第7話 自力転生
年代・場所不明
頭の中に声が聞こえる。
「おいおい、なんじゃまたどえらい変わった奴が来おったのう。」
真っ暗な空間
「おまえは・・・異世界から来たのでは無いのう? 珍しい奴じゃのう。」
光の玉が近づいてくる。
「普通ここに来るのは異世界から転移転生する魂だけなんじゃ。最近は異世界で陰キャだった奴がワシが神と名乗とるのに、ワシに対して偉そうに前世の記憶をとかチート能力とか強いスキルがとかステータスをとか本当にいろいろうるさい汚れた魂ばかりで正直ヘキヘキしとったんじゃ。そう言う奴に限って自分の世界の知識を転生した異世界で使ってわしの世界の住民にマウントとって勝手に目立っておいて目立ちたくないとかスローライフを送りたいとか言い寄るんじゃ。」
光の玉に光り輝く老人がいる。
アルベルトの体は無く小さな光の玉になっている。
「えーと、名前はアルベルト・ラジアス・・・職業は錬金術師・・・なになに自力で転生してここに来おったのか。お前は天才かもしれんな。この世界にもお前みたいな恐ろしい奴もいるもんじゃのう。しかもなんで神の雫の賢者の石なんかを体中に持っておるんじゃ。」
光の玉の中に手を入れる老人。
「実験に失敗したと・・・なんの実験しとるんじゃ。おいおいこの石、お前の魂と完全に癒着して取れんぞ。ああ、もう面倒だからこのままでええかのう。」
真っ暗な中で声だけが聞こえる。アルベルトが答えようとするが声か出ない。
「この世界の人間で、お前さんが初めてだぞ、自力で転生したバカな奴はのう。」
誰でもちょっと勉強すればすぐ出来るって思っていたのだけどな。
「ワシは転生の神だ。お前さんは異世界の神からの転生じゃないから、言っておくけどな、お前には特殊なスキルや特別なステータスも何も与えることができんぞ。すまんがこれが転生のルールなんじゃ。なんでバカな人としても未熟な異世界人にだけ特殊な能力を与えるかはわしは知らんけどな。」
なるほど異世界から来た勇者たちはここで特殊な能力をもらうのか・・・
「わしが自力で転生したお前さんに少しだけサービスとして与えられるのは魔力の総量をちょっとだけ増やすことと前世の記憶の引き継ぎだけじゃ。それとお前さんが持ち込んだ賢者の石はそこから剥がれんのでそのままじゃ。」
はい、ありがとうございます。
「今からお前さんが転生するのはお前さんがが亡くなって1000年後の前世と同じ世界じゃ。かつてお前さんの住んでいた帰らずの森のある今はナシーバ王国という名のユミルバという街だ。」
1000年後か・・・ちょっと思っていたより経過し過ぎだな。
「生まれる家はのう。そうだな・・・おっ丁度ええのがおるわ。ユミルバの領主のナデル・ジルード公爵家の次男坊に転生じゃ。かつてお前さんの住んでいた森のすぐ隣に出来た新しい街だ。安心せい。お前さんが生前に聖教会の騎士を道連れにしたおかげで錬金術は一目置かれるようになって、この1000年後の時代は錬金術というのは王国に認められたちゃんとした学問になっておるから昔みたいに意味なく迫害されることも無いぞ。お前の天敵の聖教会は今も横暴だが規模が小さくなって隣のカルロタ皇国にしかないからのう。」
聖教会には、いつか仕返ししてやろうと思っていたがな。
「それとおまえさんは転移ではなく転生じゃ。もう体は無くなってしもたからのう。また赤子からスタートになるのじゃ。いろいろと支障があるでのう、アルベルト・ラジアスの記憶や錬金術や魔法の知識はお前さんが10歳になるまでその賢者の石に封印しておいてやろう。ここに封印しておけば無くすことも暴走することもなく安心じゃろう。」
私的には最初から知識と記憶があってもいいのだけどな。
「あのな、子供の頃に妙な知識や異常に大人びていると悪目立ちして気持ち悪い子供だと周りから思われるからのう。ああ、今ここでの記憶も10歳まで封印じゃ。それとのう転生後の性格や容姿は転生前の物を引き継ぐから前世での反省があるなら第二の人生では改善した方が良いぞ。例えば前世の引きこもり癖とか理屈っぽいところとか、マニアックなこだわりとかな。人見知りはええが適度の人付き合いはちゃんとせいよ。少なくとも友達1人ぐらいは作れよ。」
有り難うございます。善処します。
「ワシは何もしてやれんが、今度こそ理不尽に殺されんようにな。」
いろいろ有り難うございました。ところであなたのお名前は?
「ああ、ワシの名前は転生の神アビルノじゃ。わしも聖教会に追いやられたこの世の神の1人じゃ。まぁお前さんが10歳になって記憶が戻ってワシを思い出したら、お前さんの屋敷の庭の片隅に小さな祠を作ってお供物の一つでもしておくれ。覚えておったら小さな力じゃがワシの加護を授けよう。アルベルトよ、さらばじゃ、頑張って強く生きろよ。」
暗転
▪️あとがき
プレリュードが終わり、やっと本編へ入っていけます。
読んでくださった方々ありがとうございます。
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