第137話 アベルからの手紙

聖世紀1211年夏 王都 ガナル邸客間


イベルマがオールドの頭を優しく撫でて労う。


「オールド。ご苦労さまです。」


オールドも嬉しそうに答える。


『クワァ』


オールドがひと鳴きして亜空間からアベルからの手紙と記録魔石をイベルマの前に出す。


『クウァ』


これを受け取れとばかりにもうひと鳴きするオールド。

イベルマが手紙と記録魔石を受け取るとオールドはアベルの元に帰るために飛び立っていく。

イベルマが記録魔石を手に手紙を読み始めるとみんながイベルマに注目する。


「第二王姫シルビアはやはりヴァンパイアだったらしいわ。そして城の地下牢には数え切れないほどの串刺しの少女の死体があったらしいわ。そしてその少女達の血をどこか一箇所にに集めていたみたいね。結局、アベル達はシルビアに見つかって戦闘になったらしいわ。」


ガナルが驚いてイベルマに言う。


「ヴァンパイアなんて厄介なやつと戦闘になったのか? アベルは・・・」


ラーシャも心配そうにイベルマに聞く。


「それでアベルちゃんは本当に大丈夫なの? 姉様。」


イベルマがニコニコしながら話を続ける。


「続けるわね。あのね、こないだ私たちが使ったピクニックセットの銀のフォークとナイフと私とラーシャがアベルに送った聖なる水を使ってプルソンがアンブラ用の銀の聖水弾を即席で創って、アベルがシルビアに何発か撃ち込んで、シルビアが元の姿に戻ることが出来ずに大きくもがいているその隙に王宮から逃げてきたらしいわ。今は城の外で大賢者と星の聖女様を待っている見たいね。」


一同、イベルマから手紙の内容をを聞いてホッとする。

ラーシャがイベルマに聞く。


「あら、大賢者様と星の聖女様の用事は偶然にもアルバニ王国だったのですね。」


イベルマが答える。


「ええ、そうみたいね。王宮に侵入するときは別々だったらしいけどね。」


ガナルが痺れを切らしてイベルマに言う。


「それより早くそのアベルの記録魔石をみんなで見ないか?」


イベルマも手に持ってる記録魔石を思い出してガナルに答える。


「そうね。百聞は一見にしかずね。ええ、少し怖いけどそうしましょう。」


イベルマが手を翳して魔力を通すと記録魔石から映像が飛び出してくる。

アベル達が真っ暗な廊下を歩いていると両サイドの檻の中に大量の死体が串刺しにされている風景が生々しく映し出される。

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