第8話 変なオジサン

 テルースが、ピアを連れて、教室の前にやって来た。


 「ユイカ、この講座を取っているの?」


 「私、出来るだけ、多くの講座を取っているのよ。今の所、すべて、出席よ。テルースは?」


 「私は、少しずつ取っているの。結構、休みがちなの」


 「そう。病気には、見えないけど、身体が弱いの?」


 「そうでもないよ。元気よ」


 「出席できなかった講座は、私が教えるよ。いつでも聞いてね」


 「でも、すべての講座を取っていると忙しくない?」


 「1講座が90分で、1日に最大3講座しかないから、余裕よ。それに、魔法以外の講座は、免除されているの」

 

 「魔法以外って、何があるの?」


 「今は、リテラシーっていって、読み・書き・算数の講座があるの。後期からは、格闘術が入るみたい」


 「私、説明のとき、寝てたから。よく覚えていないの」


 テルースは、魔法学院の事に興味がないみたい。ほとんど、何も知らない。でも、私が何でも、教えてあげる。


 「そうか。でも、私が居るから、何でも聞いてね」


 「テルース、お腹、空いた」


 ピアが、私とテルースの会話に割って入って来た。


 「あら、ピア、何か食べたいの?」


 「うん。食べたい」


 「テルース、少し早いけど、食堂に行く?ここの食堂は、いつでも行けるの」


 「それじゃ、行こうか。ピア、行くよ」


 「うん。行く」


 私達が食堂に入っていくと、周りから、何だか見られているみたい。ピアのせいかな、分からないけど。


 食堂は、昼にはまだまだ早い時間にも拘わらず、多くの生徒がいた。この魔法学院では、生徒がくつろぐ所が、食堂と自分の部屋だけになっている。そのため、多くの生徒が食堂に集まっている。


 まあ、無料のドリンクやクッキーも食べ放題なので、集まるよね。


 食堂は、バイキング形式で、好きな物を皿に取って、食べるようになっている。私達も、料理をトレーに盛って、空いている席を探した。


 「テルース、ここ空いているよ」


 「ユイカ、ありがとう」


 「さあ、食べようか。ピアも食べてね」


 皆で、食べ始めると、食堂の入り口が騒がしくなってきた。どこかのオジサンが叫んでいるようだ。


 「誰かな?騒いでるよ」


 「本当ね。でも、テルースって言ってない?」


 「ここにオジサンの知り合いは、居ないよ」

 

 「そうかな。確かに聞こえたんだけど」


 いつの間にか、そのオジサンは、私達の所にやってきていた。オジサンは、スープに夢中で、気がつかないテルースをじっと見つめていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る