第23話 ●キール様 ハミルトン亭の愉快な人々 ピオーネさん 年齢:820歳 独身 種族:天使族 職業:迷惑天使の場合を読んで、針を逆立てちゃいました。

◎今回の読書会作品

 キール 様

 ハミルトン亭の愉快な人々 ピオーネさん 年齢:820歳 独身 種族:天使族 職業:迷惑天使の場合

 (小説家になろう)


◎今回の読書会参加者

・加納友美 

 動物と話しが出来る大学一年生。

 どんな状況や作品にも、なりきりスキル発動により対応可能。

・ハリモグラのサッチャーさん

 人間とオセロ勝負が出来るほどの、動物界きっての天才。数々のクイズで友美さんを絶句に追い込んだ。解説役。

・イグアナのイグッチ

 ゆっくり過ぎるイグアナ。



 すでに読書会は始まっています。


 ハリモグラのサッチャーさんは、タッパーに入った、夜食用の冷凍アリをモグモグつまみながら話しています。

 そして今日は、真面目なサッチャーさんから、おふざけは無しよ?しっかりとレビューするわよ!との厳命を受けていました。


 「友美ちゃん、この作品はアラリア大陸と言う人類・魔族・天使などのあらゆる種族が暮らす世界にある、大都ウルハスが舞台の作品よ。そしてその大都ウルハスにあるハミルトン亭と言う小さな宿で、天使族のピオーネさんと地元では人類最強の剣士と噂されるレシウスさんの二人の絡みを中心に、バトルもありの、日常の一コマを描いた約一万文字の短編作品ね」


 「作者様のハミルトン亭短編シリーズの2作品目でもあるよね!」


 「そうね。まずは感想いいかしら?」


 「うん!」


 「まず、最初の方なんだけど語り手の世界観の説明描写、場面描写、ピオーネさんの描写、しっかりと行間を考えて使用しているからパッと見の凝縮感よりも、とても読みやすいの。」


 「そうだね!スッと頭に入ってくるよね!」


 「会話文と語り手のバランスと言うかメリハリも出来ていて、全体的にとても文法を遵守した綺麗な文体の作品ね。文法がしっかりした文体と言うのは、作品がよく練り込まれていると言う事なの。友美ちゃんみたいに、行き当たりばったりじゃ書けない作品だわ」


 「そ、そうだね……」


 「もちろん例外もあるけど、私何かで読んだのだけれど、一般的に短編は『出来事を書く』、長編は『人物を書く』とされてるのよ」


 「そうなんだ……」


 「ところで短編作品を書くには、色々とコツがあるけど、私が一番重要だと思うのは、当たり前だけど無駄をどれだけ省けるのかなのよ」


 「まあ、短編って言うくらいだからもちろんそうだよね」


 「友美ちゃん、あなたわかってないでしょ?」


 「え?」


 「仕方ないわね。あなたにもわかる様に以下の簡単な冒険物のタイムラインプロット形式で説明してあげるわ」 


 「うんお願い…………」

 (わかってないなんて一言も言ってないんだけどな……)


 ①友美ちゃんは、ご先祖様が書いたと言われる、赤いインクで書いた宝の地図を発見した。

 ②地図の場所に向かう途中、本屋でいかがわしい本を買った。

 ③宝の場所は森であったが、現在は3日間かけて木が切り倒されていて野原だった。

 ④そこで図書館に行き、その場所の昔の地図や写真を長椅子に座り調べた。

 ⑤ついでにいかがわしい本を借りた。

 ⑥そして、遂に該当地点を探しだしスコップで掘ってみた。土が硬い場所はツルハシを使った。

 ⑦遂に宝箱を掘り当てた。

 ⑧友美ちゃんは喜んで家に帰り、いかがわしい本で至福の昇天

 

 「このプロットで無駄な所はわかるかしら?」


 「…………」


 「まずは、赤いインク。血で書かれたなら、信憑性を伝える為に必要かも知れないけど、色なんてどうでもいいじゃない」


 「そ、そうだね……」


 「③の3日間かけてもいらないわね。宝の場所が現在どうなっているかが大事であり、過程はいらないわよね?」

 

 「…………」

 (あれ?②番は?)

