第22話 兄の結婚式

兄は、あの女と結婚した。

式場の控え室で、親族の紹介があった。母は、式に出なかった。

親戚の人と挨拶したが、知らない人ばかりだった。和也と良子が出席してくれて助かった。

「残念でしたねえ」

おばさんが、大声で和也に話していた。

和也に聞くと、両親が離婚して残念だった、という話をしていたそうだ。


余興で、兄の会社の楽団が演奏した。私も在籍しているのでヴァイオリンを弾いた。その後は、自分の席に戻らなかった。

二次会について、兄から和也と良子に場所を伝えるように言われていたが、黙っていた。兄から、和也と良子のことを聞かれたが、知らない、と答えた。


二次会で、ひとりの男性に『ヴァイオリンの演奏、素敵でしたね』と、言われた。連絡先を伝えたが、しばらくは何も連絡がなかった。

3週間経った、ある日

「結婚式、お母様は、出られなかったのではなく出なかったそうですね。親戚の者が反対しますので、この話、なかった事にして下さい」

相手からの電話は、感じが悪かった。ウチの事を調べたんだと、気味が悪かった。

始まりもせず終わった。


兄は、九州に転勤になった。

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