第5話 嫌な担任

 やっと、私だけの部屋を手に入れた。ここには、あの悪魔のようなエイコはいない。ほっとした為か、ベッドに入るとすぐに寝てしまった。


 ドアが開いたのに気が付かなかった。真っ暗な部屋で、身体の上に誰かが、覆いかぶさっているのに、気が付いた。


 思わず、押しのけようとしたが、その両方の手を掴まれて、上に押し付けられた。私は、万歳のような体制になった。


 「じっと、していてね。ユイカ」


 「あっ、エイコ」


 「そうよ。よく分かったわね。身体が私を覚えているようね」


 「部屋の鍵をかけ忘れたようね。一人の部屋に慣れていないから」


 「もう、嫌よ。誰か、呼ぶわ」


 「いいのよ。誰でも、呼んでちょうだい」


 「困るのは、エイコでしょ」


 「どうして、私が困るの?」


 「だって、この魔法学院に勝手に入って来ているから、警備の人に追い出して貰うわ」


 「あら、忘れたの?私が、この魔法学院の上級教師だってこと」


 「えっ、あれって、嘘だと思っていた。こんな人が上級教師だなんて、ありえない」


 「この世の中には、何でもありなの。力をもっていればね」


 「そんなあ、もう、いやよ」


 「貴方も、もう、すべてを受け入れなさい。ほら、身体は、正直よ」


 私の生活が、一瞬の内に崩れ落ちていく。あの、残酷な感覚がよみがえった来た。自分の力のなさ、無力感が私の身体を満たしていく。それと同時に、私は、反抗する気力をなくしていった。またしても、私は、エイコのマリオネットになってしまった。


 エイコの私の身体への浸食は、朝まで続いた。まだ、この魔法学院の入学式も終えていない。あと、1週間ほどは、エイコは暇らしい。また、来ると言い残して、消えて行った。


 「そうそう、ユイカ、鍵を掛けても無駄よ。私、この寮のマスターキーを持っているのよ。当然よね。私がこの寮の責任者だからね」


 もともと無駄だったのだ。鍵をかけ忘れた自分を責めていたが、それすらも、エイコのいたぶりだった。私を後悔させるために、ワザと言ったのだ。


 「どうしよう」


 自分が描いていた学園生活が消えていく。最悪の色に染まっていく。


 「どうして、私だけ、こんなことになるの。あのエイコが教師だって、信じられない。そのうえ、私の担任で、しかも、寮のマスターキーを持っている」


 「こんな私を救ってくれる王子さまは、現れないのかな」


 そんな、儚い希望を抱いた。死にたい気分だけど、ユイカは、自分が強く成れば、この環境を変えれると、信じていた。


 「死ぬのはいやよ。あんな女の為に、私の人生を投げ出すなんて、できない」

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