第34話 ●猫のたま 様 月詠の鏡と劔 大江戸月想奇譚を読んで色々比べてみました!

◎今回の読書会作品

 猫野たま 様

 月詠の鏡と劔 大江戸月想奇譚(ノベルアップ+)


◎今回の読書会参加者

・加納友美 

 動物と話しが出来る大学一年生。

 どんな状況や作品にも、なりきりスキル発動により対応可能。

・エリマキトカゲのエリマキッチ

 古き良き流行を愛する、博識のエリマキトカゲ。解説役。

・三毛猫のみけっち。

 人間(特に友美さん)嫌いで、めんどくさい地域猫。

 本編『心療内科の友美さん』では、全身に腫瘍が転移して友美さんの前で凄絶な最期を遂げた。

 死後の世界から参加。  

・シマリスのクパちゃん

 発言全てが、ツンデレなシマリス。



 ガチャ


 「友美!煮干しは持ってきたのかしら?」


 「あ、うん。はい、これ!」


 「この煮干しはどこ産?」


 「え?いや、わからないよ?」


 「北海道産しか、私食べないわよ?」


 「…………」


 私は読書会が開催される自室に入室しましたが、みけっちの相変わらずな発言に絶句しています。


 「友美ちゃん。早速始めようか?」


 テーブルの上に待機しているエリマキッチは、夜食として用意した解凍済みの冷凍コオロギを、パリパリモシャモシャと食べながら話しています。


 「あ、うん……あれ?これ私のタブレット?先週から見当たらなかったんだけど、どこにあったの?」


 「実は僕が借りていたんだ」


 「え?エリマキッチが?」

 (あなた県外の動物園にいるんだよね?どうやって持ち出したの?)


 「ああ。実は、今回の作品は電子書籍版も販売してるだろ?」


 「う、うん。そうだね」


 「だから、先週Amazon Kindle版を購入したんだ」


 「え?!」


 「因みに500円割引だ!」


 「…………」

 (ちょっと待って?その割引って、カクヨムで交換した、500円分のAmazonギフトじゃない?)

 ※実話です。


 「さあ、みんなはノベルアップ版、僕と友美ちゃんは電子書籍版を拝読しよう」


 「…………」


 私はセリフ棒読みスキル【棒姫】を緊急発動。


 「うん。わかった。電子書籍版だね。嬉しいね。ありがとね」


 「友美が電子書籍なんて、生意気ニャのよ!」


 「…………」

 (いや、勝手に買われたんだけど……)


 「まあまあ、みけっちさん。今回は勘弁してやってくれ。因みに今回の作品の作者は猫野たま様だな?」


 「そうよ!二匹の猫さんと一緒に暮らしている。その二匹は朝仕事に行きたくな〜いと言う話を聞いているそうニャのよ」


 「…………」


 「そして、今回の作品は江戸時代初期を舞台にした伝奇ファンタジーだな?」


 「楽しみだわ!」


 「と、言う事で、作品を紹介する前に、江戸時代を中心に猫の歴史を語らせてもらうが、いいかな?」


 「もちろんよ!友美もちゃんと聞きニャさいよ!」


 「あ、うん。わかった……」


 「べ、別にエリマキのトカゲさんの話が面白そうだなんて思ってなんかないんだからね!」


 シマリスのクパちゃんは、たったの一セリフで存在感を発揮。私の膝の上に乗り、エリマキッチの話に耳を傾けています。


 「まずは作者様のたまと言う名前だが、これは江戸時代からかなりメジャーな名前として、多くの飼い猫につけられた名前なんだ。その他トラ、ミケなどが多かったとされているんだ」


 「そうなんだね!」


 「私の名前は昔から続く由緒正しい名前なのね!友美が余計な【ッチ】をつけたから台無しだけどね」


 「…………」


 「その理由は諸説あるが、江戸時代の猫は日本が鎖国をしていた影響で、外国から持ち込まれて交配すると言う事がなかった為、日本古来から独自の進化を遂げた、尻尾が短い三毛猫と言う種が多く……いや、むしろ江戸時代は、ほとんどの猫が三毛猫だったと言う説があるんだ」


 「確かに鎖国の影響はあったかもね」


 「そして、以前にも話をしたが、平安時代に高貴な身分の方々が猫を飼い始めブームが起こった。日本文学史上最初に飼い猫の名前が記載されたのは、あの有名な枕草子だ。その猫の名前は「命婦の御許」。一条天皇が飼われている猫との記載があるんだ」


 「え?何それ?名前なの?」


 「ああ。もちろんだ。命婦と言うのは女性の位を表す言葉、つまりこの猫には階級が存在したんだ。余談ではあるが、この一条天皇の猫に対する溺愛には、清少納言も、若干引いていた……と解釈出来なくもない、記述もあり、清少納言は犬派だったのでは?と言う説もある。その根拠として、枕草子には犬の記載が15回に対して、猫の記載は5回しかないからだ」


 「紫式部の源氏物語には犬は2回しか記述がないけど、猫は19回も記述があるニョよ!」


 「…………」

 (え?!みけっち?あなた、なんでそんな事知ってるの?)


