第8話 副王都ユミルバ
1000年後・聖世紀1212年春 ユミルバ
魔王が滅ぼされてから100年経過していた。
世界は平和であった。あまりにも平和すぎた。
魔王討伐後も国同士が大きく争うことも無く
それぞれの国や都市は良い意味でも悪い意味でも熟成していた。
戦うことなど無い国の貴族たちは当たり前のように私利私欲の為に腐敗していた。
どの国の貴族達も本来の貴族の役割を忘れて貴族教育もせずその精神までも堕落していた。
アルベルトが転生したユミルバは、
ナジーバ王国の王都ナジーバより石で舗装された王都街道を
馬車で3日ほど南に下ると見えてくる副王都であった。
長い間、魔王軍が支配していた街で王都の近くにありながら魔物に
完全支配された魔都市であった。魔王が倒された後も荒廃した街には、
ドラゴンゾンビを筆頭に大量のアンデットや魔族が住み着く魔王軍残党の巣窟だった。
その街を当時の国王の特別依頼でSS級パーティー「漆黒の旅団」が
アンデットを一掃し街全体を浄化して今の美しい街に再開発するきっかけを作った。
魔王軍の支配の終わった街は綺麗に整備され、街の外には豊かな森と湖が広がり
街の内側には綺麗な石畳みと街中に張り巡らされた清らかな水の水路が特徴の
人が住めるようになってまだ20年の新しい都市であった。
街の美しさに冒険者が集まる様になったユミルバは、「ナジーバ王国の宝石」と呼ばれ
冒険者に聞く住みたい都市ランキングではいつも上位で王都ナジーバより人気があった。
隣接する魔の森は深く大きくその奥地には強すぎる魔獣が生息しており、
かつては「帰らずの森」と王都の人々から呼ばれていた。
森の比較的浅い部分では、いろんな素材が多く採取できることもあり
冒険者には人気だったが、調子に乗って少しでも奥に入ると急に魔獣の討伐難易度が上がり
年に数回S級以上の冒険者パーティーが依頼された素材集めで踏み入るぐらいで
若い冒険者は興味があっても誰も森の奥には入ろうとしなかった。
その森の反対側には隣国の聖教会の国・聖カルロタ皇国があるが
森があまりにも広く険しい為、ユミルバが国境の街というイメージは全くなかった。
大通りには大きな商業ギルド・冒険者ギルド・魔法ギルドがあり
少し高台になった街の奥にこの国の魔法省の大きな建物があった。
ユミルバは首都からも近く、魔の森のお陰でここをベースとして冒険する冒険者で賑わっていた。多くの人が行き交うユミルバには、王都より多くの様々な種族の旅人が往来していた。人族、エルフ、ドワーフ、獣人、魔族がそれぞれの多様性を尊重しながら一緒に暮らしていた。
街に集まる豊富な食材が安定した物価と豊かな食文化を生み出し
一年中市場は活気に溢れ商人や冒険者や旅人の交流が盛んで
ナシーバ王国中の情報が金より集まる街とも言われており
現在も少しづつではあるが人の流入により発展しているのであった。
この美しい街を治めるのがナジーバ王国の建国にもかかわった魔法名門貴族ジルード公爵家
ジルード家は初代オズワルド・ジルードの戦場でのあまりにもすざましい強さゆえ
悪魔の末裔とまで言われた一族であった。
そのオズワルド・ジルードの子孫も100年前の魔王軍との最後の戦場で
隣国の聖カルロタ皇国に召喚された勇者たちにも引けを取らない
異常な強さを発揮したという伝説がナシーバ王国全土に残っているぐらい
ジルード家はナジーバ王国では一目置かれていた。
しかし一目置かれていると同時に他の貴族から妬まれて足を引っ張る機会を伺われている
ジルード家はいつでも他国や他の貴族と戦闘が出来るように教育された貴族でもあった。
名門貴族ジルード公爵家が治めるユミルバは他の都市に比べて
治安も経済も非常に安定した住みやすい都市だった。
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