第136話 王都 吉報1
聖世紀1211年夏 王都 ガナル邸客間
場所は変わって王都のガナル邸
夜なのに緊急事態として学生寮から呼び出されたジルード家の長男のベルクがイベルマとガナルとラーシャとギルメサイアに加わってリビングに座っていた。
今起こっていることを聞化されたベルク。
そのまま続けてイベルマからアベルの龍王様の加護の話やここ最近のアベルの戦いの記録魔石の映像を見せられてベルクは我が弟ながらびっくりして頭の整理ができずに言葉を失っている。
記録映像を一緒に見たギルメサイアも5歳のアベルの能力に目を丸くしてびっくりしている。言葉もない部屋の空気を恐る恐るギルメサイアが打ち破る。
「あの・・・イベルマ様、この方は・・・衰弱していた私に果物を下さったあの少年と同じ少年なんですか?」
イベルマはギルメサイアに嬉しそうに答える。
「そうなのよ。普段はとても優しい子なんだけどね。」
ラーシャも嬉しそうにベルクとギルメサイアに言う。
「そうよ。私もアベルちゃんがとても可愛くて大好きなのよ。」
ガナルがイベルマとラーシャに付け足すように言う。
「まぁアベルの戦い方はすでに一流冒険者か人外になっておるんで、信じられないのは仕方ないがな。わしだって初めてこの映像を見た時は5歳の子供がこんな戦い方をするなんて信じられんかったよ。」
ベルクもやっと気を取り戻してイベルマに尋ねる。
「あのう・・・母上。このような強い力を持った我が弟アベルはこの先どうなるのですか?」
イベルマは首を横に振って嬉しそうにベルクに答える。
「ベルク、それはね。アベルにしかわからないわ。本人は昔の私達みたいな漆黒の旅団のような冒険者になって世界中を旅すると意気込んでいるけどね。私とナデルはアベルが10歳になってアルベルト・ラジアスの知識が戻ったら弟子入りするつもりよ。」
と目を輝かせて笑うイベルマ。
その様子を見たベルクがイベルマに突拍子もないことを提案する。
「母上、ジルード家は平凡な僕なんかより強い力を持つアベルが継いだ方がいいんじゃないですか?」
イベルマは静かに目を閉じて首を横に振って答える。
「それはダメね。強すぎたり特殊すぎる力は街を治めていく事とは全く関係ないですもの。それどころか必要以上に目立つ人は周りに余計な立てなくてもいい波風が立っちゃうからね。それにあなたは平凡ではなくて私の自慢の正統派の天才なのよ。もっと自分に自信持ちなさい。」
今までの会話を聞いていたガナルもベルクに優しく話しかける。
「ベルクよ。考えてみろ。魔王もいない国同士の戦争も無い現在の貴族社会では強すぎる力など何も生まんよ。産むのはよかぬ事を考える奴とのトラブルだけじゃ。そしてそれをまた力で解決して逆恨みされるだけの繰り返しじゃ。」
ベルクはガナルの言葉をよく理解したようだが
小さくため息をついていイベルマに言った。
「今度アベルに会ったら兄としてどんな顔していいかわからないよ。」
イベルマはベルクの頭を撫でながら答える。
「そんなの簡単よ。よく頑張ったと普通に抱きしめて頭でも撫でてあげなさい。それだけでいいのよ。」
ガナルも何回も頷きながらベルクに言う。
「そうだ、弟は弟だ。何も変わらん。そんなもんだ。」
その時にガナル邸リビングの窓をコツコツと嘴で叩くオールドの姿が見える。
「あら、オールドね。ずいぶん早かったわね。アベル達は大丈夫なのかしらね。」
と言いながら窓まで移動してイベルマが窓を開けるとオールドが一歩中に入ってくる。
オールドがじっとイベルマを見つめている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます