第2話 冬が始まる

聖世紀206年 ユミルバ冬 帰らずの森 ラジアス邸 アルベルト・ラジアス25歳


アルベルト・ラジアスが聖教会に目を付けられて一週間が経過した。

アルベルト・ラジアスはそんなことは全く知らずにいつも通りの生活を送っていた。


朝起きていつも通りに誰に会うこともなく

いつも通りの朝食にいつも通りに執事とメイドと他愛もない話をして

いつも通りの実験と研究をして過ごしていた。


誰にも会わずに帰らずの森の奥地の自宅にこもって

在宅ワークでマニアックな仕事をしていたと言うことであった。


アルベルト・ラジアスは婚姻もしておらず一人暮らしであった。


身の回りのことは、ある事件で知り合った魔族の青年執事イビルと

研究で製作したホムンクルスのメイドがこなしていた。


ある日の朝、魔法師ガウンを着たアルベルト・ラジアスが

日課である食後のコーヒーを飲みながら窓の外を見つめながら

背後で朝食の片付けをしているメイドに話しかける。


「・・・この感じは・・・今日はやけに森が騒がしいですね。そう思いませんか?」


と少し後ろにいたメイドのホムンクルスがに爽やかな笑顔で答える。


「そうですね。雪が降りそうですね。そろそろ薪の準備をしますね。」


メイドがそう答えた時に『コンコン』リビングのドアがノックされる。

ドアの外から若々しい男性の声が聞こえる。


「失礼します。アルベルト様。イビルでございます。」


アルベルトは振り返ってドアの方を向いて答える。


「入れ、っていうか、ここには三人しかいないんだから、そんなお決まりはいらない。」


部屋に入ってきたのは、銀髪の綺麗な執事の格好をした魔族の美しい青年だった。


「いえ、これは私が個人的にやりたいことなのでお許しください。」


ニコニコしながらイビルが綺麗な姿勢で立っている。


「やりたいなら仕方ないね。イビル。」


アルベルトもニコニコしている。

イビルが急に真面目な顔になりアルベルトに報告する。


「そんなことよりアルベルト様、隊列を組んでこちらに凄い勢いで近づいてくる武装した10名ほどの何者かがおりますが。」


アルベルトが腕を組んで考えてからイビルに聞く。


「あのーイビル君。ちょっと確認なんだけど・・・もしかしてだけど、もしかして私って命を狙われたりしている人なのかな?」


イビルはっきりと答える。


「はい、アルベルト様は命を狙われていますよ。」


アルベルトは少しびっくりしてから笑顔で言う。


「イビル、はっきりと言い過ぎだな。もうちょっと優しく言ってほしいな。」


イビルがアルベルトに一礼して


「では優しく。アルベルト様は、貴族や商人や教会にかなり嫉妬されてます。まぁ特に聖教会異端審問官強制執行騎士団あたりはアルベルト様を粛清する為に、この一週間ずっとアルベルト様を血眼になって探しておりますから。多分、ここに向かっているのは彼らでしょう。」


アルベルトが少し眉間に皺を寄せたがすぐに微笑んで答える。


「ええっそうなの?この家が見つかっちゃったの。うぁー・・・それはやばいね。フフフ。」


アルベルトが笑っている。

イビルがアルベルトのその顔を見て小さくため息をついて


「やばいとかいいながら、なぜ笑っているのかは私には全く分かりませんが、今回の奴らも私が全てを片付けておきましょうか?」


アルベルトが少し考えてから答える。


「いや、いつもの1人2人の侵入者なら任せるけんだけど・・・それにイビルの悪魔魔法はいつも残酷な大惨事になるからなぁ。いや、聖教会ならここが見つかったのなら今回上手く追い払ったとしても何度も何度もここへ来るだろうからね。そう何度も相手している時間が私にはないからね。」


イビルがいたって真面目に答える。


「アルベルト様。お言葉ですが、私の魔法が大惨事なんて言われてますが、魔族の私ですら躊躇する大惨事以上のアホみたいな魔法を平気で使うアルベルト様にはそのようなこと1ミリも言われたくありません。」


アルベルトが少しすねながら笑っている。


「イビル君は私の魔法に対する評価がとても酷いな。」


イビルはアルベルトに取り合わずに質問を続ける。


「アルベルト様、こちらに向かってる騎士たちをどう処理いたしますか?」


アルベルトが何故かワクワクしながら答える。


「はい、丁度いいので、私は少しの間生きづらいこの世界とさよならしようと考えていたんですよ。」


イビルが驚いてアルベルトに聞く


「この世界とさよなら・・・もしかして自害されるのですか?」


メイドとイビルは首をかしげている。






▪️あとがき

いろんな異世界小説を読んだ。このジャンルはゲームをしていたこともあってか割と好きな世界観だったが、しかし、登場人物が子供過ぎたり、現代の地球の知識でマウントをとって金儲けしたり、図々く付きまとう女の子が出てきたり、奴隷制度を批判しながら奴隷制度を思いっきり利用しているのにも嫌悪感があった。それに似た物語が多いのも残念な気がした。自分で読みたい世界感を自分で書いてみた。読んでくれた人ありがとう。

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