第3話 牧田

電車を降りて改札口を出た。

さっきの感覚は一体何だったのか?恐怖で思わず声をあげてしまいそうだった。電車を降りた後は特に何の変哲もない。他の車両にも乗客がいたようだし。とりあえずこれ以上変なことはないだろう。僕はバスに乗って会社へと向かう。

そういえばゲームにもバスがあったな。バスを運転して移動するのだ。ゲームではプレイヤーは目的地に移動し続けなければいけない。立ち止まっているとだんだんエリアが狭くなって死亡してしまうのだ。移動中に狙われることもある。銃で一斉に撃たれると車はタイヤがパンクして故障、火を上げて炎上する。敵に見つからないように移動するのがゲームで生き残るコツなのだ。


会社に着くと、いつものように朝礼に出て同僚に挨拶し仕事に取り掛かる。今日は同僚の牧田はまだ来てないようだ。いつも早めに職場に来るのに、今日は休みだろうか。牧田かなは僕より少し年下で、僕より前からこの職場にいる。明るいムードメーカー的存在で話しやすい奴だ。


会社は1課から8課まである。僕は3課に所属している。特に上下関係があるわけではないが、1課はやはり少しエリート気質がある部署だ。彼らの表情は自信に満ち、彼らには会社を支えていくという気概が感じられる。だがその分会社の犬という印象が強く、上の言うことに逆らわない彼らはみんなに疎まれがちな存在である。僕は1課に入ったらすぐに辞職届を提出してしまうことだろう。



家に帰ると昨日の続きでゲームを始めた。参加者をマッチングし、サバイバルが始まる。空からパラシュート落下し、落ちた先の建物内で武器を手に取って戦うのだ。僕はライフルのAK-47を手に取り、屋上に身を潜めた。下の広場で女の子が戦っている。眺めているとこちらをチラッと見返した。


君、レンくんだよね。


脳内で声がしたような気がした。この声は、聞き覚えがある。牧田の声。彼女もこのゲームに参戦しているのだ。そういえばたまにゲームの話をしていたな。


お願い、今日のゲームで絶対勝ち残って。

君に勝ってもらわないと困るんだ。


そう言って彼女は手に持ったマシンガンを武器に敵を1人軽々と倒し、バイクに乗ってこの場を去っていった。どうして僕が勝たなければいけないのか、思い当たる節は何もなかった。

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