第86話 ドラゴム収納
聖世紀1211年夏 王都 カナル邸 アベル5歳
夕飯となりガナルの用意した豪華な夕飯をお腹いっぱい食べたアベルは
大人たちとは別にガナル邸の客間のベッドへ早くに入った。
アベルは、明日の午後からの王様への謁見よりも午前中にガナルと行く
王都の冒険者ギルド本部に興奮してなかなか眠れなかった。
バエルも黒龍も指輪に帰って静かに気持ち良く寝ているようだ。
プルソンも眠っているようだ。
それでも疲れていたのか、アベルはいつの間にかぐっすりと寝ていた。
高級なベットの柔らかさになかなか起きれなくて
幼く可愛いメイドさんに優しく起こされた。
急いで着替えてアベルが食堂に行くとアベル以外はすでに朝食を終えていた。
大人たちがここ数日いろいろあったアベルを気遣って
ゆっくり寝かしていたのであった。
イベルマが冗談半分にアベルに微笑みながら
「あら、お寝坊さんね。」
アベルが寝癖のついた頭をかきながら
「おはようございます。はい、すいません。なかなか寝付けなくて」
ガナルも優しくアベルに
「寝付けなくて当たり前だ。午後からは男として命をかけないといけないからな。アベル。」
アベルは恥ずかしそうにしてガナルに
「いえ、あの・・・午後からのことではなく、午前中の冒険者ギルド本部にワクワクしておりまして・・・」
そのアベルの言葉にイベルマ以外大笑いをする。
「ハハハ、アベルは図太い神経しておるわ。これなら何も心配ないのう。ハハハハハ。」
イベルマだけは厳しい顔をして
「カナル、笑い事じゃありませんよ。今日5歳の息子を死地に送り出す親の気分にもなってくださいよ。」
ラーシャがイベルマを安心させようと
「まぁ姉様。でもアベルちゃんにはバエルちゃんとプルソンちゃんが付いているから安心じやないの、そして昨日プルソンちゃんに教えて貰った作戦があるじゃないの。」
黒龍もイベルマが安心するように声をかける。
「私も指輪に隠れてリトルドラゴンの側にいますんで、イベルマ様そこまで心配しなくても大丈夫ですよ。」
アベルも心配するイベルマに笑顔で
「母上、私は大丈夫です。例え私が1人にされたとしても、実際には黒龍先生とハンとバエルとプルソンがいますから。」
ドラコム兄妹がアベルとイベルマに頭を下げて
「我ら兄妹だけ何も役に立てなくてすいません。」
アベルが落ち込むトラコム兄弟に優しく声をかける。
「いや、仕方ないよ。こればっかりはね。」
黒龍が少し考えてから、思い出したようにパチンと手を叩いて
「お前たち、生まれた時に龍神教の洗礼で龍の小さな刺青を体のどこかに入れてるか?」
ニヘルが不思議そうに黒龍に伝える。
「はい。2人とも左胸に入れています。」
黒龍が大きく頷いてからドラコム兄妹に説明する。
「いや、大昔の龍と人間との大戦争の時に龍は自分のドラゴニュート部隊を龍の宝物庫で移動させたと聞いたんだ。信心深い龍神教のドラゴニュートは自分たちの信仰する龍と共に戦場を移動したらしい。俺自身は一回もやったことはないんだが。」
それを聞いたアベルもドラゴム兄妹も笑顔になる。
イベルマとガナルは驚いて黒龍見ている。
ラーシャは静かに紅茶を飲んでいる。
アベルが少し興奮した口調で
「そしたらいつも一緒だね。黒龍先生、僕やってみるよ。2人とも覚悟はいいかい。」
ドラゴム兄妹が大きく唾を呑んでから2人揃って返事をする。
「はい、覚悟はできてます。」
アベルがドラゴム兄妹に右手をかざし魔力を流すと
シュッと2人の姿がアベルの前から消えた。
そして別の向きに右手をかざすと驚いた顔の2人が出てきた。
ニヘルが驚いた顔のままアベルに
「アベル様、大丈夫です。ちゃんと綺麗な部屋がありました。あと30人ぐらいは泊まれそうです。」
クリシアは感激して目に涙を溜めながら
「これでアベル様といつでも一緒ですわ。」
これを聞いたイベルマが黒龍に聞く。
「あら、そんな素敵な部屋があるなら私たちも入れないかしら?」
黒龍が答える。
「すみません。ドラゴニュート限定ですね。」
アベルも慌ててイベルマに答える。
「母上が僕の宝物庫に住まれては本当に困ります。」
イベルマが残念そうに答える。
「あら、それは残念ね。」
ラーシャも残念そうにしている。
ガナルが何か考えながらイベルマに
「多分、大昔に最強と言われたドラゴニュート軍隊はその空間に入れて龍が運んでいたので神出鬼没だったんだろう。」
アベルがニコニコしながら
「これでドラゴム兄妹の住むところも解決だね。」
クリシアが満面の笑みで
「はい、いつでもリトルドラゴン様とご一緒できます。」
イベルマが気を取り直してアベルに
「さぁアベル。早く朝食を済ませてしまいなさい。あなた冒険者ギルドに行くんでしょ。」
アベルがイベルマの言葉に思い出して
「そうだった、早く食べないと王城の迎えが来ちゃうよね。」
アベルが慌てて席について朝食を食べ始めた。
その様子を見た大人たちはアベルを笑った。
朝食の途中、後でお腹空いたと言われるので、バエルを召喚した。
「・・・おはよう、アベル。俺は起きてるぞ・・・大丈夫だ・・・俺が来たからにはもう大丈夫だ。」
いつの間にか起きていたプルソンが突っ込む
「何が大丈夫なんですか。バエル様半分寝てるじゃないですか。
アベルが挨拶する。
「あっおはようプルソン。」
目の前のテーブルで半分以上寝ている可愛い仔猫
アベルがバエルの口元にパンを持っていくともぐもぐと半分寝ながら食べている。
その姿を見たプルソンがまた突っ込む
「バエル様・・・赤ちゃんですね。」
アベルはニコニコしながら
「まぁこうして見れば可愛いからいいじゃない。プルソン。」
そんな感じでアベルの朝食が進んで行った。
▪️あとがき
僕の小説には今のところアニメみたいなヒロインは登場しない。
奴隷も買わない。異世界知識でマウントもとらない。
図々しく仲間になる女も魔王も100年前に倒されていない。
そう言う意味では異世界小説の変なお決まりを無意識に避けているかもしれない。
やはり人気ある異世界小説のように王様に気に入られたり、姫と婚約したり
ハーレムを作ったり、スイーツを作ったりしないとだめなのかな?と思う時もある。
でも、やはり自分の読みたい異世界の小説を書きたいだけなんだ。
昔、ハマっていたFF11 のあの最初にプレイして見知らぬ人たちと
仲間になって様々な場所で冒険してきた感じを書けるように頑張りたい。
読んでいただきありがとうございます。
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