第135話 吉報 ルマンド

聖世紀1211年夏 ルマンド宿の部屋


黒龍達は国境砦襲撃からルマンドの宿に戻っていた。


無言のまま一室に集まってアベルからの知らせを各自待っていた。

黒龍は目を瞑り腕を組んで検索魔法で宿の周りに追っ手が来ないか警戒をしながら部屋の入り口付近で立っていた。


ニヘルはウロウロと部屋の中を落ち着きなく歩いている。

そのニヘルの落ち着きの無さにクウガがイライラとしているが、周りの空気を感じて

怒鳴るのを我慢している。

そんな状態が宿に帰ってきてから10分程続いている。


そこへオールドがフワッと飾り窓に降りたつ。

黒龍が窓際に移動しオールドの頭を優しく撫でながら尋ねる。


「オールド、もう終わったのか?早かったな。」


黒龍が尋ねるとオールドは


「クワッ」


当たり前だと言わんばかりにひと鳴きして

亜空間からお待ちかねのアベルからの手紙を出して黒龍が受け取る。

するとオールドはすぐに王都に向かってまた飛んでいった。


ニヘルが心配そうに手紙を読む黒龍を見ている。

ドラゴニュート達もまた黒龍を見ている。

黒龍が手紙から目を離してみんなに伝える。


「第二王姫のヴァンパイアと少し戦闘になったそうだが、なんとか全員無傷でラムを救出したと書いてある。今は城の外までは脱出したみたいだ。」


するとドラゴニュートたちが手を叩いて喜んでいる。

ニヘルはほっとしてベッドに座り込んだ。

メムとマムは抱き合ってラムの無事を喜んでいる。

その様子を見ながら黒龍が喜ぶドラゴニュートたちに声をかける。


「戦いというのはちゃんと作戦を立てて適材適所に人を配置して計画的に実行するものなんだ。いくら個人個人が強くて勇気や根性があっても無作戦で敵陣へ突っ込んで行って戦っても敵の知略や数の前では勝てる戦闘も勝てなくなるんだ。今回はちゃんと君たちが国境で作戦任務をはたしてくれたからリトルドラゴンが作戦に成功したんだよ。」


クウガがよく理解したと頷いている。

ラウガが黒龍に質問する。


「黒龍様、俺たちもリトルドラゴンを護衛できるぐらい強くなれますかね?」


ドラゴニュートみんなが黒龍を見つめる。

黒龍はハッキリと言う。


「今のままでは全くダメだ。リトルドラゴンの親衛隊として俺がバッチリ鍛え直してやる。」


ニヘルがベッドから立ち上がって

ドラゴニュートたちもニヘルに合わせて立ち上がって 


「よろしくお願いします。」


ドラゴニュート全員で黒龍にお辞儀をする。

黒龍は2回頷くとパンッと手を叩いてドラゴニュート達に笑顔で言う。


「さあ、リトルドラゴンとラムの無事がわかったんだから、お腹空いているだろうから夜も遅いが夜食にしようか?」


黒龍が龍の宝物庫から果物や調理した肉やパンや焼き魚や冷たい水を取り出して宿の机の上に並べ始めた。

ミムが涙ぐみながら黒龍に言う。


「こんなにちゃんとした食事は久しぶりですわ。ありがせとうございます黒龍様。」


そしてルマンドの宿ではみんな笑顔でアベルの帰りを待つだけとなった。

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