第9話 テルースとの約束

 「テルース、やっと、見つけた」


 変なオジサンがテルースに声を掛けた。


 「あっ、カネモッチさん。何か、用ですか?」


 このオジサンは、カネモッチと言うのだ。テルースとどういう関係なのだろう。魔法学院の食堂まで、押し掛けて来て。


 何かわからないけど、揉めている。


 「夕食」「マリーダ王女」「迎えを寄越す」「部屋で待て」などの、言葉だけが耳に残った。


 私は、テルースに聞いてみた。


 「テルース、マリーダ王女って、知り合い?」


 「マリーダ王女って、知らないよ」


 「テルース、何故、嘘をつくのよ。私、友達でしょ」


 何故か、テルースは、私に本当の事を話したがらない。いつも、肝心ことは、誤魔化そうとする。


 「そうだよ。ユイカは、私の可愛い友達だよ」


 友達と言いながら、何故、隠すのか、私にはわからない。


 「だったら、本当の事を教えてよ」


 「本当の事って、今日初めて会うんだよ。さっき、来た人がマリーダ王女に会えって、うるさいんだ」


 「そうなの。マリーダ王女に会いたいのじゃないのね」


 「本当だよ。僕は、ユイカと一緒に夕食も食べたいよ」


 どこまで、本当なのか、判断できない。でも、これ以上追及するのは、だめかも。私の事を重荷に感じるかも。


 「本当。嬉しい。でも、マリーダ王女の誘いでは、断れないね」


 「ごめんね。残念だけど、行って来るよ。ユイカとは、その後でも会えるね」

 

 『本当に、会いたいと思っているの?』って、聞きたかったけど。声に出せなかった。


 「そうね。ここは、全寮制だものね。そうだ。夕食後、私の部屋に来てよ」


 「でも、ユイカは、相部屋じゃないの?」


 「いいえ、部屋が空いているから、成績上位10位までの生徒は、一人部屋になってるのよ。だから、私の部屋は、私一人よ」


 「そうか。それなら、気兼ねしなくていいね」


 「そうよ。遠慮はいらないわ」


 本当に、テルースが、私の部屋に来るの?夢みたい。でも、あの悪魔がいる。テルースの事を知られたら、どうしよう。もういいわ。知られたら、その時のことよ。


 私は、テルースが迷わずに私の部屋に来れる様に、食事を終えた後、部屋を案内した。


 私は、次の講座も出席するので、テルースとは、私の部屋の前で分れた。


 でも、今の気持ちのままでは、授業に集中出来そうにないわ。どうしよう、夕食後にテルースが私の部屋に来る。2人だけで、部屋で過ごすの。


 そうだ、お茶とお菓子を用意しておかなくては、授業が終わったら、街で、買い物をしよう。思うだけで、ウキウキして来た。

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