第12話 夫婦漫才

聖世紀1212年春 ユミルバ 鍛冶屋 アベル6歳



「ありがとうよ。アベル。でもいっとくがなぁハンナ、人にバカという奴が世界で1番馬鹿な奴だと100年前の異世界から来た勇者がいってたぜ。」


『ゴツッ』


ハンナの鉄拳がオンジの頭を直撃する。

目から星が出てふらふらしているオンジ。

ハンナはそんな状態のオンジにお構いなく


「一つだけ注意しておくと、アベルが修行している森はね、昔は『帰らずの森』と言って、大人でも簡単に死んでしまう危ない場所だから本当に気をつけないとダメだよ。」


アベルも真面目な顔で答える。


「ありがとう。ハンナ、僕はそんなに奥までは行かないし、黒龍もハンもオールドもドラゴム兄弟達もいるし、なんてったって僕はもう6歳になったんだよ。」


オンジが自分の頭を右手でさすりながら


「おいおいまだ、6歳のガキじゃねえか。」


オンジが、まだ自分の頭をさすりながらアベルに諭す。


「アベル、よく聞けよ。どんな物語でも、調子乗って大口叩く奴は話の一番最初に死ぬってことだ。」


アベルも笑顔で答える。


「わかったよ。オンジ。自分の力を過信しないで気をつけるよ。」


オンジが満面の笑顔になる。


「いい子だな。」


ハンナがアベルに優しく言う。


「明日、黒龍の修行が終われば店の裏においで、私の必殺技を伝授してあげるよ。」


アベルがハンナに一礼して


「有り難う。僕頑張るよ」


オンジがアベルにひそひそ声で


「がんばれよ、アベル早く強くなって、俺がハンナに叩かれた分も仕返ししてハンナにベソかかせてくれよ。」


ハンナがアベルの頭を優しく撫ぜながら、


「あんた、くだらないこと言ってないで、アベルがでっかい魔獣や気に入らない貴族の街を1発で破壊できる最強の武器とか作ってあげな。」


嬉しそうな顔をするオンジ


「そう来なくっちゃ。さっきそれを言ってたんだ。さすがそれでこそ鉄拳ハンナだぜ」


アベルが1人冷静に2人に言う。


「ハンナ、オンジ。本当にありがたいけど・・・そんな武器を作ったら父上と母上がブチキレるよ。」


オンジが笑顔で


「ちげえねえや。」


オンジとハンナ顔を見合わせて笑っている。

ハンナが口に人差し指を当ててアベルに


「今のは無しね。冗談ってことにね。」


オンジもハンナの隣で人差し指を口に当てている。


仲の良い夫婦だ。

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