第19話 ●朽縄 咲良 様 雷王、大いに懊悩す~ラスボス魔王、使命を果たして元の世界に戻りたくない異世界転移チート勇者によって全力で延命させられるの巻~を読んで改名しちゃいました。

◎今回の読書会作品

 朽縄 咲良 様

 雷王、大いに懊悩す~ラスボス魔王、使命を果たして元の世界に戻りたくない異世界転移チート勇者によって全力で延命させられるの巻~ (小説家になろう)


◎今回の読書会参加者

・加納友美 

 動物と話しが出来る大学一年生。

 どんな状況や作品にも、なりきりスキル発動により対応可能。

・エリマキトカゲのエリマキッチ。

 古き流行を愛するエリマキトカゲ。解説役。

・タヌキのポコッチ。

 野生のタヌキ。次々と死んでいってしまった赤ちゃんタヌキの最後の一匹を、人間の男の子に託した、ちょっと天然タヌキ。



 ガチャ


 「え?またポコッチ?!」


 私は、読書会が開催される自室へ入室しましたが、以下の理由により、読書会への参加を極力遠慮してもらっている、タヌキのポコッチが参加している事に驚愕・困惑しています。


 ●中学生読者の保護者のお母さんから、ポコッチと言うネーミングは思春期の読者の女の子が、男性のシンボルを想像するから、教育上良くないと複数回に渡り、指摘とクレームを受けた。

 ●そしてその指摘を受け、文学フリマ同人書籍版では、本気で【タヌッチ】と改名しようと考えた。

 ●タイ人の読者の方に『ポコッチと言う名前は何故危ないの?』と聞かれて、冷静さを失ってしまい『タヌキと言うのは昔から日本では男性のシンボルを司っているから』と言うとんでもない嘘を付いてしまった挙げ句、後日タイ人の方とその話題が出た際に、タンタンタヌキの◯◯◯◯は〜♪と言う歌が以前日本ではレコード大賞を受賞、日本人ならみんな知ってるから、今度職場で歌ってごらん!と言うイタズラでは済まされない提案をしてしまった。

 ●以前、ポコッチの語尾に『ン』を付けてしまうと言う、重大な規約違反になりかねない致命的な誤字を投稿直前で発見、事なきを得た事があった。

 ●朽縄様がある小説投稿サイトで、マジカルポコッチ(仮称)と言う作品と熾烈なランキング争いをしていたとツイートして、プチバズった事を思い出してしまう為。


 ポコッチはベッドの上で、申し訳なさそうな上目遣いで伏せています。


 「友美ちゃん、本当にごめんなさい。私も参加するのは遠慮しようと思ったんだけど、以前読書会で紹介させて頂いた朽縄様の作品『10u』がホラー・ミステリー小説大賞奨励賞を受賞したから、お祝いするべきだってエリマキのトカゲさんに言われて…………」


 「…………」


 その言葉を聞き、エリマキッチは襟巻きを半開きにして反応し発言しています。


 「その通りだ。朽縄様に縁のあるポコッチさんから、ぜひともお祝いの言葉をかけるべきだと思ってな」


 「…………」

 (縁?マジカルポコッチって言う理由以外なくない?)


 「あ、おめでとうございます。お祝いと言ってはなんですが、私があらすじを紹介させて頂いてもいいかしら?」


 「あ、うん。いいよ。ポコチ……じゃなかった、ポコッチお願い」


 「今回の作品は、伝説の四勇士と呼ばれる勇者の三人を、圧倒的な力で倒した魔王であるギャレマスさんが、残りの一人の勇士、シュータさんに敗北。死を覚悟したけれど、シュータさんから俺と手を組もうと驚愕の提案を持ちかけられる……と言う掛け合いがとても楽しい、三人称で書かれたギャグファンタジー作品よ」


 「魔王さんが言いなりになってるのが、すごく楽しいよね!」


 「ああ、そうだな!魔王と言うのは昔から悪の象徴であり、その組織の長として様々な作品に登場して……お、そうだ!この作品を詳しくレビューする前に、魔王と言うキャラの文学における歴史を語らせてくれないか?」 


 「あ、うん……いいよ」


 エリマキッチは、夜食として用意した冷凍コオロギをパクっと咥えて語り始めました。


 「まず、魔王と言うのは元々は仏教用語であるとされるんだ。そして様々な宗教において、魔王と言う概念が名前を変えて存在するんだ。例えばユダヤ教ではサタン、キリスト教ではルシファー、イスラム教ではイブリースなどだ」


 「うん」


 「そして、僕も今回かなり調べたんだが、魔王と言うキャラが始めて創作文学で登場した作品を特定する事が出来なかった」


 「え?そうなの?」


 「だが、ファンタジー作品において魔王と言うキャラクターが登場する始祖ではないか?と言われる作品は存在するんだ。それは1954年頃から書かれた『指輪物語』だ。ロードオブザリングと言った方が日本では馴染み深いかな?」


