ものすごくいいことを言ってるわ!
その中でひときわ深い色の宝石に目が止まった。
「気になったものは手に取ってどうぞ。ケースもあけましょうか?」
女性の宝石商に促され、ケースのふたをあけてもらう。
「それは
白いクッションの上に乗ったラズライトは、絵画に描かれた海の底へ潜っていくような、見事な青緑だ。横から、斜めからのぞきこんでみる。たしかに青が強く見える方向と、緑が強く見える方向がある。真横から見ると下のほうに黄色が見えた。
「すごい。不思議ね。とても綺麗」
「ありがとうございます。ふだん
男性がにこやかに説明してくれる。たしかに家にあるジュエリーと比べたら、見下しているとかではなく事実として、大きさも価格も比べものにならないくらい控えめだ。けれど小さくても、綺麗だ。こういう引きこまれるような色の宝石は、今まで見たことがない。
だけれど。
「何か迷ってるの?」
険しい顔をしていたからか、ヴィンセントにのぞきこまれた。わたくしは言いづらく、目をそらして手元のラズライトに視線を落とす。
「その……ジュエリーにしたいのだけど、青は似合わないのよ。髪と目が銅のような色だから」
わたくしの髪と目はオレンジピンクなので、青が似合わないのだ。ドレスも青を避けて、生成や赤を選んでいる。欲を言えば合わせる色に悩まない金髪に生まれたかったが、こればかりは仕方ない。
「もちろん、似合う似合わないって気にする心がけも素晴らしいけど、ひかれているものが似合わないから諦めるっていうのはもったいないんじゃないかな。ひかれているものなら、自分の好きっていう気持ちに従えばいいと思うよ。誰かのためじゃなく、自分のために」
仰いだヴィンセントはいつもと変わらず微笑んでいたが、わたくしは息をのんだ。『君は何色でも似合うよ』とか、ああはいはいという薄っぺらいお世辞を言われると思っていたのに。
ものすごくいいことを言ってるわ!
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