第11話 意地悪な課題

 上級教師のマリーワ先生の初級土魔法の講座の課題は、次のものだった。


 「それでは、コップの黒い砂を2つの三角フラスコに分けてください。コップや三角フラスコには、手を触れてはいけません。それでは、始めなさい」


 「これが、土魔法?どういうこと?」


 「意味不明」の言葉が、頭の中を飛んでいるよう。


 「黒い砂を分けるって、どういうこと?」


 私は、何が何か分からなかったので、ボーと黒い砂を見つめていたの。そしたら、黒い砂だけじゃなかったの。私は、てっきり、単一の砂と思っていたの。でも、2種類の砂が混ざっていたの。


 だから、マリーワ先生の指示は、分類するということになるわ。2種類の砂をそれぞれ、別々の三角フラスコに集めるということになるのね。


 よく見ると、すべての砂が黒い訳ではなかったわ。1つは、黒いんだけど、もう一つは、透けているの。でも、透けているって、変なの。色んな方向に光が反射するので、白っぽく見えてくるんだから。


 私は、片方の三角フラスコに、黒い砂を、もうひとつの三角フラスコには、透けている砂をいれて、二つに分類したわ。


 「どうですか?出来ましたか?」


 マリーワ先生から見て、指示通り出来たかどうかは、一目瞭然ね。真っ黒な三角フラスコと透き通った砂が入っている三角フラスコの2種類が見えるのだからね。


 「ふむ、ふむ、出来ている人もいますね。失敗した人は、やり直しなさい。

 出来た人は、土の器を2個作り、それぞれ、三角フラスコの砂を入れなさい」


 私は、指示通りに、それぞれの砂を、新しく作った土の器の中に入れた。


 「準備が出来た人は、それぞれの土の器の中の砂を溶かしなさい」


 「あれ?砂を溶かすって、これは土魔法だったかなぁ?」


 私は、思わず、呟いてしまったわ。熱を加えるなら、火魔法のはず。でも、ガラスの瓶を作るのは、土魔法だったね。


 「何が違うの?」


 また、私は、呟いてしまったわ。


 溶かすということは、状態を変化させることね。固体の状態から、液体の状態に変化させるわけね。


 魔法の対象が、砂だから、土魔法になるの。単に熱を加えるのであれば、対象が何であれ、実施できる火魔法になるの。


 いままで、あまり意識していなかったけど、明らかに異なるのね。同じ結果を得ることが出来るにも拘わらず、その時の魔法の使い方は色々あるということね。


 私は、土魔法で、土の器の砂の状態を変化させていくと、確かに液状になったわ。


 どちらの砂も同じ魔力量で、液体になったけど、もし、これを火魔法で行ったら、おそらく、魔力量は大きく異なっていたわけね。それは、物質が異なれば、溶けだす温度も違うはずだから。


 魔法を起動するだけの授業なのに、意外に頭を使ってしまったわ。思わず、教室の後ろにいるテルースを見つめてしまった。


 やばい、可愛い。テルースの真剣な顔、いつまでも、見て居られる。私と同じように頭を使ったのだわ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る