第2話「誘いたいなぁ。」

  私は大沢美沙。白鷺学園高等部2年。自分で言うのもなんだけど、運動と勉強は得意だし、自意識過剰だけど、皆から人気はあると思っている。ただ1人を除いては。 その人は、今日も私に話しかけてこなかった。私に興味が無いのかなぁ。いつも視線は、本に向けられている。たまに視線が合うけど、すぐにそっぽを向く。皆、綺麗って褒めてくれて嬉しいけど、彼からは、綺麗って言われた事がない。そもそも、挨拶すらできてない。いつか、お話できたらなぁ。


  美沙は、見つめていると、いつも一緒に居る仲のいい2人がやって来る。彼女らは、おはようとは言わずに、手を3回振る。彼女達のルーティンだ。以前、おはようと言うと、クラスの殆どが一斉におはようと言い出し、教室が騒がしくなり先生に叱られた事がある。それ以来、彼女達は、おはようの代わりに、手を3回振るようになった。


「今日も、アイツ見てんのか?」

「うん。少し気になるって言うか。」

「もしかして、好きなの?」

「いやいや、無い無い。絶対無い。お前も知ってるだろ?アイツ、中学の時、何でか知らないけど、突然同級生を殴った事。それに、常に、人を見下したような目をしてるしさ、なんか感じ悪いんだよね。自分は他人と違いますオーラが凄いんだよね。顔も声もブサイクだし、アイツのいい所なんて皆無だぜ。」

「美菜子ったら酷い。まぁ、ホントなんだけど。」

「そうかなぁ。でも、話してみたら案外いい人かもよ?」

「ほんと、美沙は、お人好しなんだから。まぁ、それが美沙のいい所なんだけど。お人好しも程々にな。」


 友人は、そう言ってるけど、私はそう思わない。確かに、暴力は良くない。でも、それにも何か理由があるはず。理由を知らずにただ嫌うのは、良くないと思う。それに私は、彼の良さを知っている。私しか知らない彼の良さを。


  朝のホームルームが始まり、遠足の内容が書かれた。


「来週遠足があるんだが、3人1組になって、回ってくれ。」


  3人1組か。誘ってみようかなぁ。でも、急に話しかけても、迷惑かもしれない。それに、誰と行くのか決めてるかもしれない。どうしよう。


「ねぇ大沢。一緒に回ろ。」


  仲のいい2人が誘ってきた。大沢は、すぐに答える。


「いいよ。」


  まただ。私は、彼と関わるチャンスを逃した。これで何度目だろう?私の意気地なし。でも、悲観ばかりしてもダメよ。遠足は、まだ始まってない。始まる前に、誘わなくっちゃ。


第2話「誘いたいなぁ。」~完~


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