第20話 9月15日(2)
その晩、俺はまた早々に眠りについた。井原が無事でよかった。それにしても誰があんなことをしたんだ。前田先生は限りなく犯人に近い。よく考えれば、担任だから井原の家も知っている。夜、井原の家に行くことも可能だ。
下校の見守りだけじゃ不安だな。それにしても、今日は色々あった。全身が疲れていて、気がつけば眠りに落ちていた。
そして夢は突然やって来た。
何の前触れもなく、俺はただ唐突に手を伸ばし、目の前の女の首を絞めていた。首の部分がクローズアップされ、女の顔は見えない。目の前にある白い首がやけにリアルだ。俺の手は力を緩めることなく、目の前にある首をぎゅうぎゅうと絞め続けている。苦しそうなうめき声と、女が着ている朱色の着物がはっきりと目に焼き付いた。
おい、何やってるんだ。止めろよ、止めないか。夢の中で俺は俺に声をかけるが、相変わらず届かない。
そして唐突に夢は終わり、俺は目覚めた。
時計を見ると深夜2時だった。
あれは俺なのか。俺と更姫なのか? 俺が姫を殺したのか? 目覚めると寝汗をびっしょりとかいていた。とりあえずパジャマを着替えたが、それからは眠れなかった。また夢の中で誰かを殺したら。いや、もう殺しているのか。犯人が俺だなんて何てオチだよ。俺は朝まで眠ることができなった。
『お前が見た世界が全てではない』
前田先生の言葉が脳裏に浮かんだ。こういう意味だったのか。俺は今まで夢の中に出て来た人を散々疑ってきた。だが真実は、俺が更姫を殺した犯人だった。自分が真犯人、なんてことだ。俺は朝から一気に奈落の底に突き落とされた気分になった。
これから一体どうすればいいんだ。
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