第6話 テルース、私の王子さま?
始業式も終わり、授業が始まった。始業式前になるとエイコが私に部屋に来る回数も減っていった。最近では、ほとんど来ない。
「少しは、私も落ち着けるわ」
エイコに振り回されて混乱していた私の感情も、少しは、落ち着いてきた。そして、授業が始まり、勉強に集中できたので、エイコのことを少しは忘れることが出来た。
私がテルースと初めて会ったのは、入学式の後の食堂でだった。入学式の後だったので、保護者や来賓の方も食堂にいて、食堂の中は、ごった返していた。
そんな中に、空席があったので、私は、急いで席を確保しに行った。
「すみません。隣いいですか?」
「いいよ。座って」
「私は、ユイカと言います」
「ユイカ、あっ、新入生代表で、挨拶してたね」
「はい、そうです。少し、恥ずかしかったです」
私は、テルースの横顔をこっそりと、見ていた。髪の毛はちょっとウェーブが掛かっており、耳が出るほど、短くカットしていた。軽く横分けした髪がシルバーで、綺麗だった。
「そうか、君がユイカか。私は、テルース、こっちが相棒のピアだよ」
「初めまして、ユイカと言います。ピアもよろしくね」
ピアは、テルースの従魔で、猫耳族のワーキャットだった。ワーキャットは、とても凶暴だと聞いていたので、テルースの横で大人しく座っているのが、意外だった。
「ユイカ、ここの食事美味しいね。」
「はい、私も好きです。」
「確か、ユイカは、満点だったて、ゴールドが言ってたよ。凄いね」
ゴールドって、この魔法学院の学院長のはずよね。それを、ゴールドって、呼び捨て?
「いえ、たまたま全属性に適合しているだけで、大したことはありません」
「確か、カルとオリエも、全属性の適合者だよ。」
「そうですか、私以外に2人もいるのですね。」
「ダメかい。」
「いえ、そんなことないです。故郷では、2属性に適合しているだけで、特別扱いされていましたから。やはり、魔法学院の生徒は違いますね。」
「この国全体から、集まって来ているからね。」
「テルースは、属性は、何ですか?」
「私も、一緒だよ。でも、内緒にしていてね。知られるの嫌なんだ。」
「わかりました。2人だけの秘密にします。」
あっ、思わず、「秘密」だなんて言っちゃった。変に思われなかったかな。
「秘密か、いい響きだね。2人だけの秘密って、なんだか、特別な関係みたいだね。」
「えっ、特別だなんて、恥ずかしい。」
良かった。変に思われていなかった。却って、喜んでいるみたい。笑顔が可愛い。
「私じゃ、ダメかい。」
「いえ、そんなことないです。テルースは、素敵です。」
思わず、素直に本心を言ってしまった。私、テルースに一目ぼれ?
「ありがとう。ユイカも可愛いよ。」
テルースは、私の頭をポンポンと軽く叩いた。
私は、初めての事で、顔を赤らめて、下を向いてしまった。
「ごめん、嫌だった?」
「いえ、嫌なことありません。」
「それなら、良かった。それじゃ。」
テルースは、席を立って食堂を出ようとした。私は、勇気を出して、テルースに声を掛けた。
「また、お話させてください。」
「ユイカ、いいよ。もう、友達だよ。2人だけの秘密もあるしね。またね。」
テルースは、食堂を出て行った。
私は、食堂を出て行くテルースの後ろ姿を、いつまでも、見つめていた。
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