第34話 母の車の中で 1

私達は、母の車に向かい乗った。

「あの人達帰ったわね」

「お前が、怒らしたからだろう」

祖父が、母を怒鳴りつけた。

母は、祖父をじっと見た。母にとって予想外だったのだろう。

「叔母さんが、お兄ちゃんに、法名の横の20万と鍋がなくなったとか、お母さんがおばあちゃんから毎月15万貰っていたとか言ってた」と、私は話を変えた。

「かあさんに、可愛い鍋をやったのになくなった。

法名のことを奈津に話した。天野の菩提寺に天井絵が出来るので、お寺に100万納めた。その時にワシらは院号を頂いた。

何かあった時にと、法名が入った箱の横に20万入りの封筒を置いた。それがなくなったので、かあさんに聞くと黙っていた。だからそういう事だろう。

毎月15万の事は、今朝ちょっと話した。最近は金を渡してないが、ずっと15万を渡していた。かあさんは、外出しないし金を使わないのに15万全部なくなる。1年で180万。5年位か? 900万か、凄いな。お前の中古マンションの一部に170万やった。法名の横の封筒が20万で足すと約1000万か。凄いな」

大正生まれの祖父は数字に強い。いや、感心している場合ではない。

とんでもないことを話している。


「良子にあげているんじゃない? よく来るんでしょう?」

母が話を変えようとした。

「お前なんかと違う。良子は受け取らない。かあさんが、ティシューに包んで1万渡したら『おばあちゃんの好きなお茶買って』と、水屋の引き出しに置いて帰る子だから。良子が上京した頃、テーマパークの株の優待をやったら『今まで可奈ちゃんにあげていたのなら、これからも可奈ちゃんにあげて』と、受け取らない」


「四国の従兄に3万円あげているでしょう」

「あいつか。いい子だけど、ちゃっかりしている。貴金属店の集まりで年に1回夫婦で来る。かあさんが、ご馳走するよ。泊まるのは息子の家。ここから遠くない。出張費が出る筈なのに3万渡す。遠慮して断っていても結局はなあ・・・」

 祖父と母の会話が嫌になる。


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