第18話 ●有木 珠乃 様 猫憑き令嬢と忠犬騎士団長様~ヘタレで不憫な団長様は猫がお好き~を読んで猫の文学を調べちゃいました。
◎今回の読書会作品
有木珠乃 様
猫憑き令嬢と忠犬騎士団長様~ヘタレで不憫な団長様は猫がお好き~ (カクヨム)
◎今回の読書会参加者
・加納友美
動物と話しが出来る大学一年生。
どんな状況や作品にも、なりきりスキル発動により対応可能。
・エリマキトカゲのエリマキッチ。
文学フリマ版にのみ登場する、古き流行を愛するエリマキトカゲ。解説役。
・イグアナのイグッチ
ゆっくり過ぎるイグアナ。
・シマリスのクパちゃん
全てがツンデレなシマリス。
「友美ちゃん。今回の作品は先祖代々に渡り、猫憑きとして生まれてくるが故に、裏の仕事を請け負う公爵家の女性の恋愛と若干ミステリー要素がある、ファンタジー世界を舞台にした物語だ」
昆虫を主食とするエリマキッチは、夜食として用意したイナゴの佃煮をモシャモシャ食べながら語っています。
「こ……ん…………や……く……は…………き…………ざ……ま………ぁ……の……よ……」
「あ〜ハイハイ。イグッチはこの作品、婚約破棄とざまぁ要素もある作品って言おうとしたんだよね?イグッチの解説じゃゆっくり過ぎて、それこそ婚約破棄されちゃうから、余計な発言は極力控えてね。あと、何度も言ってるけど小さい【ぁ】は前後どちらかの文字とくっつけてね」
植物しか食べないグリーンイグアナのイグッチは夜食のキャベツをパリパリと食べながら、いつものゆっくり発言。
(イグアナとエリマキトカゲって、見た目同じなのに食べる物真逆だよね)
「べ、別に有木様をありき様と間違えて読んでなんかないんだからね!」
「…………」
(クパちゃん……間違えたんだよね?今日の作品にツンデレは出てこないから、素直に発言していいんだよ?)
シマリスのクパちゃんは、口の周りを赤く染めながら夜食のイチゴをムシャ食いしています。
「まず、この作品の感想を話し合う前に猫と文学の歴史について語らせてくれないか?」
「う、うん。いいよ。エリマキッチ」
気付くとイグッチとクパちゃんはエリマキッチの正面に陣取り、興味深そうに耳を傾けています。
「現在小説投稿サイトの作品で、猫が登場する作品は動物の中で圧倒的に多いんだ。犬の3倍くらい存在すると言われている」
「そうだね。ペンネームが猫さん関係の方も多いよね」
「ああ、そうなんだ。しかし犬は縄文時代から飼われていたと言う歴史的物証はたくさん存在するが、猫に関してははっきりと存在していないんだ」
「え?そうなの?」
「ああ。あくまで一つの説だが、ネズミ駆除の為に弥生時代後期からイエネコと言うのは存在したのではないかと言われている」
「うん」
「しかし、文学的視点から考察すると、有名な文献の日本書紀や古事記には犬やその他の動物は登場するが、猫は記述がないんだ。歴史上文学で始めて猫が登場するのは西暦705年に書かれた日本霊異記と言う作品だ。そこには、登場人物が死後に猫に転生したと言う記述があるのみなんだ。奈良時代の前半になる」
「そうなんだ……」
「だが、平安時代に入るとたくさんの猫が経典などの書物をネズミから守る目的で中国から輸入され、貴族生活を中心にその存在が記述され始める。源氏物語、枕草子などにも記述があるんだ。しかし猫は江戸時代まで高級な愛玩動物とされていて、当時は馬の5倍の値段、最初の飼育記録は平安時代後期の宇多天皇、戦国の豊臣秀吉など限られた高貴な身分の方々が飼育されていたんだ」
「うん」
「そして明治以降の文学界においては、夏目漱石を始め様々な作品に猫は中心キャラとして登場、その数を爆発的に伸ばしていった。因みに猫好きを公言している作家さんは多い。三島由紀夫さん、向田邦子さん、中島らもさん、挙げればきりがない」
「そうなんだ……」
「そして今回の作品も猫憑きと言う形で、物語において主人公ルフィナさんの運命に重要な存在としてたくさんの猫が登場しているんだ」
「べ、別に読み易いだなんて思ってなんかないんだからね!」
