第71話 こんにちはさよなら
聖世紀1211年夏 バーク近く 海の見える草原 アベル5歳
星の聖女ダリアスがアベルに優しく声をかける。
「そなた、アルベルト・ラジアスじゃな。」
アベルが綺麗にみんなにお辞儀をして
「はい、その通り私はアベル君の転生前のアルベルト・ラジアスです。」
イベリアはうるうるしている。
「アルベルト様・・・」
アベルが黒龍とハンの方に向いて
「黒龍君久しぶり。ハン、アベル君に仕えてくれて私は嬉しいよ。」
イベリアが質問する。
「どうして貴方がここにいらっしゃるのですか?」
アルベルトが説明を始める。
「アベル君の大切なお母様を大司教が恥ずかしめようと考えたのが私がこの世に推参したキッカケです。まだ小さいアベル君が大司教の言葉に耐えきれず怒りの感情がオーバーフローしてしまったのでしょう。そして彼は無意識に相手に打ち勝つ何か大きな力を自分の中に求めました。でも今のアベル君には騎士団30人を倒す力はありません。そして今回は最初で最後、私がそのアベル君の気持ちに答えることにしました。」
黒龍がアベルの姿のアルベルトに言う。
「おい、アルベルト。ものには加減があるだろ。わざとあんなみんながトラウマになりそうな魔法を使いやがって。」
アルベルトが当たり前のように答える。
「黒龍よ。本当は貴方に全部任せた方が良かったかも知れないが、私はアベル君でもあるからどうしてもアベル君の気持ちに答えてあげたかった。この魔法を使ったのは、他の古代魔法だとこの綺麗な海の見える草原を滅茶苦茶に破壊するだろ。俺は綺麗な世界は壊したくない。神を間違って信仰する罪深い奴らには私の神の罪深い神級禁呪魔法がお似合いだろろ。それにアベル君に本当に強い力とは何かを考えて欲しかったんだ。」
続けてイベルマがアルベルトに聞く
「あの、アルベルト様・・・アベルはまた元のアベルに戻りますの?」
アベルがイベリアに敬意を払いながら答える。
「ええ、今はあんな巨大な魔法を使った後なのでいくらアベル君が外部から魔力を無限に取り入れられてもこんなに一気に使うとなると魔力切れで眠ってしいます。そうですね、後3時間ほどでいつものアベル君に戻るでしょう。」
安心するイベリア
「嗚呼、よかったわ。」
アベル続ける。
「皆様、今回の件どうかアベル君を叱らないでください。あの魔法は私自身が怒りに任せてぶっ放した魔法ですので悪いのは全てこの私、アルベルト・ラジアスです。」
ダリアスがアベルにと質問する。
「あの魔法はなんじゃ。文献では読んだが、あんな恐ろしい魔法初めて見たわ。」
アルベルトが普通に答える。
「星の聖女様は知っておられましたか、あの魔法は神の使う禁呪魔法です。文献には残しましたが、あれは悪魔と契約することで僕がこの世に創った魔法です。」
バエルが思い出してアルベルトに質問する。
「お前・・・もしかしてその契約した悪魔ってルシファーだろ。だからさっきルシファーが俺に話しかけてきたのかよ。」
アルベルトが驚いて
「バエルさんはルシファーさんと知り合いでしたか?」
バエルは驚いたまま
「簡単に言えば昔の俺の直属の上司だ。ルシファーなんていうと聞こえがいいが、あいつは元々天使で堕天して今は最強の悪魔の頂点だ。人間の攻撃なんて最初から相手にしていないからどんな攻撃も無効で効かないから、人が絶対に倒すことのできない悪魔の1人なんだぞ。」
アルベルトがバエルにお辞儀をして
「そうでしたか、こんな高位な悪魔様にアベルの体を守らせてしまって本当にすいません。私、カッとして大人の感覚で魔法を使ったので子供の体のアベルのことを忘れていて助かりました。」
バエルは機嫌良くなって
「まぁ、アベル君は友達だからな。守るのは当たり前なんだよ。」
ハンに乗っているバエルは尻尾をブンブン振ってハンの頭をバシバシしている。
バエルがアルベルトに聞く
「悪魔魔法でもあんな禍々しく残酷な魔法はないぞ。でもお前はなんでルシファーなんかと契約してるんだ。たかが人間ごときがルシファーと契約なんてできるわけないんだ。」
アルベルトは微笑みながら答える。
周りの者はアルベルトの言葉を黙って聞いている。
「バエル君、それには訳があって私の執事のイビル君と言う魔族の青年がいるのだが、彼を魔の森で助けたのがルシファーとの縁の始まりだったんだ。」
ハンが何か言っている。
『ガウガウガウ』
ハンもアルベルトの話に一生懸命に捕捉しようとしているようだ。
アルベルト以外にはわからない。
「ありがとう、ハン。わかったよちゃんとみんなにわかりやすく僕が説明するよ。」
