第4話 黒服

とにかくここにいてはいけない。もう少しでエリアが狭くなってくる。こうやって残りの人間を追い詰めて強制的に戦わせるのである。エリア外に出れば、それだけで体力が削られて死んでしまう。


移動するならば乗り物が必要だ。僕は道路に出て乗り物を探した。大きなSUVが街の入り口に止まっていた。屋根にマシンガンが付いている。後部座席に移動すれば武器にもなる。これにしよう。


エリアが狭くなる前に移動を始めた。この辺りにはもう人はいなさそうだな。マップを見た。とりあえず中央の方に行ってみよう。


誰もいない道路をのんびりと走行する。しばらく運転すると、見えてきた。大きな街だ。建物の中でドンパチと火花が散っている。既に戦闘が始まっているようだ。


ゲームの目的は生き残ること。それまでに自分に有利なアイテムを手に入れておく。ビルの中には貴重なアイテムが落ちているけど、無駄な戦いは避けたほうがいい。僕は車を旋回し、街が一望できる丘の方へ車を走らせた。


丘の上で車から降りた。ここからなら街の様子がよく見える。僕は狙撃銃の双眼鏡を使ってビルの様子を見た。ビルの中を素早く動く影が見える。あれは牧田かなのようだ。銃を持っているようには見えない。彼女はトンファーのようなものを使って敵を倒している。近接戦が得意のようだ。あれならばビルの中の方が有利に敵を倒すことが出来るだろう。このゲームでは敵を倒すとポイントがもらえる。ポイントを貯めると強力な武器やアイテムと交換が出来るのだ。より強い敵ほど貰えるポイントが多い。牧田かなはおそらくポイントゲッターだろう。より多くの敵を倒してポイントを手に入れようとしている。かなり熟練した選手のようだ。何か理由でもあるのだろうか。


その時、屋上の方から異様な気配を感じた。双眼鏡を向けると鬼の面をつけた男がちょうどこちらを見ている。おそらくこちらに気づいているだろう。あれはかなり手強そうな感じがする。男は屋上からビルの中に入っていった。牧田かなが危ない。知らせなくては。


僕は狙撃銃を手に取り、窓ガラスめがけて銃を放った。窓ガラスが割れて銃弾が壁にめり込んだ。外から狙われていると知れば彼女は身を隠そうとするだろう。これで難を逃れてくれれば良いが。すると背後から物音がした。狙撃したことでこちらの居場所がバレたのだろう。僕はSUVに乗り込みマシンガンを構えると、背後の草むらの方へ勢いよくぶっ放した。ドドドドドッ、数十秒間の銃撃を放つ。弾は草むらや木に穴を開けて辺りをざわつかせた。これで敵がひるんだ隙にここを離れる。車のキーを取りエンジンをかけると、丘を降りて大きな川の方に向かった。敵の銃撃音が背後に響いている。車に何発か当たっているようだ。このままでは蜂の巣にされてしまう。僕は車を降りるとこっそりと川に潜った。泳ぎは得意な方だ。このまま潜水で向こう岸まで渡ろう。


向こう岸にたどり着いた。置き去りにした車から煙が上がっている。途中で何回か振り返ったが、敵が追ってきてるようには見えなかった。しかし念の為だ。早く場所を移動しよう。僕は陸に上がらずにそのまま潜水で下流の方へ泳いで行った。暫く泳いでいると、背後で大きな爆発音がした。岸から炎が上がっている。どうやら敵がロケットランチャーを発射したらしい。あんな武器まで持っているとは相当の熟練者たちだな。岸には上がらなくて正解だったようだ。それにしても、彼らは一体何者なんだろうか。



しばらく泳いだ後に森の中に抜け出した。ここならば敵に発見されにくい。森の中を丘の方に向けて移動した。小高い丘の上に小屋を発見した。ここで少し休憩しよう。

小屋の中に入るとドローンを発見した。これは偵察用のドローンだな。マップと連動しているようだ。ドローンの位置はマップで確認ができる。少し彼らの情報が知りたいところだ。

ドローンを市街の方に向けて飛ばした。ここからは5kmほど離れたところだ。市街地の様子がドローンのカメラに写し出された。市街地の市庁舎の下に人が集まっている。彼らは全身に黒い服を着ている。あれが彼らの服装なのだろう。本来このゲームではチームを組むことは禁止のはずだが、彼らは協力しているようだ。人数は1,2,3…5人いる。何だあれは、大きな戦車まで用意している。戦争でもおっ始めようと言うのか!デタラメな戦力だ。奴らの中の一人に鬼の面を被ったものがいた。彼が何か指示を出しているに違いない。彼の指示により仲間たちが散開して街を出ていった。おそらく残党を制圧しに出かけたのだろう。



マップを確認すると、エリアの円がさらに小さくなってきている。どうやら今回のエリア収束地点はあの市街地から北の方角にあるショッピングモールになりそうだ。

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