第138話 記録魔石鑑賞会1
聖世紀1211年夏 王都 ガナル邸客間
ベルクはしっかりと記録魔石を見ながらも顔を顰めている。
ギルメサイアは初めてみる自分の知らない風景に目を丸くして驚いている。
イベルマがギルメサイアに確認する。
「・・・あなたのお城の地下はこんな風になっていたのね。あなた知っていたの?」
ギルメサイアも正直にイベルマに答える。
「いいえ、私は王宮の地下にこんな場所があるなんて全く知りませんでしたわ。」
しばらくすると前方の暗闇からからドレスを着た美しい少女が映る。
ラーシャがギルメサイアに聞く。
「あれがあなたの腹違いの妹さんね。」
ギルメサイアも答える。
「はい、確かに私の義妹のシルビアです。」
そしてシルビアがくるっと反転して、もと来た方向へ引き返していくのが見えた。
そして突き当たりの階段をそのままシルビアが登っていくのが見える。
その隙にアベル達がラムの監禁されている牢の前に到着して
クリシアが現れてラムに話しかけているのが見えた。
アベルが手を伸ばしてラムを龍の宝物庫に回収した。
アベルは続けてクリシアも回収してアベル達はすぐに姿を消した。
アベルがラムを回収してその姿を不可視にしたその直後に
凄い勢いで階段の上からシルビアか降りてきて牢屋を見てラムがいないのを確認すると
恐ろしい顔をしたシルビアが辺りを見回している姿が見える。
その顔はすでにギルメサイアの知るシルビアの顔ではなかった。
ギルメサイアは可愛く仲良しだったシルビアの本当の姿もショックだったが
もっとショックだったのは自分が生まれて暮らしていた王宮の地下ににこのような場所が
存在したことの恐怖でギルメサイアが細かく震えて目を閉じて身をすくめた。
その姿を見たラーシャがギルメサイアを優しく抱きしめて大丈夫と囁いて落ち着かせた。
シルビアが不可視のアベルたちを見つけて攻撃をする。
するとアベルたちの姿が現れる。
ガナルが思わず叫ぶ。
「おい、アベル見つかったぞ。」
ベルクは初めて見るアベルの動きを感心している。
「アベルの奴、とても上手く最初のあの攻撃に避けたな。」
ラーシャがギルメサイアの手を握りしめながら言う。
「何?あのシルビアの目・・・ああ、アベルちゃんが魅了されてるわ。」
ガナルがラーシャの肩に優しく手を置きながら話しかける。
「ラーシャ心配しなくても大丈夫だ。アベルにはラキログの野郎からもらったアスクレピオスの腕輪があるからな。」
それでもラーシャはまだ心配している。
「そうだけどアベルちゃんの動きが何かおかしいわ。」
ベルクも心配そうにイベルマに尋ねる。
「母上、アベルは魅了されて自分を刺すつもりなのでしょうか?」
イベルマはベルクの言葉には何も反応せずにじっくりと分析するために
記録魔石をじっと見つめている。
そしてアベルの短剣が振り下ろされるとラーシャが大きな声を出してしまう。
「きゃあ」
イベルマはやっぱりと思いながら言う。
「アベル、魅了されたフリして油断させて攻撃したわ。」
ガナルカセため息をついてイベルマに言う。
「おい、イベルマ。アベルは本当にまだ本格的に訓練していないんだよな?そしてあいつはまだ五歳児・・・誰があんなこと教えたんだ?ロメロか?ハンナか?ラルクか?」
イベルマはガナルに答える。
「まだ誰もアベルに対人戦闘訓練なんてしていないわ。アベルはよく街で馬鹿な冒険者や不良に絡まれるぐらいよ。」
ガナルは腕を組んで首を横に振って
「10歳のアベル。15歳のアベルがどんなに強くなるか恐ろしいのう。」
ラーシャはガナルの言葉に驚いて答える。
「あら、あなた。いくら将来強くなったって私達のアベルちゃんは優しいアベルちゃんのままよ。でも少しショックなのはあんなに可愛いアベルちゃんが女の子を真っ二つにしちゃったことね。」
ガナルは当たり前のようにラーシャに言う。
「それは仕方ない。女の子と思っている相手は得体の知らないヴァンパイアだぞ。やらなきゃアベルがやられてたぞ。」
イベルマがアベルに切られたシルビアの体が自己再生する姿を興味深く見つめながら呟く。
「あら、やっぱり実際見るとすごいわね。ヴァンパイアってあんな姿になっても自己再生できるのね。」
ベルクがイベルマの言葉を聞いて呟く
「シルビアって子は完全に真っ二つだったのに・・・再生能力が高いんだね。僕ならもう諦めちゃうよ。絶対無理だ。もう戦えない。俺なんかと違ってアベルは本当にすごいなぁ。」
イベルマはベルクの肩に手をそっと置いて励ます。
「ベルク、戦いは諦めちゃダメよ。アベルにはアベルのあなたにはあなたの闘い方がちゃんとあるわよ。」
ベルクがイベルマに小さく頷く
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