アルベルトがハンの頭を撫でて話を続ける。
「イビルというのはルシファーが堕天した時に地上で看病したこの世界の魔族の女性との間に授かったルシファーの息子なんだ。魔族の任務に失敗して聖教会に追われて魔の森に逃げ込んだ瀕死のイビルを助けたことでルシファーがお礼に僕に力を貸してくれるようになったんだ。」
バエルが驚いているというか呆れている。
「お前・・・相当ヤバいな。」
イベリアも我に帰ってアルベルトに話しかける。
「アルベルト様、私もこの記録魔石に今の魔法を記録しましたが、今の戦いをもう一度見る気が全くしません。なぜかあの魔法を見ていると本当に気が狂いそうなんですもの。魔法が強過ぎて完全に虐殺になっていましたよ。」
アルベルトが苦い顔をしながら
「すいません母上様、あれは7つある禁呪魔法の1つ地獄門です。1000年ぶりなんで1番簡単であっさりした禁呪魔法を唱えたつもりなんですが・・・本当にすいません。でも、アベル君が10歳になって私の知識と記憶が戻れば、禁断の魔道具や秘薬は作り放題ですし、古代魔法も撃ち放題、禁呪魔法の残りの6つもアベル君がその気になれば、この世界で見ることができますよ。それと今、この地獄門の魔法はアベル君に伝授しましたので10歳にならなくても彼はいつでも使えますよ。」
ダリアスがすかさず突っ込む
「気軽に使われたらこの世界のバランスがおかしくなるわい。」
星の聖女ダリアスのツッコミに同意するようにイベルマが
「研究者としては惹かれるけど、アベルには2度と使わせませんわ。」
他の者はあの魔法が簡単であっさりしていると言うアルベルトと
アベルの将来を考えて言葉を失う一同。
当たり前なんだけどアルベルトとアベルが
よく似た性格をしているとイベルマはクスッと笑った。
アルベルトがイベルマが手に持っている記録魔石を見る。
「イベルマさん、ちょっとその記録魔石と言う魔道具をお見せ下さい。」
イベルマがアベルに記録魔石を渡す。
「なるほどなるほど、これは1,000年前にはなかった魔道具ですな。これが今の技術か・・・ちょっと触りますね。ここをこうしてこうすればっとっとほら良いのできたよ。」
アベルがイベルマに記録魔石を返す。
「今までみたいに魔石を覗着込むのではなくて、少し魔力を流すと魔石の上に記録した映像が現れて魔石を囲んでみんなで見えることができるように作り変えたよ。」
イベルマが感心してアルベルトに言う。
「さすがアルベルト様、なんと言う技術なんでしょう。」
憧れのアルベルトの技術に関心している。
続けてアルベルトがみんなに言う。
「今回はアベル君のアクシデントでこの世界に推参しましたが、こんなことはもう二度とありません。僕がアベルでアベルがアルベルトであることは今後も何も変わりません。あとは約束通り5年後に知識と記憶として出現はしますが、その時はもうアベル君としっかり融合していますので今みたいに別人格のアルベルトとして皆さんとお話しする事は無いでしょう。」
星の聖女ダリアスが改めて礼を言う。
「なんやかんや言うとるが30人もの騎士相手に全員無傷だったんじゃ。御主には感謝しかないのう。」
アルベルトは爽やかに答える。
「私が私に言うのはなんですが、アベル君はよく頑張りました。彼は私を超える大天才になるでしょう。私は私であるアベル君が自分の子供のように可愛い。自分のことをこのように可愛いなんて言うのはおかしな話ですが。でも気をつけないと魔王にも簡単になれるアベル君ですからね。」
アルベルトが爽やかに笑っている。
星の聖女ダリアスが頷いてアルベルトに言う。
「アベルが魔王になるとしたらそれも星の導きじゃ。」
アルベルトは爽やかに
「おっと時間が来たみたいだ。黒龍君、バエル君、ハン、これからもアベル君をよろしく。それではみなさん、またお会いしましょう。」
黒髪のアベルが丁寧に美しい正式なお辞儀ほした。
アルベルトがアベルの体から消えるとアベルが力なく倒れそうになり慌てて黒龍が支える。
アベルの髪が黒から不自然な白銀に徐々に戻っていく。
▪️あとがき
カクヨムの星とかPVとか何もわかっていない初心者です。
頭の中にある物語をただただ書いてます。
あと2つ物語があるのでこの物語が落ち着けば、並行して書きたいと思います。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。
もう少し頑張ってみます。
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