第41話 小夜時雨を読んで、色々語っちゃいました!

◎今回の読書会作品

 文学フリマ東京にて発売した、ネット小説家16名の短編集『小夜時雨』


◎今回の読書会参加者

・加納友美 

 動物と話しが出来る大学一年生。

 どんな状況や作品にも、なりきりスキル発動により対応可能。

・ヘビのヘビッチ

 中二病気味のコーンスネイク。解説役。

・ニワトリのニワッチ

 カラスに恋した、友美さん嫌いのニワトリ。

・亀の亀頭カメッチ(メス)

 下ネタ好き。

 友美さんの家で暮らす博識なカメ。



 ガチャ


 「やあ友美ちゃん。今日の作品は、漆黒の夜空に波打つ、一筋の白蛇の様な海練をもたらした奇跡と魂の活字集だ。わかっているかい?」


 「あ、うん。だ、大丈夫だよ!」

 (なんか目つき怖いよ?ヘビッチ?)


 私は読書会が開催される自室に入室しましたが、威嚇の様な目つきで舌をチロチロと出し入れしながら語る、ヘビッチの相変わらずの中二っぷりに多少恐れ慄いています。


 「友美。ヘビさんとニワトリさんと私の夜食は用意してきたのかしら?」


 カメッチはテーブルの上でヘビッチの横に陣取り、手足を甲羅に引っ込めて、頭だけを出しています。


 「あ、うん! ほら、ヘビッチにはジップロックで湯せん解凍した冷凍ラット、ニワッチにはトウモロコシをすり潰して、カメッチはカマボコ用意したよ!」


 「友美ちゃん! なんで馬鹿のひとつ覚えみたいにトウモロコシばっかなのよ! たまにはミミズとかも用意しなさいよ!」


 ニワッチはベットの上でくつろぎながら、羽をバタバタさせながら私にクレーム。


 「え? ニワトリって虫も食べるの?」


 「そんなの常識じゃない! 当たり前よ! しかも大好物よ!」


 「ニワトリさんの言う通りだ。主食は穀物だが、虫なども好んで摂取するらしいからな。配慮頼む」


 「…………」


 ニワッチとヘビッチの連携プレーでプチ雑学を披露した後、読書会は始まりました。


 ――――二時間後。


 「友美ちゃん。この作品を紹介する前に一言所望したい。不思議だと思わないか?」


 「え?! 何が?」


 「お互いが、ほとんど顔も合わせた事がない16名の作家様達が、一つの志により活字を集結させて、一冊の本となりこの世に誕生した……よく考えたら、とても不思議だと言う事だ。まさに感動の波長が絶え間なく浜辺に打ちひしがれている様だ」


 「確かにそうだね! ほんとに感動したね! 感謝しかないよ……」


 「私なんて、この作品集をよんで感動して、15回もイッたわ」


 「…………」

 (え?!15回も? カメッチ大丈夫? あれ? 16作品だよ? 一回足りなくない?)


 「そうよ! 友美ちゃん、あなたほんとに感謝してるの? しかも、あなたのあの作品は何? ふざけてんの?」


 「いや……ふざけてはないかと……」


 「ガラガラ!シャー!」


 「あ、はい……ごめんなさいでした」

 (ヘビッチ……急に割り込んで来て威嚇は怖いよ……)


 「友美。作品を一作づつ紹介する前に、あなたの作品はふざけてるから、珠邑ミト様の重厚な作品の前に配置させて頂いたのよ! 感謝しなさいよ」


 「え? そうなの?!」


 カメッチは、ついに両手足を甲羅から出し、カマボコを咥えながら衝撃発言。


 「そうよ。しかもエピソード順には全て意味があるのよ。この短編集は基本ジャンル等なんでも自由だから、オカメ作品とそうでない作品を交互に配置したのよ!」


 「カメッチさん。それに関しては僕から補足しよう。まずは第一話はオカメコミュニティの始祖である、うり北うりこ様――これは当たり前の事だろ? そして第二話に木曜日様を配置させて頂いたのは、インタビュー形式でオカメと言うコミュニティの模範的な説明をしている作品だったからだ。そして、読者にこの短編集を理解してもらった後は有木珠乃様の幻想的な話、そして冒頭のインパクトが絶大なみちのあかり様の作品……」


 「ヘビさん、駄目よ! 詳しくは一作づつ紹介するんだから!」


 ニワッチはちゃっかり私の膝の上に陣取り、ヘビッチの発言を静止。


 「すまんすまん。と言う訳で作家様達の魅力を最大限活かせる様に、色々と考えて掲載順も決めたと言う訳だ」


 「そうなんだね……」


 「じゃあ1作品づつ紹介しましょ。最初は、私も二回イキかけたpico様の作品、『大気圏をこえるキュン』よ」


 「可愛い作品だったね!」


 「そうね。見守る様な表現の語り手が優しい世界観を引き立たせているわ。思春期の二人のキュンキュンする会話劇でクスッとさせて頂いたわ」


 「そうだな。pico様の作品は他にも拝読したが、安心感があるな。文芸的な恋愛作品テイストな要素も含む表現手法だから読み易く、場面がとても想像し易い。先日、あるコンテストで受賞もされたのも頷ける、優しい作品だ」


 「そうだね!」


 「友美の汚れきった、肉欲ありきの恋愛とは違うわね」


 「…………」

 

 カメッチは、大人の階段を登りきった私に、辛辣な意見を被せてニヤニヤしています。


 「次はみちのあかり様の作品、新興宗教オカメ教だ。この作品は先程も言及したが、冒頭のインパクトあるセリフで、のめり込んでしまう作品だ。そして、全体的にはコメディタッチで描かれているが、新興宗教問題、マインドコントロール、宗教法人に対しての返金制度問題などに切り込み、問題提起をしていると思わせる深い作品なんだ」


 「なんか、会話にリアリティーがあるよね!」


 「友美ちゃんの言う通りだ。会話の中のさり気ない状況説明の手法、冒頭も含め、みちの様の作品は物語全体の命題や目標設定がはっきり表現されている。だから惹き込まれる。今回の作品も怪しい新興宗教から、脱会したい人が果たしてどうなるか? と言う物語の目的が見え隠れしている。高ポイントの作品も抱えていらっしゃる様に、万人受けする読みやすさがあるんだ」


 「確かに、惹き込まれるよね!」


 「ああ。友美ちゃんもしっかりと読み手が惹き込まれると言う事を研究する必要があるな。わからなければみちの様に聞くと良い」


 「うん! わかった!」


 私は、チクチクと駄目出しをされていると言う事実は棚に上げ、その後も熟読を始めました。


 続きます。



 




 


 



 


 


 



 


 


 


 

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