第7話 水魔法の初級講座
テルースがピアと一緒に教室に入って来た。私の視線に気付かずに、いつもの後ろの方の席に座りに行ってしまった。
少しは、仲良くなれたと思っていたのに。友達とまで、言ってくれたのに。なんだか、テルースは、口先だけの人みたい。
これから、今日の最初の授業『水魔法の初級講座』が始まる。上級教師のユキ先生が入って来た。
「私は、初級水魔法の講座を担当するユキと言います。よろしくね」
ユキ先生は、人当たりの良さそうな先生だった。ユキ先生は水魔法で人形を作り、空中でダンスをさせた。皆は、ユキ先生の魔法に見とれていた。
暫くして、ユキ先生が教室の皆に声を掛けた。皆は、我に返って、ユキ先生の言葉に集中した。
「まずは、掌の上で、水の球を作って下さい。それから、それの形を好きな動物の形に変形します。最後に、掌の上で動かしてください」
この魔法学院では、授業を受講する時に、適性を調べられる。その授業の適性がないと授業を受講できない仕組みだ。だから、この講座では、全員が水魔法を使える。
生徒達は、言われた通りに水魔法で動物を創り、それを動かしていた。
「はい、いいですね。よく出来ています。それでは、同じことを氷でやってみて下さい」
「えっ、氷。私、出来ない」
「私も、やったことないよ。氷って、初級なの?」
すでに、氷を作り、動かしている生徒も何人かいるが、大半の生徒が戸惑っている。
「はい。分かりました。それでは、そこのあなた、前に出て来てくれる」
「私の事ですか。ユキ先生」
教室の最前列に座っていた為か、私が、ユキ先生に指名された。
「そう。あなたよ。名前は?」
「私は、ユイカと言います」
「それでは、ユイカ、前に出て来て、もう一度やってくれるかな」
「はい」
私は、前に出て行った。そして、教室を見渡した。皆に私の魔法を見せるためだ。
ここからは、教室の中が良く見えた。そして、教室の隅でピアと一緒にくっ付いているテルースも良く見えた。私の方を見ている。頑張らなくては。
私は、ユキ先生の横で、氷の人形を創り、踊らせた。
「皆さん、よく、見ましたか?」
「「はい」」
「それでは、イメージが出来たと思います。それでは、他の人も、もう一度やってみてください」
私は、席に戻った。テルースの視線を感じながら。
「おっ、出来た。氷ができたよ」
「私も、出来た。氷は、初めて。綺麗ね」
今度は、多くの生徒が氷をつくり、動物の形にしていた。まだ、動かすことができない者が多いが、確かに、氷が出来ている。
やはり、魔法はイメージが大事みたい。うまく出来ている生徒の魔法を見るだけで、イメージが出来上がる。そして、そのイメージで魔法は、簡単にできるということだわ。ユキ先生は、そのことを熟知しているようね。教えるのに慣れているみたい。
その後も授業は順調に進み、終了した。生徒は、次の授業の準備のため、急いで、教室を出て行った。ここでは、講座ごとに教室が決まっている。そこへ、生徒が移動していく。すべての講座の授業が、特別教室で行われるようなものだ。
私達は、美術教室や体育館へ移動するように、授業毎に移動を繰り返している。
でも、移動は、そんなに大変ではない。休憩時間は十分にあり、1日の授業コマ数が3コマ以下なので、問題ない。
「あっ、テルース。ユイカよ」
私は、テルースに手を振った。立ち上がって、大声をだした。少し恥ずかしいけど、素通りされるより、マシだ。
テルースも私に気付いたようだ。良かった。
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