第74話 目覚めたら
聖世紀1211年夏 港町バーク 宿屋の部屋 アベル5歳
アベルが目覚めるとベッドの横にイベルマ、ダリアスがいた。
黒龍、ニヘル、クリシアは部屋の入り口近くで腕を組んで壁にもたれてアベルを見ていた。
アベルは目を覚ますとフカフカのベットの上にいる自分の体を隅々まで見回した。
そのアベルの様子を見たイベルマが心配そうに言う。
「どうしたのアベル?どこか具合が悪いの?」
イベルマが優しくアベルの頭を撫でる。
アベルが自分の周りにいる人たちを見回してから冷静に話し出す。
「いえ、母上。あんな魔法を使ってしまって、どこか僕の体が壊れたんじゃないかと思いまして見ていました。」
星の聖女ダリアスも心配そうにアベルの頭を撫でながら
「おまえさんはアルベルトだった時にずっと意識はあったのかい?」
少し思い出すようにアベルが考えて答える。
「はい、アルベルトさんが今から僕に魔法を一つ教えるから、よく見ておきなさいと言っていたので不思議な感覚で見ていました。」
ダリアスが溜息をついてアベルに聞く。
「では、やはりあの魔法は使えるようになったんかのう?」
一同、あの光景を思い出して動揺する。
「はい、使えるようにはなりましたが、僕は使いません。」
星の聖女がすかさず突っ込む
「当たり前じゃ、あんな魔法をしょっちゅう使われたら周りのもんがたまらんわ。」
黒龍もあの魔法の場面を思いだしながらアベルに言う。
「あれはこの平和な時代にはいらない魔法の一つだな。」
星の聖女も黒龍の言葉に頷く
「そうじゃあんな魔法を見て手を叩いて喜ぶのは大賢者とナデルぐらいじゃ。ああ、忘れておったわここにおる魔法とアルベルトマニアのイベルマお前ぐらいのもんじゃ。」
イベルマは図星を突かれて慌てて答える。
「私はそんな事ありませんわ。先生。」
イベルマが頬を膨らませて乙女のように拗ねる。
ダリアスがイベルマの姿にニコニコしながらニヘルとクリシアに声をかける。
「まぁええわ。ところでそこのドラゴニュートの兄妹よ。アベルとはまだ挨拶して無いじゃろ。」
ドラゴニュート兄妹が組んでいた腕を下ろして一歩ベッドへ
兄妹の兄の方が少し緊張してアベルに声をかける。
「はい、よろしいでしょうか」
アベルが頷く。
イベルマがアベルの頭を撫でながら答える。
「ええ、良いみたいよ。」
ドラゴニュート兄妹がベッドにいるアベルにひざまづいた。
「では、改めまして私はアルバニ王国デビ砂漠から貴方に会う為にやってきた。ドラゴニュートのニヘル・ドラゴムです。」
「ニヘルの妹のクリシア・ドラゴムです。」
それを見たアベルも上半身をベッドから起こして
右手を胸に当てて簡略式の礼をした。
「僕は、アベル・ジルード五歳です。この僕の影から顔を出しているのが従魔のハンです。シャドーウルフです。そして僕の先生の黒龍先生です。」
アベルの自己紹介で、なぜか自分がいきなり紹介されたので黒龍が1人で笑っている。
「私たちの種族はご存じのとおり聖教会に全滅されかけておりました。幼い頃からいろんな国を転々と移動しながら生きてきました。父や母、妹や親戚などの親しいものも全員聖教会に虐殺されました。わずかに残ったものだけで、デビ砂漠の小さなオアシスで静かに暮らしていました。」
アベルはベッドから降りてドラゴム兄妹の前まで行き、クリシアの頭を優しく撫でる。
「かわいそうなんだね。」
星の聖女がアベルに教えるように言う。
「人間というものは平和になるとおかしなことを始めるもんじゃ。最後の魔王戦の時代には種族関係なくみんなで力を合わせたのにのう。もちろんドラゴニュートの連中の戦いも凄かったぞ、いろんな種族から尊敬されておったわ。」
ニヘルが重い出したように星の聖女に
「うちの祖父も戦場で見た星の聖女ダリアス様がとても美しかったと言ってました、」
ダリアスが笑いながらニヘルに答える。
「おいおい、褒めてもわしからは何もでんぞ。」
星の聖女がドラゴム兄妹に優しく微笑んでいる。
アベルが思い出したように
「それでニヘルさんとクリシアさんはどうして聖教会に見つかる危険を冒してまでこの国にやってきたの?」
ニヘルがキリッとした表情に戻ってアベルに
「はい、われわれドラゴム兄妹は龍王様から神託を受けました。」
続けてクリシアがアベルに
「はい、この世界のどこかに居るリトルドラゴンに従い、彼を守りなさいと。」
アベルが驚いて目を丸くしている。
「うぁーではここで会えたのは偶然なんだね。」
アベルの言葉に星の聖女が首を横に振りながら
「全ては星の導きじゃ」
アベル少し考えながら
「うーん。どうしようかな。龍王様は僕の神様だからなぁ。断ることもできないし・・・じゃあ、僕にはまだ従士が1人もいないから2人を今日から僕の親衛隊に任命します。僕が稼げるようになるまでは、ジルード家からちゃんと2人のお家とお給金も出してもらいます。母上、これで良いですか?」
アベルが母上の方を見るとイベルマが優しく微笑んでいる。
「ええ、良いわよ。貴方の好きなようにしなさい。でも、好きなようにすると言うことは、それだけ責任が伴いますからね。そこは5歳でも関係無いのでちゃんと理解して行動しなさいね。」
アベルも天使のような笑顔で母上に答える。
「はい、母上。僕も遊びではありません。」
『グウ〜』アベルのお腹が盛大に鳴る。
「母上、お腹が空きました。」
みんながアベルの一言に笑っている。
イベルマがアベルの頭を撫でながらみんなに言う。
「美味しいお魚料理でも食べましょう。」
▪️あとがき
多くの方に読んでもらうのはなかなか難しいですな。
やはり、イチャイチャとかいるのかな?
無理だ・・・そんな感じの異世界嫌いなんだ。
FF11みたいに仲間達と淡々と生きてみたいんだ。
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