 「そして、江戸時代にも空前の猫ブームがあった。ネズミから食料を守ってくれる……つまり、猫さんが様々な縁起物として、もてはやされる様になったからだ。招き猫、船に猫を乗船させると海難事故に遭わないと言うお守り的な存在、歌川国芳と言う方が描いた猫をモチーフにした絵は、大変縁起が良いと噂され、爆発的に売れたと言う記述も存在しているんだ」


 「そうなんだ……」


 「つまり猫さんはネズミから食料を守ると言う大活躍をした事により、数多くネズミを捕獲した猫さんなんかは高値で取引をされ、猫が飼えない貧しい家は猫さんの絵を飾っていたそうなんだ」


 

 「友美!これからは私達の仲間を敬いニャさいよ!煮干しは最高級北海道産、水はミネラルウォーター、水道水なんかもってのほかよ!ニャハ!」


 「…………」

 (え?ウインク?…………猫のウインク始めて見たよ)


 三時間後。


 「友美!この作品は江戸時代を舞台に、ファンタジー要素を加えて、様々な事件を通して月の女の子を…………いけないわ。ネタバレはさけニャいと。友美!止めなさいよ!」


 「…………」

 (私、何も悪くないよね?)


 

 「べ、別に私は伝奇ファンタジー初めてよんだけど、とっても読みやすいだなんて思ってなんかないんだからね!」


 「…………」

 (クパちゃん……ほんとにブレなきツンデレキャラだね)


 「そうなんだ!今、シマリスさんが言っていたが、この作品はとても読みやすいんだ!」


 エリマキッチは突然、襟巻きを全開。


 「そうだね!」


 「江戸時代以前の伝奇ファンタジー作品や歴史作品と言うのは、世界観が現代劇と違い、語り手の言葉も古い言葉を用いる為に描写が複雑になる傾向があるんだが、この作品は、重厚な世界観でありながら、その個性的なキャラと言う人物達にスポットをあてて物語を描いているから、時代背景や風景描写もスッと頭に入ってくる」


 「確かにそうだね!」


 「読書会で以前紹介させて頂いた、平安ファンタジーの四葉のF様、そして幕末の橋本洋一様の作品を覚えているかい?」


 「うん!今でも続きずっと読んでるよ!楽しいよね!」


 「そして今回の作品も歴史上の人物を用いた架空の物語だが、橋本様の作品はそれが本当の史実であるかの様な表現をされていて素晴らしい作品だったが、四葉様と猫のたま様の作品は、キャラの個性がしっかり描かれていて、あくまで史実とは違うと言う前提は関係なく、それを生かして別の世界の物語として確立されている……すまん、うまく表現出来ないのだが、キャラ立てがしっかりとしている。だからこの二つの作品は思わず没頭してしまう……ノンフィクション歴史作品としての魅力も持ち合わせているんだ!」


 「猫好きは偉大ニャのね……感慨深いわ」


 みけっちは上機嫌で、煮干しをモグモグしながらウンウンとうなづいている感じで、感慨にふけっています。


 「べ、別に『気配がない気配』とか、表現が新鮮だ!なんて思ってなんかないんだからね!」


 「…………」


 クパちゃんは、殻付きの甘栗の殻を器用に前歯でガリガリと剥いて食べながら、ツンデレ発言。


 「そうなんだよ!今回の作中にはそう言った新鮮な表現が幾つも、語り手から発せられている。会話のシーンはコミカルな所もありクスッとしてしまう箇所もあるが、物語の鍵となる、月に関してや心理的な状況描写の表現は重厚……つまり、物語としてのメリハリもあるんだ」


 「私、もっと難しい作品かと思っていたけど、大衆向け娯楽作品みたいで、本当に読みやすかったよ!」


 「友美ちゃん、電子書籍版とノベルアップ版、全体的な流れは相違はないと言っていい。ノベルアップ版の方が若干だが、表現が柔らかくストレートな感じがする。そして電子書籍版の方は、ねじれ表現の修正や、主語述語修飾語の文章の整理、それぞれのエピソード内の文章構成の変更、わかりやすく言うと連載版が2章に組み込まれている最後の文章が、電子書籍版では3章の冒頭に組み込まれている……読み比べて思ったが、細かい部分表現の違いはかなりある。本当に大変だったと思う。どちらを読んでも作品としては楽しいので、後は縦書き、横書き、好みの問題だと思うぞ!友美ちゃんはどう思う?」


 「うん、私のイメージ的には、ノベルアップ版を整理整頓したのが、電子書籍版って感じかも。違いを楽しむのも新たな発見で、面白いと思うよ」


 「あとがきに加筆修正したって書いてあったじゃないの!友美は細かい事、グジグジ言うんじゃないわよ!たくさんの人に愛されてる作品だから、どっちを読んでもいいニョよ!」

 

 (え?私、聞かれたから答えただけなんだけど…………)


 「あれ?そう言えばクパちゃんは?」


 「ノベルアップ版を読んだ後、すぐに電子書籍版に夢中な様だぞ」


 エリマキッチの視線の先には、ツンデレ発言を忘れたクパちゃんが、器用に前足を使いタブレットの画面をスライドさせて夢中で読んでいました。


 その後、私達は朝まで読み比べをして、あれやこれやと楽しく騒いでいました。



作者 猫のたま 様

今回はありがとうございました!


今回の作品はこちらからどうぞ!

https://novelup.plus/story/875360007


 


 

 

 

 

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