 

 「④と⑥の図書館の長椅子、土が硬い所はツルハシ、もいらないわ。調べるんだから座るの当たり前だし、土が硬い……と言う表現に意味はないからいらないでしょ?」

 

 「…………」

 (えっと、⑤と⑧は?…………)


 「こう言う、出来事に関係ない細かい所を削除して、無駄を省くのよ。わかったかしら?」


 「あ、うん…………」

 (え?いかがわしい本で昇天ありきの物語なの?冒険じゃないの?)


 「そう言う視点から見たら、今回の作品は、ファンタジーの世界観や人物を1から描写しているけど、極力しっかりと無駄な表現を省いている……大変ご苦労されたんじゃないかしら?読みやすいのはそう言う所よ」


 「確かにファンタジー短編って難しい所あるよね?」


 「ええ。そうね。でもこの作品は、お笑いで言えば、序盤の描写で掴みはOK的な印象に残る作品だったから、後々のシーンも容易に頭に思い描く事が出来たわ」


 ガサッ!


 「あれ?テーブルの下でガサゴソ音が……なんだろ…………」

 (イグッチ…………)


 イグッチはすでに読書会に参加していて、テーブルの下でこの作品を読んでいました。


 「こ……の……さ……く……ひ……ん……に……は……か……わ……っ……た……は……な……」


 「あ〜はいはい。イグッチはこの作品にはネズミを食べてくれる変わった花、ベグザイルが登場するから、とても楽しいって言いたいんだよね?イグッチは野菜しか食べないから、羨ましかったんだよね?でも、イグッチはゆっくり過ぎて、逆にベグザイルに食べられちゃうから、発言は控えてテーブルの上でいいから読書を楽しんでくれてればいいからね」


 「今、ゆっくりイグアナさんが言ってたけど、この作品には個性的なアイテム的な物が登場するわ。土偶、しゃげ〜しゃげ〜って鳴く肉食の花、夜になると歩き出す花、相棒の魔剣ミラージュ等ね。さり気ないのだけどクスッとさせられるわ。こういったさり気ない描写で、読後感も微笑ましい、二人の関係性を描いた、まとまりのある作品だわ」


 「ア……リ……食……い……ヒ……」


 「あ〜ハイハイ。イグッチはアリクイヒドラの胴体がバラバラ……」

 (あっ!しまった!ハリモグラとアリクイって食べ物同じだし仲間!?)


 「大丈夫よ友美ちゃん。アリを主食としてるけど厳密には、アリクイとハリモグラは違う仲間よ」


 「そうだよね!サッチャーさんは動物界で随一頭が良いって言われてるハリモグラだもんね!」


 「ところで天使と言えば有名な問題があるの知ってるかしら?」


 「え?」


 何故かサッチャーさんは背中の針を逆立てています。


 私は頭脳明晰スキル【友美が恋に落ちたので証明してみた】を緊急発動。


 「三人の女性がいるわ。この三人は一人が天使でウソはつかないわ。一人は悪魔でウソしかつかないの。そしてもう一人は人間でウソと本当の両方を言うわ。そして三人はこう言ってるわ。

一人目、私は天使ではありません。

二人目、私は人間ではありません。

三人目、私は悪魔ではありません。

天使は誰だかわかるかしら?制限時間は10秒ね」


 「え?えっと……天使はホントの事言うから……一人目は違うよね?わかった!三人目!」


 「ぶっぶー。相変わらず友美ちゃんは能天気ね。セリフに釣られて三人目を天使と仮定したでしょ?甘いわ」


 「…………」

 (やっぱり……さっきのアリクイヒドラの事怒ってる……)


 「順番に考えなさい。まず一人目、天使はウソつかないから違う、悪魔だったらウソしか付かないから違う。よって人間ね」


 「…………」


 「二人目、悪魔はウソしかつかないから、人間ではありませんは本当の事を言ってる事になるじゃない。よって、天使は二人目よ。友美ちゃんも、たまにはアリでも食べて頭を鍛えたらどうかしら?」


 「…………」

 (イグッチのせいでとんだとばっちりだよ……)


 私はサッチャーさんの嫌味に絶句しながらも、その後イグッチには一応夜食に用意したサニーレタスを食べさせながら、朝までこの作品について語り明かしていました。


 作者キール様

 今回はありがとうございました! 

 

 今回の作品はこちらからどうぞ!

 https://ncode.syosetu.com/n6667ig/



 


 



 

 

 

 



 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る