「…………」
「今、シマリスさんが話していたが、この作品の一番のアピールポイントは恋愛、サスペンス、調査ミステリー、ほのぼの、婚約破棄、ざまぁなどたくさんの要素がある作品にも関わらず、柔らかい文体で統一されていて、とても読み易いんだ」
「確かにそうだね!有木様の作品は以前も読んだけど、安定感が抜群だよね!」
「ああ。そうなんだ!そしてこの作品のクライマックスは仮面舞踏会に潜入調査をすると言うシーンだが、それまでは比較的スローテンポで話が進むんだ。例えば衣装を着るエピソードで一話費やしたり、主人公ルフィナさんの一人称視点だけでなく、良いタイミングで別視点でのエピソードが挿入されている。ルフィナさんがどの様な思考過程を踏んで好意を持つか……こう言った恋愛要素において、重要な心理描写が一定のリズムでコミカルに描かれているのも、この作品の特徴なんだ。」
「あ……り……き……さ……ま……の……さ…………く……ひ……ん……は…………」
「あ〜ハイハイ。イグッチは有木様の作品はメルヘンチックな世界観の破綻がないって言いたいんだよね?それはこれから、クパちゃんが解説してくれるから、ゆっくり発言で人のセリフ取るのはやめてね」
「そうよ!べ、別に有木様の作品は、様々な要素が絡んでも、作品自体の世界観を壊す事がない文体だから読後感が良いだなんて思って……なんか、ほんとにないんだからね!」
「…………」
(思ってるんだよね?苦しいならわざわざツンデレ的に発言しなきゃいいのに…………)
「そして、この作品にはあらすじにも記載があるがざまぁ要素がある。僕はざまぁ要素がある作品で、読後感が悪い作品を読んだ事があって苦手だが、この作品は、極端に表現や描写が変わったり、世界観の崩れがなく安定しているから、ざまぁ要素と言うか末路的なシーンとして柔らかく表現されているから読後感が悪いと言う事がないんだ」
「と……て……も……ほっ……こ…………り……す……」
「あ〜ハイハイ。イグッチは可愛らしい猫さんや二人の恋愛描写で、とてもほっこり出来る作品って言いたいんだよね?今はざまぁ要素の話をしてるから、突然ゆっくり発言で別の話題を割り込むのはやめてね」
「確かに色々な要素があるが、イグアナさんが言うように、そういった色々な楽しみがある作品だ。しかし、僕はやはりメインとなる恋愛物語として楽しむのが良いと思う。安心して読めて、かつ物語として先の展開をドキドキしながら読んでいける、魅力がいっぱいの作品だからな」
「うん!」
「とにかく、作品として安定していると言うのは、それだけで評価に値する大きな武器だと思う。この作者様の作品だから、別作品をぜひ読もうと言うのが、有木様の特徴なんじゃないかな?なんか済まないな。偉そうに語ってしまったが、本心なんだ許してくれ……僕みたいな、ブームが終わって忘れられたエリマキトカゲは、猫さんの可愛さには足元にも及ばない……モフモフ感もないからな……」
「そ、そんな事ないよ!エリマキッチ!元気出してよ!」
「じゃあ聞くが、有木様が好きな物はなんだい?」
「え?えっと、タロットカードとか高校野球とかきゅうりの漬物とかホタテとか漫画のBLEACHとかタケノコの味噌汁とかミニトマトとか……あ!天空のエスカフローネの竜!ほら!エリマキッチと同じ爬虫類じゃん……」
「なるほど。じゃあ僕も、いつかまた竜の様に大きなブームを巻き起こすとしよう!」
「そうだよ!頑張って!エリマキッチ!」
(正しくは竜の形態のロボなんだけど……まあいいか)
私は、なんとかエリマキッチをなだめる事に成功しました。そして朝までもう一度皆と一緒に、この作品を読み返していました。
作者 有木 珠乃 様
今回はありがとうございました!
今回の作品はこちらからどうぞ!
https://kakuyomu.jp/works/16817330647550254588
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