと家にいるのに家族から「あんた、ずっといたの?」と聞かれるぐらい影を薄くすることができるのだ。
とりあえず、ハマーは豚箱に入れられる事は無くなった。
「お兄さん痛い。」
「ああ、ごめんごめん。」
女児のパンツを穿いている変態男は黒猫を離してあげた。
「お前、非常識だな。猫のくせにしゃべりやがって。しかも、人混みの中だぞ」
「見つかったらどうするんだよ!』
「いやいや、小さい女の子用のパンツを穿いているお兄さんほどやないよ」
最もなツッコミにハマーはぐうの音もでない。
「ううぅぅぅっ…」
不可抗力とはいえ、自分の今置かれている状況に打ちひしがれていると。目の前にいる黒猫がだんだんと大きくなってきた。
「お前、目的は俺か?」
「俺、体か!」
「俺、この通りガッリガリだから食べても美味しくないぞ!」
まるで、ビッ⚪︎ライトを当てられたように黒猫は大きくなった。ハマーは黒豹に襲われると観念した。
その黒猫もとい黒豹は約180cmを超えたあたりで光に包まれた。
「あっ、眩しい。」
その光の中からなんとも言えない、鈴蘭のような高級で優しい香りがした。
光がおさまるが、彼は目が眩んでいた。
「目がぁぁぁぁ、目がぁぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁ」
数秒してから、幼女パンツの変態男は仏様を拝むことになる。
やっと、目が慣れてきた男の目の前に現れたのは今までの彼の境遇からは絶対に見ることができない光景だった。
艶のある茶色がかったセミロングの髪、大人の雰囲気を漂わせつつどこか幼い感じの顔、まるでサファイヤのように輝いている水色の瞳、大きくも重力に逆らっている乳房、引き締まっているが女性らしい丸さを残したお腹、弾力のある太もも、色っぽい肩、しかも頭には猫耳。
その道のマニアだったら、「俺の嫁」にしたいぐらい理想的で最高の美少女がいた。見ているだけで癒される。しかも、生まれたままの姿。
この部屋にまた一人変態が現れた瞬間である。
初めて見たのが、まるで昔テレビで「ルーブル美術館の特集」で見たビーナス像を間近で見ているような感じがした。
「これはどういうこと?」
「お前は、何のために俺に声をかけてきた?」
「お前は、どこの誰なんだ?」
つい数十秒ほどまで抱いていた疑問のことなど忘れてしまうほどである。「ああ、こんな可愛い女の子と結婚できたらいいのになー」。変態男は自分に結婚願望があることに気づいた。
「えっ、これは…」
彼は両手で目の下を触ると、湿っているのがわかった。
「俺泣いているのか?」
今まで、どんなに辛いことがあっても泣いたことがないことだけを密かな自慢にしていたハマーが初めて泣いた瞬間だった。
「もう、死んでもいいや」
今まで「輝いてはいけない」という家訓で彼は自分は幸せになれないと思い込んでいた。しかし、そうでは無い。
どんな状況でも、幸せかどうかは自分が決めること。例えば、お金がない人の全てが不幸なわけでない。最低限暮らしていければ「最高」と感じる人もいる。
だから、「自分は幸せなんだ」と思い込む選択をしようとハマーは決意した。
そんなふうに考え込んでいると
パン!
彼は右頬に違和感を感じた。正面を見ると、猫耳娘がほっぺたをプクって膨らませながら仁王立ちしていた。
「私と結婚しなさい」
「???????」
彼が欲しい言葉だった。普通なら「お願いします。」というところだった。しかし、混乱からか、彼は思っていることとは違う言葉を発してしまった。
「お前誰だよ!」
「えっ、私!?」
「そういえば、まだ名乗ってへんかったなー。」
「私の名前は、黒猫 亜衣よ!」
「見たまんまかよ!」
彼はそう心の中で呟いたのだった。
(続く)
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