第5話  VS 異端審問官

聖世紀206年 ユミルバ冬 帰らずの森 ラジアス邸前 アルベルト・ラジアス25歳


アルベルト・ラジアスが外にでていろいろ段取りをしていると5分ほど経過していた。

待ちくたびれたアルベルトはしゃがみ込んでいろんな事を思い出していた。


「転生前って、意外にもこんなにもセンチメンタルになるのですね。フフ。」


アルベルトは自分を小さく笑った。


しばらくすると帰らずの森に初雪がちらつきはじめた。

初雪がヒラヒラと風に舞ってアルベルト・ラジアスの頬に乗って溶けた。


「やはり降りましたか・・・私はこの季節はあまり得意じゃ無いんですよね。」


アルベルトが独り言を言って結界魔法を無詠唱で発動させた。

そうすると雪が半円形にアルベルトを避けていった。


すると遠くからガシャガシャと雑音が聞こえてきた。

その音は段々と近づいていた。


森の木々の間から雪とは違う白いものがチラチラと見えてきた。

白い息を吐きながら白い鎧をガチャガチャ鳴らした騎士団が

こちらに向かってすごい勢いで走ってきた。


あの派手な鎧はイビルの言うように聖教会異端審問強制執行騎士団だった。

アルベルトと5メートルほど開けて対峙して騎士団の隊列が止まった。


「ついに見つけたぞ!!! 異端者アルベルト・ラジアス。こんな物騒な森に隠れやがって!!!」


先頭の騎士団長らしき男が白い息を吐きながら叫んでいる。

騎士団全員が殺気だった目でアルベルトを睨みつけている。

アルベルトは動じる事なく普通に話しかる。


「あのう・・・どなた様でしょうか?こんな僻地に住むしがない錬金術師に何かご用でしょうか?」


アルベルトが騎士団に向かって丁寧に一礼する。

それに答えて騎士団長らしき人物が一歩前へ出てくる。


「私は聖教会異端審問強制執行騎士団騎士団長ムーリン・ベルナルドだ。お前の数々の神の冒涜行為をこれ以上見過ごすことはできん。貴様をこの場で神のご意志により粛清することとした。覚悟せよ。大人しく処刑されれば神もおまえの罪を許してくださるはずだ。」


『シャキーン』


騎士団長の言葉をきっかけとして騎士団員が統率された動きで全員同時に剣を抜いた。

アルベルトは全く怖気付くこと無くムーリンに質問する。


「あのですね。私は単なる錬金術師ですよ。何も神様を冒涜などしていない。私は弁明の機会も無く、ここであなたたちに殺されるのでしょうか?」


小さくため息をついた騎士団長がアルベルトに諭すように言う。


「その錬金術自体が神に逆らいし術なんだ。疑わしきは粛清せよ。我々聖教会の方針でありそれが神のご意志なのだ。」


アルベルトが理解できないと惚けた感じで騎士団長に聞く


「神のご意志?貴方たちの都合の良い勝手な神に対する解釈が、既に狂っているとは思わないのですか?」


少しづつ騎士団長の口調が怒っていくのがわかる。


「うるさい、我ら聖教会の神への暴言は許さん」


アルベルトは聖教会の理屈に呆れて


「私は、貴方たちが一番神様を冒涜していると思いますよ。」


審問騎士団員たちがイライラしながらアルベルトを睨んで


「もういい、神の子たちよ。アルベルトは神に逆らいし狂人だ。神は我々に仰ったのだ。アルベルトを切り刻めと。一片たりとも奴の肉体をこの神の作られた世界に残すなと。」


アルベルトはため息をついて


「相変わらず狂ってますね。あのね僕はね。この世界に聖教会さえいなければ人はどんなに自由で平和だったかと思うよ。いつか本当の神罰が当たりこの世から聖教会は消滅するんじゃないかな。」 


騎士団長がアルベルトを鬼の形相で睨んでいる。


「我らが聖教会のことを侮辱するようなことを言うな!!!」


騎士団長が剣を構え直す。


「神の御名においてこいつを粛清しろ!」


騎士団長ムーリンの掛け声と共に騎士団員たちが一斉にアルベルトに向かって斬りかかる。


アルベルトは目を瞑って静かに立っている。


9人の騎士団員が剣を振りかざしアルベルトまであと2歩まできたところで

地面に魔法陣が浮かび上がり闇魔法罠・奈落の罠が起動する。


騎士団員9名が地面から湧き出た闇に包まれて声もなく塵となり風に流されて

帰らずの森の寒空に消滅していった。


アルベルトは腕を組んで首を捻れながら


「うぁーこの闇魔法罠・奈落はとても芸術的だな。殺意のない味方が踏んでも作動しないが、術者に殺意のある敵が踏むと罠が全自動で作動するなんて、とても素晴らしい。素晴らしすぎるじゃないか。これは実戦でも使えるから国にちゃんと特許申請しとかないとな。まぁでもな・・・ちょっと魔力の消費が激しいから実用にはもう少し実験して改良しないと採用されないな。」


騎士団長が驚いて目を丸くしながら怒っている。


「貴様!!! 何をしたんだ!!!!!」


1人残された異端審問強制執行騎士団長が叫んでいる。

アルベルトが冷めた目で騎士団長を見つめている。






▪️あとがき

本当は騎士団員を何人かづつ消したかったが騎士団長以外一気に消してしまった。

読んでくれた人ありがとう。

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