 「あ!知ってるよ!」


 「この作品ではWitch-kingと言う原文が魔王と翻訳されているんだ。しかし、それよりかなり以前には15世紀に書かれたと言われる中国の小説『西遊記』の中に牛魔王、鵬魔王、蛟魔王と表記のあるキャラが登場、更に『水滸伝』にも魔王と敬称が付くキャラが登場するんだ。勧善懲悪の物語中の悪の親玉と言う意味合いで、古い文学の歴史でも存在する重要なキャラクターなんだ」


 「そ、そうなんだね……」


 「しかし、悪ではない魔王も存在する。ハクション大魔王と言うアニメ作品を知っているだろ?誰もが知っている悪の象徴と言う存在を逆手に取り、魔王が身近な日常の中で、様々な騒動を巻き起こすコミカルな作品として、現在でも認知されている。最近のアニメでも、働く魔王様と言う作品を初め、可愛らしい女の子が魔王であったりとそのバリエーションは増えていて、様々な創作作品にとって欠かせないキャラクターでもあるんだ」


 「確かにそうだね……」


 「そして今回の作品は、主に魔王サイドを中心に描写されている作品で、威厳がある中にも娘を可愛がる、ツッコミキャラとしての立ち位置、どこか庶民的なキャラとして魔王ギャレマスさんの日常なども含めて、とてもコミカルに書かれているんだ」


 「魔王ギャレマスさんの不遇さが、逆に愛されキャラの様に感じます。私、『10u』も読みましたが、作風が違い過ぎる事に驚きました……」


 「マジカルポコッチさんの言う通りだ。作者の朽縄様は様々な賞において複数の作品を最終選考にまで押し上げている。中でも特筆すべき点として、歴史時代劇、ファンタジー、現代恋愛など、ジャンルの別け隔てなく結果を残している。詩、エッセイ、ハイファンタジーなども作品を残しており、二刀流どころか、オールラウンドな作品を一定の高いレベルで執筆されている素晴らしい作家様なんだ!その多才ぶりには、驚かされるばかりなんだ」


 「そうだね!確かにそれは凄いよね」


 「ああ。そしてこの作品にも、なろう小説と言われるテンプレ要素から逸脱したいと言う、朽縄様の挑戦や決意の様な物を感じるんだ」


 「確かに、魔王とか魔法とかチート要素とかもあるけど、先が全く読めないよね?」


 「友美ちゃん。それは私も感じました。日常ドラマ的な要素もあり、火山噴火などの出来事で事件要素もあったり、先が読めないと言う意味ではミステリー的な展開要素も作品に組み込んでいて、テンプレ要素はあくまで設定と言う事に留めている。ギャグ作品と言う枠を超えているわよね」


 「そうだね!あんまりネタバレは出来ないけど、魔王ギャレマスさんの運命……全然最初と想像出来ない展開になってるよね!」


 「ああ。文章的にも現代若者の口語調のセリフや表現、会話と語り手の行間空けなどネット小説としての視覚印象も意識し、読み手にも配慮している。更に僕が注目したのはセリフへのこだわりだ」


 「え?どう言う事?」


 「細い点は本当に多数あるが、会話内の……と言った三点リーダーや――の使い方、“勇者シュータ”と言った様な引用符の使い方、『ぁ』や『ぉ』と言った拗音と呼ばれる、小さいひらがなやカタカナの使い方、「が……が、は……がぁ……ッ!」などの叫び声や擬声語を一つ取っても様々な表現が存在して、リアリティやキャラの感情を示すのに、考えて執筆されている様子があるんだ。エピソード4ではくしゃみの表現のバリエーションが豊富だ。以下に示してある」


「……ッぶぇっぐじっ!」

「ふぇ、ヴェッグジョンッ! ヴェブジッ!」

「ふぇ……っくちゅっ!」

「えくちゅっ!」

「うぇっくちゅんっ!」

「ふえ……ふぇっくちぃっ!」


 「こう言った擬声語の細い表現の仕方があると、語り手の補足がなくとも、あ〜ここは相当寒いんだなと思い、情景が目に浮かぶだろ?ただのハクション!連発とは感じ方も違うと思わないか?しかもきちんとキャラのイメージにそって表現してるから、誰だ?と混乱する事もない。朽縄様の細い表現力、会話表現と言う手法へのこだわり……勉強にもなる作品だと思う」


 「そうだね!この作品たくさんの人に評価されてるよね!」


 「普段マジカルポコッチとか、レスバトル、創作語り、下ネタ、怒り、喜びなど、なんでも来い!のツイートをしているのは、こう言った多彩な表現力を持っているからに他ならないと思う」


 「…………」

 (えっと、それはあんまり関係なくない?)


 「私、これから名前をマジカルポコッチに改名していいかしら?それなら危なくないでしょ?」


 「いや、それは元々はマジカルチン……あ!」

 (危なかった……)


 「おい、おい。友美ちゃん。君は曲がりなりにもこの作品のヒロインだ。利用規約に引っかかるワードは勘弁してくれよ。読書会も終了してしまうからな」


 「…………」


 その後私達は、ノリノリのポコッチと襟巻きを全開に広げ、ガニ股で歩くエリマキッチと一緒に朝までこの作品を拝読していました。



 作者 朽縄 咲良 様

 今回はありがとうございました。


 今回の作品はこちらからどうぞ! https://ncode.syosetu.com/n7870gw/





 




 


 


 








 



 



 

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